AIで心電図解析

心臓病診断、1週間→1日 アステラス AIで心電図解析、非専門医でも早期発見

心臓病の兆候を、専門医ではなく、かかりつけ医などでも早期発見できる仕組みづくりに製薬会社などが乗り出す。アステラス製薬は年内にも人工知能(AI)で不整脈を判定する心電図解析サービスを始める。心電図測定から1週間程度かかっていた診断が1日程度でできるようになる。

 

コロナ下で病院の受診者が減る中、重大な病気を抱える人が見逃されているとの懸念は強い。デジタル技術で早期発見できる仕組みが整えば、将来の医療費増大を抑制する効果も期待できる。

アステラス製薬は心電図解析サービスのエムハート(盛岡市)と、心電計で測った心電図から心房細動と呼ばれる不整脈を見分けるAIを開発した。3月に医療用プログラムとして厚生労働省の製造販売認証を取得した。2021年内にもこのAIを使うクラウド型の心電図解析サービスを医療機関向けに始める。

診療所の医師がパソコンなどから患者の心電図をアップロードすると、AIが心電図波形を自動解析し不整脈が検出された箇所を提示する。1日程度で結果が分かり、これまで1週間程度を要していた心電図解析を短期間で終えられる。専門医でなくても不整脈を正しく診断しやすくなる。

アステラスは心電計メーカーとも協力し、心電計とAIを組み合わせたサービスを提供する考えだ。製薬会社が心電図の解析サービスに乗り出すのは異例だ。医薬品開発で培った医療機関とのつながりや効果実証のノウハウを生かせるとみる。岡村直樹副社長は「薬だけでは難しかった患者支援をデジタルなどの技術で実現したい」と話す。

 

コロナ下で病院の受診者が減る中、重大な病気を抱える人が見逃されているとの懸念は強い。デジタル技術で早期発見できる仕組みが整えば、将来の医療費増大を抑制する効果も期待できる。

アステラス製薬は心電図解析サービスのエムハート(盛岡市)と、心電計で測った心電図から心房細動と呼ばれる不整脈を見分けるAIを開発した。3月に医療用プログラムとして厚生労働省の製造販売認証を取得した。2021年内にもこのAIを使うクラウド型の心電図解析サービスを医療機関向けに始める。

診療所の医師がパソコンなどから患者の心電図をアップロードすると、AIが心電図波形を自動解析し不整脈が検出された箇所を提示する。1日程度で結果が分かり、これまで1週間程度を要していた心電図解析を短期間で終えられる。専門医でなくても不整脈を正しく診断しやすくなる。

アステラスは心電計メーカーとも協力し、心電計とAIを組み合わせたサービスを提供する考えだ。製薬会社が心電図の解析サービスに乗り出すのは異例だ。医薬品開発で培った医療機関とのつながりや効果実証のノウハウを生かせるとみる。岡村直樹副社長は「薬だけでは難しかった患者支援をデジタルなどの技術で実現したい」と話す。

 

化学大手のJSRもAIを用いたクラウド型の心電図解析サービスへの参入を狙う。心電図を7日間連続で計測できるパッチ(貼り付け)式の小型心電計を開発し、20年8月から医療機関向けの心電図解析サービスを始めている。今後このサービスに心房細動を短時間で自動検出するAIを搭載する考えで国立循環器病研究センター(大阪府)などと開発を進める。

既存のサービスは既に診療所を中心に約300施設が導入した。「病院を渡り歩いても診断がつかなかった患者の心房細動が見つかった、との反響が複数届いている」(JSRイノベーション推進部の小林伸敏部長)

同社は素材技術を核として医療分野への開拓に力を注いでいる。心電計の小型化で高分子材料などの知見を生かした。

医療用AIのスタートアップ、カルディオインテリジェンス(東京・港)は、一見正常な心電図波形から心房細動の可能性を指摘するAIの開発を目指す。6月をめどに医療機関臨床試験(治験)を始め、22年3月までをメドに厚労省に承認を申請する。承認が得られ次第、20年末から診療所などに提供しているクラウド型の心電図解析サービスに搭載する。

心房細動は心臓が小刻みに震える病気で、血の塊を作り脳梗塞などを引き起こす。国内に約100万人の患者がおり、病院で精密検査を受けておらず診断がついていない潜在患者も同程度いると推定されている。

心房細動や脳梗塞など、循環器系の病気の医療費は年間約6兆円に達する。早期に発見できれば健康寿命の延伸や医療費削減につながる。医療機器メーカーだけでなく、製薬会社や素材メーカーなど

さまざまなプレーヤーが参入することで、開発が加速し診断の精度が高まる可能性がある。

 

デジタル診断支援 広がる アップル、米で研究

コロナ下で特段の自覚症状がない場合には外来受診を控える人が増えており、医療業界では昨年以降、重大な病気を抱えている人が受診せず見逃されているとの指摘が上がる。

デジタルによる診断支援は技術的には実用化の段階に入りつつあり、企業や医療機関は導入効果の実証を急ぐ。

 

米アップルの腕時計型端末「アップルウオッチ」では1月から、日本でも心電図の計測機能や不規

則な心拍を検知する機能が使えるようになった。

簡易式の測定であるため診断には使えないものの、心房細動のリスクを利用者に知らせ早めの受

診を促す。

 

心臓病を専門とする医師の間でもデジタル機器への関心は高い。

慶応義塾大学医学部は2月、アップルウオッチの心電図機能を日常のどのような場面で使えば心房細動の発見に有効につながるかを調べる研究を始めた。

医療機器大手の米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が支援する。

 

研究を主導する慶応大学の木村雄弘医師は「コロナ下では家庭での健康管理が重要性を増す。アップルウオッチをそこにどのように活用できるかを探りたい」と話す。

 

海外では研究が進む。

アップルは1月、米国で製薬大手の米バイオジェンと、アップルウオッチや「iPhone」を使って認知症の早期発見を目指す研究に着手した。

聴覚や女性の健康を巡る研究も発表した。

 

診断補助AIの世界市場は2025年に約39倍(約4200億円)となり、20年比で約8倍に伸びるとの民間調査会計の試算もある。

 

従来はコンピューター断層撮影装置(CT)などで撮影した病変の画像を識別するものが主流だ

ったが、今後は画像に限らない生体データをAIで解析する取り組みも増え、デジタル技術による

診断支援の裾野が広がりそうだ。

 

参考・引用一部改変