日本人女性は卵のとりすぎに注意

日本人女性は卵のとりすぎに注意、がん死亡のリスクが上昇

コレステロール値には影響しなかったが…
「日本人の女性は、卵の摂取量が多いほど、がんによる死亡と、総死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが高い」という結果が、日本人を対象とする長期追跡研究で示された。
 
卵黄は、コレステロールを多く含む食品の代表として知られている。
従来から、「血液中のコレステロール値を減らすため、また冠動脈疾患(心筋梗塞狭心症)を予防するために、卵の摂取は減らしたほうがよい」といわれてきた。
しかし、2013年に発表された米国心臓病学会と米国心臓協会のガイドラインでは、1日のコレステロール摂取量に上限を設けるに十分なデータはないとの判断が示された。
 
日本でも、2015年からコレステロールの摂取基準(目標量)は撤廃されている。
 
では、卵は好きなだけ食べても良いのだろうか?

今回、分析された対象は、国が10年に1度、全国で行ったプロジェクト「NIPPON DATA」(National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease And its Trends in the Aged)に1990年から参加した人々だ。
この研究(NIPPON DATA 90)の追跡は15年間行われた。
 
実は1980年に始まったNIPPON DATA 80でも、参加者を14年間追跡して、卵の摂取が健康に及ぼす影響を検討していた。
その結果は、女性においてのみ、卵の摂取が多い人ほど、血清総コレステロール値が高く、総死亡のリスクも高いことを示していた。
 
今回の分析は、NIPPON DATA 80とは異なる人々を対象としたNIPPON DATA 90に参加し、15年間追跡された日本人女性の情報を得て、卵の摂取と血清総コレステロール値、循環器疾患(心筋梗塞脳梗塞など)による死亡率、がんによる死亡率、総死亡率との関係を分析した。

卵の摂取量が多いほど、がんによる死亡と総死亡のリスクが上昇
30歳以上の4880人の女性参加者のうち、脳卒中または心筋梗塞を既に経験していた女性などを除外した4686人(平均年齢52.8歳)を分析対象にした。
 
対象者を、卵の摂取頻度によって「週に1個未満」(203人)、「週に1~2個」(1462人)、「1日に0.5個」(1594人)、「1日1個」(1387人)、「1日に2個以上」(40人)の5群に分けた。
 
まず、卵の摂取頻度と血清総コレステロール値の間には、統計学的に意味のある関係は見られなかった。
この点については、「1980年以降に行われた啓発活動により、コレステロール値が高い人が卵の摂取を減らしたためではないか」などと推察されている。
 
一方、追跡期間中に、循環器疾患による死亡は183件、がんによる死亡は210件、総死亡は599件発生した。
 
年齢、BMI(体格指数)、喫煙習慣、飲酒習慣、高血圧・糖尿病などの疾患、食物繊維・肉・ナトリウムの摂取量などを考慮して分析したところ、卵の摂取頻度が高い人ほど、がんによる死亡と総死亡のリスクが高い傾向があることが明らかになった。
一方で、卵の摂取と循環器疾患による死亡の間には統計学的に意味のある関係は見られなかった。
「1日2個以上」のがん死亡リスクは「1日1個」の3.2倍
 
卵を1日1個摂取する女性を対照群(リスク1倍)として比較すると、1日2個以上食べる人では、がんによる死亡リスクが3.2倍、総死亡リスクは2.05倍になっていた。
逆に、1週間に1~2個しか食べない女性のがん死亡リスクは、0.68倍(32%減)になっていた。
 
なお、男性では、卵の摂取は、がんによる死亡と総死亡のリスクに影響を及ぼしていなかった。
その理由としては「日本では男性のほうが外食する機会が多く、そのために食事の内容が女性より多様化している」、また「男性のほうが喫煙者と飲酒者の割合が高く、これにより卵の摂取ががんと総死亡に及ぼす影響が薄められている」といった可能性が考えられている。
 
今回の研究結果は、日本人女性は、卵の摂取を減らすと健康に利益がもたらされる可能性があることを示唆している。
 
論文
European Journal of Clinical Nutrition誌電子版 2017.12.29
Nakamura Y, et al. Eur J Clin Nutr. 2017 Dec 29. doi: 10.1038/s41430-017-0051-4.