新型コロナウイルス変異株も無力化する中和抗体

新型コロナウイルス変異株も無力化する中和抗体 人工的に作製

広島大や京都大などのチームが、新型コロナウイルスを無力化する「中和抗体」を人工的に効率よく作ることに成功した。

変異ウイルス(変異株)は感染力が増したり、ワクチン効果を低くしたりする恐れがあるが、変異株についても効果を確認した。

治療薬開発につなげることをめざす。

 

新型コロナウイルスに感染して回復した患者の血液には、免疫細胞が作る抗体と呼ばれるたんぱく質ができる。

中和抗体は、ウイルスに結合して無力化する抗体の一種だ。

中和抗体を人工的に作れば治療薬に使えるため、世界中で開発が進められている。

 

チームは、回復した患者の血液を分析し、軽症者に比べて重症者のほうが中和抗体を獲得する率が高いことを確認した。

重症者4人の血液から、中和抗体を作る免疫細胞の候補を選びだした。

 

選んだ免疫細胞から抗体を作る遺伝子を取り出して増幅し、抗体を人工的に作った。

この人工抗体から、最初に感染拡大した「武漢型」のウイルスに結合する力が強いものを選んだ。

その97%は、感染力を増したとされる英国株にも結合することがわかった。

 

ワクチンの効果を下げることが懸念されている南アフリカ株にも63%が結合した。

英国株、南アフリカ株に結合する抗体は、少量でも中和抗体として効果があることを確認した。

 

人工抗体を作るプロセスそれれぞれに工夫を重ねたことで、10日ほどで抗体を作ることができるという。

今後は感染力が高い懸念があるインド株に対する中和抗体も作りたいとしている。

 

広島大では「数人の提供者の血液があれば、中和抗体を10日程度で作製することが可能になった。重症化予防や重症患者の治療薬の開発につなげたい」と述べべている。 

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・夕刊 2021.5.18