潰瘍性大腸炎、新薬で症状改善

潰瘍性大腸炎、新薬で症状改善 重症患者にも効果、治療の選択肢増

腸に炎症が起こる難病の潰瘍性大腸炎の新しい治療薬が、相次いで登場している。
以前は下痢や腹痛などに長く苦しむ患者も多かったが、治療を続けることで、日常生活に支障がないように症状を抑えることができるようになっている。

東京都の女性会社員(55)は2003年、潰瘍性大腸炎と診断された。
1年ほど前から粘液と血液が混じった便が出るようになっていた。
下痢や腹痛なども出始めた。
 
大腸の粘膜に慢性の炎症が起こる病気で、国の指定難病。
根本的な治療法はない。
厚生労働省研究班の疫学調査(16年度)によると国内の患者は約21万人いる。
女性は炎症を抑える基本の薬となる5 - アミノサリチル酸(5 - ASA)製剤を使ったが効果は続かず、ステロイド薬を使った。
長く使うと副作用の恐れがあるため量を徐々に減らすと、再び悪化した。
良くなったりひどくなったりを繰り返し、トイレに1日20回近く駆け込まなければならないほどになった。
仕事を一時休職した。
 
14年、生物学的製剤のヒュミラを医師に処方され、使い始めた。
前年に潰瘍性大腸炎に保険適用されたばかりだった。
すると、トイレの回数は1日5~6回程度に減った。
症状が落ち着くと気持ちも前向きになり、泊まりがけの旅行にも出かけられるようになった。
女性は「薬が効き続けるか不安もあるが、使える薬があることはありがたい」と話す。
 
女性が治療を始めた当時は、薬の選択肢が限られ、重い症状を改善することが難しかった。
 
だが10年以降、体の中で炎症を引き起こすTNF - αという物質の作用を抑えるヒュミラやレミケードのような抗体製剤が、潰瘍性大腸炎の薬として認められた。
ステロイド薬などが効かない場合でも、症状が落ち着いて安定する「寛解」に導けるようになった。

このように、新薬が続々と登場して多くの患者で炎症をコントロールできるようになってきた。
最近も17年にシンポニー、昨年はエンタイビオやゼルヤンツなど新薬が相次いで登場、ほかにも10以上の新薬候補の治験が進む。
 
副作用として感染症のリスクを高めたり、長く使うと効果が弱まったりすることもあるが、その人の症状に合わせて薬を選べるようになった意味は大きい。

安定のため、粘膜の治癒重要
新薬の登場に加えて、治療の考え方も変化している。
従来の治療目標は「症状を抑えること」までだったが、「粘膜の傷やただれがしっかり治ったことが内視鏡検査で確認されるまで、治療を続けることが、寛解を維持する上で重要だとわかってきた。
 
5 - ASA製剤で治療している患者のうち、2年後も寛解を保てたのは、医師の指示通りに薬をのみ続けた人では約9割だったが、守っていなかった人だと約4割だったという調査結果がある。
症状が一時的に治まったときに薬をのみ忘れたり、自己判断でやめてしまったりすると、再び炎症が起こる。
 
適切な治療で症状が安定していれば基本的に食事制限はない。
学業や仕事などに影響はなく、妊娠・出産もできる。炎症を抑える基本薬を早めに使って、症状が出ないようにすることが大切だ。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.4.17