糖尿病はがんと深い関係
あまり知られていないが、糖尿病とがんは深い関係がある。
実際、糖尿病患者の死因の4割近くが、がんだ。
糖尿病はがん全体の発症リスクを約2割増やす。
膵臓がん、肝臓がんでは2倍にもなります。
糖尿病の「3大合併症」は、末梢神経、網膜、腎臓の障害をいう。
一方、がんとの関連については触れられなかった。
当時、糖尿病患者の死因としては、心筋梗塞、脳梗塞、慢性腎不全といった「血管障害」がトップだった。
糖尿病患者の死因のうち、血管障害死の割合をみると、1970年代、80年代はおよそ4割。
それが、90年代は27%となり、2001~10年では15%まで低下している。これは一般日本人の死亡割合より低い数字で、最近の糖尿病治療薬の進歩をうかがわせる。
一方、糖尿病患者におけるがんによる死亡割合は、70年代は25%だったが、80年代、90年代は29%、34%と増加し、01~10年では38%を超えている
一般人での死亡割合より10ポイント程度高い数字だ。
糖尿病患者のがん死亡を臓器別にみると、トップは肺がんだった。
これは一般の日本人とおなじですが、2位は肝臓がん、3位は膵臓がんで、一般人より順位が上がっている。
糖尿病になると、この2つのがんのリスクが2倍になるから当然だ。
日本の糖尿病患者の多くで、インスリンが効きにくい「インスリン抵抗性」が進み、血液中のインスリン濃度が高くなる。
過剰なインスリンは発がんに関与する可能性があると考えられている。
その他、高血糖そのものによる酸化ストレスや慢性的な炎症も原因の可能性があるが、がんが糖尿病によって増える詳しいメカニズムは分かっていない。
糖尿病の患者数は、疑いのある人まで含めて約2千万人と膨大な数に上る。しかし、患者の4人に1人は治療を受けていないことがわかっている。
とくに、働きざかりの人ほど受診していないことが問題だ。
糖尿病の人は「がん予備軍」。
食べ過ぎを避け、運動を心がけて、毎日体重計に乗ることを心がけよう。
参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2021.11.10
執筆 東京大学・中川恵一 特任教授