良質な睡眠 7時間が理想

良質な睡眠 7時間が理想

睡眠時間は7時間くらいが理想的で、短すぎても、長すぎても健康上のリスクは高くなるといわれている。
全国の約11万人を対象に、約10年間追跡をした大規模な調査でも、睡眠時間が7時間の人に比べて、4時間未満の人では、男女とも死亡リスクは6割近くも高くなっていた。
また、10時間超の群では、男性で約7割、女性では9割も死亡リスクが上がっていた。

睡眠時間は、仕事や家庭環境の他、ストレスや病気などの影響も受けるものだ。
そこで、これらの影響も考慮し、さらに2年以内の死亡者を除外した上で再度計算してみると、男性では睡眠時間が短くても死亡リスクは上がらないことが分かった。
しかし、女性では、睡眠時間が4時間未満の人は7時間の人と比べ2倍もリスクが上がっていた。
また、7時間より長く睡眠をとる人は、男女とも死亡リスクがアップしていた。

睡眠時間と発がんについては、喫煙や飲酒とちがって、明確な関係が分かっているわけではない。
過去65件の研究に登録された155万人のデータをまとめて分析したメタアナリシスでも、がん全体では、睡眠時間と発症リスクには関連は認められなかった。
一方、アジア人にかぎると、睡眠時間が短い人にがんが有意に多いことが分かった。

また、人種を問わず、睡眠時間が長いと大腸がんが多くなることも明らかになった。
日本人を対象とした研究も東北大学などで実施されている。
宮城県の約2万4千人を対象とした調査では、睡眠時間が6時間以下の群では乳がんのリスクが有意に高くなっていた。
前立腺がんについても、6時間以下の群でリスクが有意に高まったのに対して、9時間以上の群ではリスクは減少していた。

睡眠と発がんの関連は、性差やメカニズムをふくめて、未知の部分が少なくない。
ただし、質のよい眠りはがんの予防にも大事なのは間違いないと言える。

執筆 東京大学病院准教授・中川恵一先生

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2019.4.10