糖尿病によるがんの増加警戒

糖尿病によるがんの増加警戒

肥満や糖尿病はがんのリスクを高める。
2017年末にも「全世界のがんの約6%は糖尿病と肥満が原因」とする研究結果を海外の研究チームが発表した。
とくに関連が深いがんでは比率は高く、男性の肝臓がんでは23.3%、子宮体がんでは38.4%が肥満や糖尿病に起因すると推計している。
さらにこの比率は35年にはそれぞれ343%、47.9%にまで上昇すると予測している。
 
日本人を対象とした調査研究でも肥満により、大腸がん、
肝臓がん、乳がん、子宮体がんなどのリスクが増えることが知られている。
糖尿病はさらに大きな発がん要因で、膵臓がんと肝臓がんを2倍に、大腸がんを1.4倍にし、がん全体でも1.2倍に増加させることが分かっている。
 
全世界の調査では、がんの発症に対する肥満の影響は糖尿病の約2倍という結果だった。
しかし、日本を含むアジア太平洋地域の解析では、男女とも糖尿病の影響が肥満の影響を上回っている。
 
欧米のような極端な肥満が少ないわが国では、とくに男性の場合、肥満よりやせ過ぎの人でがんが多いという調査結果も出ている。
日本人の場合には、肥満よりも糖尿病によるがんの増加を警戒すべきだといえる。
 
国内の糖尿病の有病者と予備軍は、16年調査の推計でいずれも約1,000万人と膨大だ。
しかし、ほとんどが遺伝的に糖尿病になりやすい人が肥満や運動不足、ストレスなどをきっかけに発病する「2型糖尿病」だ。
このタイプは血糖値を下げるインスリンが分泌されなくなった
り、その効果が出にくくなったりする「インスリン抵抗性」
が原因だ。
 
インスリンには、がん細胞の増殖を促す作用かあるため、インスリン抵抗性によって「高インスリン血症」が進むとがんのリスクが高くなる可能性がある。
その点では、糖尿病の方は、高インスリン血症の有無を確認しておくとよい。
 
糖尿病の人は「がん予備軍」といえるが、そのことがあまり知られていないことが問題だ。
糖尿病が疑われる人の約4割は治療を受けたことがないといわれている。

執筆 東京大学病院准教授・中川恵一先生

参考・引用
日経新聞・朝刊 2018.3.28