新型コロナウイルス変異株に対する中和抗体の質が時間と共に向上することを発見
https://www.amed.go.jp/news/release_20210705-02.html
新型コロナウイルスの変異株は、回復者やワクチン接種者が獲得する中和抗体から逃避するリスクが懸念されている。
抗体応答は、時間と共に抗体の質を変化させることが可能であるものの、新型コロナウイルス変異株への結合性にどのような影響があるのか、詳細は不明であった。
今回の研究において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復者が変異株に交差結合する抗体を獲得し、この抗体の質(中和比活性・交差性)は時間と共に向上することを発見した。
この現象は、変異株へのワクチン戦略に重要な知見になる。
参考
中和抗体
中和抗体とは特定のタンパク質の活性を中和できる抗体のことで、ウイルスのタンパク質に結合して感染を防ぐ作用を示す。
親和性成熟現象
多くのウイルス感染やワクチン接種で誘導される抗体は、時間が経過するにつれて各抗体タンパクをコードする遺伝子に変異が入り、抗原に対する結合親和性が高い抗体が選択される。
その結果、血液中の抗体の結合親和性は時間と共に増加する。
適応免疫の代表的な現象の1つ。
抗体があれば、もう感染しないのか?
https://www.idogojusantsugi-clinic.com/ワクチン後の中和抗体検査について/
IgG 抗体の中和抗体は、病原体を防ぐ作用があると考えられている。
しかし、この中和抗体は万能ではないの。
この中和抗体は、感染した患者全例に検出されない。
さらに検出されても長期間持続しない。
軽症者では、抗体ができないという事例もあるからだ。
このことに関してはいくつかの研究がある。
COVID-19 から回復した患者の血清から得られた中和抗体の研究では、中和抗体の中和する能(50%中和力価 (NT50))は非常に大きなばらつきがあったとしている。
33%(49人)では検出不能,79%(118 人)が1:1000 以下だった。
一方で、それとは別の IgG 抗体にも中和能力が見られたという。
中和能力は、年齢,症状の長さ,症状の重症度に関連していた。
つまり、症状が強くて、長かった症例ほど、高い平均中和活性を有していた。
このように中和抗体ではない、別の抗体の存在の可能性を指摘している研究もある。
COVID-19 から回復した軽症者175人において、SARS-CoV-2 に特異的な中和抗体は発症後10~15日で検出され(6人の患者の経時的調査)、持続したとしている(全員ではない)。
中和抗体の抗体価は個人差が大きかったという。
約30%の患者(特に40歳未満)で中和抗体の抗体価が低く、10人の患者では検出限界以下であった。
さらに、万州地区(重慶市)の無症状の SARS-CoV2 感染患者、37人を調べた研究では無症状者では、抗体活性は、有症状者に比べて低かったことが報告されている。
無症状者では、時間経過とともに 93.3%(28/30)に IgG 抗体の低下、81.1%(30/37)に中和抗体の低下を認めた。
有症状者でも、96.8%(30/31)に IgG 抗体の低下を、62.2%(23/37)に中和抗体の低下を認めている。
そして、無症状者の 40%(12/30)、有症状者の 12.9%(4/31)が回復期早期に抗体陰性になっていた。
再感染する事例も報告されている。
この再感染は、抗体の効果がないから再感染したのか、再活性化したのか、ウィルスの変異によるものなのかわかっていない。
症状が軽い場合には、抗体ができないという場合もある可能性があり、感染の予防に対してまだまだ未知の部分が残っている。
つまり、感染して抗体が確認されたからといって、その抗体が感染予防に効果があるのか、持続するのかということは判っていない。
言い換えれば、はしか、みずぼうそう、おたふくかぜなどとは異なり、このコロナウィルス感染は一時的な免疫で、終生免疫を作らない可能性があり、この新型コロナウィルスの抗体に感染予防効果があるのかないのか、あるとしても、どのくらい持続するのかは今のところ結論が出ていないのだ。