非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

患者300万人? 非飲酒者の脂肪肝炎...高精度の簡易診断、初の全国検証へ

お酒を飲まない人が発症する「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」を血液検査で確認する診断法の確立に向け、全国17病院が420人のNASH患者を対象にした検証に乗り出した。

国内の患者は約300万人と推定され、発症に気づかないまま肝硬変や肝臓がんへと悪化する場合も多い。全国規模での診断法検証は初めてという。
 
参加するのは、大阪府済生会吹田病院、虎の門病院(東京都)、山形大学病院、札幌厚生病院、鹿児島大学病院など。
昨年11月までに18~75歳の男女計420人の対象患者の登録が完了し、2018年中に検証を終える予定だ。
 
NASHの確定診断には、患者の脇腹に針を刺して肝臓組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる「肝生検」が必要だが、患者の体の負担が大きく、入院も必要。
医師によって診断結果にばらつきがあるのも課題だ。
 
お酒を飲む人は肝炎になりやすいことが知られ、発見もされやすい。
だが飲酒しなくても脂肪肝になることはあまり知られておらず、医師の診断を受けない人が多い上、健康診断でも見つかりにくい。
特効薬はなく、治療は生活改善が中心のため早期発見が重要になる。より簡便で客観的な診断法が求められていた。
 
検証に先立ち、今回の研究チームは、血液中の約260種類のたんぱく質を詳細に解析した。
その結果、「4型コラーゲン7S」など、NASHの患者に特に多い3種類のたんぱく質が診断に有用だと判断した。
 
今回の検証では、血液検査で3種類の数値を調べ、発症とその予後の判定に最も診断精度が高いたんぱく質の組み合わせを探る。
医師間の診断の誤差をなくすため、専門医2人が同じ基準で検体すべてをチェックすることにしている。
 
この研究チームによると、マーカー候補のたんぱく質を2種類ずつ組み合わせた事前の臨床研究では、いずれも90%以上の精度で診断できたという。
肝生検に代わる診断法として、4~5年後の保険適用も目指している。
診断せずに放置し、悪化するケースは多い。
簡単な検査で早期発見につながることが期待される。


NASH = nonalcoholic steatohepatitis
全く飲酒しない人や、飲んでも1日にビール中瓶1本以下の人が発症する脂肪肝を伴う肝炎。
10年以内に患者の1~3割が肝硬変や肝臓がんに進展する。
多くは、糖尿病や肥満、高血圧などの生活習慣病が原因とされるが、遺伝的な要素も指摘されている。
一方、アルコール性肝疾患の推定患者は約250万人いる。

早期発見へ光、費用も軽減
肝臓に脂肪がたまって炎症を起こす脂肪肝炎は、一般には大量飲酒する人だけの病気だと考えられてきたが、それは誤りだ。
お酒を飲まない人が発症するNASH患者が先進国で急増し、現在ではアルコール性肝炎やウイルス性肝炎以上に増えているとみられる。
 
血液検査で確定診断できれば、肝臓の一部を採取する肝生検に比べ、肉体的な負担が大幅に緩和され、経済的な負担も大きく軽減される。
肝生検では入院費も含めて通常10万円以上かかる費用が、2000~3000円程度になる見通しだからだ。
また、肝生検よりも肝臓全体の状態を把握できるため、診断の偏りが少ない上、肝生検を拒む患者の検査も進むとみられる。
 
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるなど、自覚症状が出にくく、肝炎を患っていてもお酒を飲まない人は、検査をしないまま症状の悪化を招く恐れもある。
早期発見が何より大事で、誰もが簡単に検査できる診断法の確立が期待される。

 
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参考
読売新聞 2017.1.18


<関連サイト>
肥満による脂肪肝炎発症のメカニズムを解明
http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120704_amedrc.html
http://news.mynavi.jp/news/2012/07/06/112/