老化を遅らせる方法は? ① 1/2
先端研究者が勧める3大法則
最新の抗老化研究によって、健康寿命を延ばし、何歳になっても心身ともに元気で社会貢献し続ける「プロダクティブ・エイジング」の実現が可能になりつつある。
そのカギを握る一つが、私たちが生きていくうえで欠かせない体内物質であるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を増加させ、長寿遺伝子からつくられる酵素サーチュインを活性化させること。
NADを高めて老化を遅らせるために、今すぐできることはあるのだろうか。
以下は、哺乳類の老化・寿命のメカニズムの研究と抗老化方法の確立を目指す、ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授による解説。
法則1 「運動」で老化制御に欠かせないNADを増やす
――老化を遅らせるために、40~50代の人が今すぐ始めたほうがいいことはあるか。
今井
すぐに始めてほしいことの一つが、運動だ。
運動が老化を遅らせることは、複数の研究で科学的にも証明されている間違いのない事実だ。
アスリートのような非常に激しい運動をする必要はなく、ウオーキング、ジョギング、自転車こぎ、水泳などの軽~中程度の有酸素運動、筋トレが効果的だ。
運動をすると筋肉中のNAMPT(ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)の量が上昇して、エネルギーの産生とサーチュイン(老化や寿命をコントロールする酵素)の活性化に不可欠なNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の量が増える。
NAMPTというのは、体の中でNADを合成するために必要な酵素なのだ。
――運動が体にいいことは分かっていても、忙しくて続けられない人も多いが、継続の秘訣はあるのか。
今井
私は週2回、スポーツジムへ行き、筋トレをするようにしている。
日本の多くのビジネスパーソンがそうであるように、私もなかなか運動をする時間が取れないのだが、スケジュールの中にあらかじめジムへ行く時間を組み込むようにしている。
普段からエレベーターやエスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活の中で意識的に体を動かすことも大切だ。
法則2 「朝食」をがっつり食べて生体リズムを整える
今井
そして、もう一つ、NADを増やすために重要なのが、生体リズムを整えることだ。
私たちの体の中のNADの量は、サーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれる生体リズムに従って増えたり減ったりしている。
マウスは夜行性なので、NADの量が昼間の明るいときに減り、夜は多くなる。
人間は逆で昼にNADの量が増え、夜には減るようになっている。
要するに、NADはエネルギーを生み出すうえで必須の物質なので、活動期に増えるようになっているのだ。
NADの値を昼間にしっかり高めてサーチュインを活性化させるためには、人間が本来持っている生体リズムを保ち、午前中にNADをしっかり増やすことが大切なのだ。
そのために有効なのが、1日の始まりのエネルギー源となる朝食を最もカロリーの高い食事にすることだ。
実は、私もかつては、夜遅く帰ってデザートまでたっぷり食べ、その2時間後には寝るような生活をしていた。
2014年に生体リズムに関する学会に呼ばれて講演したときに、栄養が生体リズムに与える影響についての最新の知見を聞き、家内と相談して、それまで夜に食べていたような食事を朝にとるようになった。
以下は、我が家の朝食の一例。
朝に良質のタンパク質をしっかりとることが重要なので百数十グラムのステーキや大きな魚を食べ、ポリフェノールが豊富なカカオ90%のチョコレートなどのデザートも楽しむ。
昼は普通に食べ、夜は軽くワイン1~2杯とチーズやハム、フルーツをとるくらいで、20時以降は何も食べないようにしている。
血糖値が下がるのには食後4時間くらいかかるので、ベッドに入るときには血糖値が下がっている状態にすることが大切だ。
また、ブルーライトは生体リズムを乱すので、就寝前にスマートフォンなどデジタル機器を使わないようにしたい。
参考・引用一部改変
日経Gooday 2021.1.14