眠りの浅い「レム睡眠」と死亡リスク

眠りの浅い「レム睡眠」 少ないと死亡リスク高まる?

睡眠時間に占める「レム睡眠」(眠っているときに眼球が素早く動く、浅い眠りの状態)の割合が低い人ほど死亡リスクが高いことが、米国で行われた研究で明らかになった。

 

レム睡眠とノンレム睡眠が健康に及ぼす影響を検討

人間の睡眠は、ノンレム睡眠レム睡眠という、質的に異なる2つの睡眠状態で構成されていて、夜間睡眠中はこの2つが交互に出現する。

レム睡眠は、眠ってはいるものの脳は比較的活発に活動している「浅い睡眠」で、眠っているときに眼球が素早く動くことから、英語の「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」を略してレム睡眠(REM sleep)と名付けられた。

レム睡眠は全身の筋肉が弛緩し、身体を休めている状態だ。

一方、ノンレム睡眠は、脳の活動も低下した「深い睡眠」の状態だ。

 

睡眠障害は、心血管疾患(心筋梗塞脳卒中)や代謝性疾患(糖尿病など)、精神疾患のリスクの上昇や、認知機能の低下、さらには死亡リスクの上昇と関係することが報告されている。

しかし、これまでに行われた睡眠に関する研究の多くは、対象者本人が申告した睡眠の時間や状態を分析に用いていた。

そのため、レム睡眠とノンレム睡眠のそれぞれが健康や死亡に及ぼす影響については検討できていなかった。

 

そこで今回、米Stanford大学などの研究者たちは、睡眠時間に占めるレム睡眠の割合を客観的に調べて、死亡との関係を分析することにした。

 

著者らはまず、米国内の6施設で、市中在住の65歳以上の男性5994人を登録し、長期にわたって追跡した観察研究のデータを分析した。

参加者は登録後、自宅での睡眠時に、睡眠ポリグラフ計と手首用身体活動モニターを装着して、睡眠中の体や脳の活動の様子を記録していた。

参加者の睡眠時間に占めるレム睡眠の割合は0~43.9%で、このばらつきは正常範囲内とみなされた。

平均は19.2%(69.7分)だった。

 

レム睡眠の割合が5%減少するごとに死亡リスクが13%上昇

分析に必要な情報が得られた2675人(全員が男性、平均年齢76.3歳)のうち、1404人(52.5%)が、約12年(中央値)の追跡期間中に死亡していた。

 

レム睡眠と死亡の関係に影響を与える可能性のある、さまざまな要因を考慮して分析したところ、レム睡眠の割合が5%減少するごとに、あらゆる原因による死亡(総死亡)のリスクは13%上昇することが分かった。

同様に、レム睡眠の割合が5%減少するごとに、心血管疾患による死亡リスクは11%、他の死因による死亡リスクも19%上昇することが示唆された。

 

また、レム睡眠の割合が一定以上低くなると死亡リスクが有意に上昇する、閾値があるかどうかを検討したところ、REM睡眠の割合が15%未満の人は15%以上の人に比べ、総死亡と死因別死亡のリスクが高くなる可能性が示された。

 

女性も含めた、より若い集団でも同様の結果を確認

続いて著者らは、女性も含む別の研究で得られたデータを分析しても、同様の結果になるかどうかを調べた。

対象にしたのは、米ウィスコンシン州で30歳から60歳までの男女を登録し、1988年から現在まで追跡している観察研究のデータだ。

参加者は、登録後に医療機関で一晩を過ごし、睡眠ポリグラフ計を用いた検査を受けていした。

 

条件を満たした1386人(平均年齢51.5歳、男性が54.3%)を、約21年(中央値)追跡したところ、184人(13.3%)が死亡していた。

 

最初の研究と比べると、こちらの研究の方が追跡期間が長く、対象者の平均年齢が若い、といった違いがあったが、レム睡眠の割合は同様で、0~43.0%の範囲にあり、平均は17.6%(67.8分)だった。

こちらの集団でも、レム睡眠の割合が少ないことは、総死亡リスクが高いことと関係しており、レム睡眠の割合が5%減少するごとに、総死亡リスクは17%増加していた。

このリスク上昇は女性でのみ有意だった。

 

最後に、睡眠時間に占める、レム睡眠と、ノンレム睡眠のN1ステージ(浅い睡眠)、N2ステージ(中程度の睡眠)、N3ステージ(深い睡眠)の割合と生存の関係を検討したところ、生存との関係が最も強いのは、レム睡眠の割合であることが示された。

 

男女比や平均年齢が異なる2つの集団を対象とした今回の研究によって、レム睡眠の割合と死亡リスクの間に強力な関係があることが示された。

研究者たちは、「今後、レム睡眠がどのように死亡

リスクに影響するのかを明らかにする必要がある」と述べている。

 

参考・引用一部改変

日経Gooday 2020.8.19