「抗体カクテル療法」

「抗体カクテル療法」は誰もが受けられるわけではない

https://news.yahoo.co.jp/articles/17686aaa8b1e647bca51c31d2c5ceb16cd24ed1e

今年7月、厚労省新型コロナウイルス感染症の治療薬として「抗体カクテル療法」が特例承認された。

50歳以上や糖尿病、慢性腎臓病、慢性肺疾患の持病があるなどの重症化リスクが高い軽症・中等症患者を対象にして、東京や大阪などで導入されている。

発症7日以内でないと効果が少ないともいわれるが、重症患者の増加に歯止めはかかるのだろうか。

 

【Q】抗体のカクテル療法とは何か

【A】新型コロナウイルスの感染を防ぐ『カシリビマブ』と『イムデビマブ』の2種類の中和抗体を組み合わせた点滴を投与する。

中和抗体はコロナウイルスの表面のスパイク(S)タンパクにくっつく抗体だ。

それによってコロナウイルスがヒト細胞のACE2レセプターに結合しなくなるため、感染が体内に広まらなくなる。

 

抗体カクテル療法のもとになったのは、30年ほど前に開発された、細胞融合法。

これにより同一の抗原に対する抗体が大量につくられるようになった。

 

この「カシリビマブ」と「イムデビマブ」は人工的につくられた抗体で、「モノクローナル抗体」と呼ばれる。

トランプ前米大統領は、このカクテル療法を採用し、1週間でコロナを完治させた。

 

【Q】発症7日以内でないとあまり効果がないといわれるのはなぜか?

【A】体の中でウイルスが増殖し始めるのが、発症から1週間以内であるためだ。

臨床試験の結果、重症化や死亡のリスクを7割以上減らす効果があることが分かっているが、酸素吸入が必要な状態であったり、ECMO(体外式膜型人工肺)などを使用しなければならないぐらいの重症になるとあまり意味をなさなくなる。

「抗IL-2抗体」や「ステロイド剤」の投与、あるいは酸素吸入による生命維持に移行する。

 

【Q】変異株にも対応できるのか?

【A】1年前、トランプ前大統領が投与された頃から有効性は認められていたが、デルタ株など新しい変異株が出てきてからは有効性の低下が報告された。

それで、デルタ株やその他の新しい株に対するモノクローナル抗体を混合して1つのカクテルとして使用するようになり、現在に至った。

今のところデルタ株も含め、有効性の高い治療薬として承認されている。

しかし、さらにこれを回避する新しい変異株が出現した場合、その株に対するモノクローナル抗体も付け加えられるように医療現場では準備が必要となる。

コメント

変異株といっても大幅に感染のメカニズムが変わるわけではないはずです。

S(スパイク)タンパクへ非特異的にできるような中和抗体を開発することは出来ないものなのでしょうか。

 

【Q】現在のところ自宅療養者には投与できない。なぜか?

【A】「日本で行う場合は患者を入院させて体内の検査を行い、保健所や国などの許可を得なければならない。

また特定の病院にしか配備されていないのは、ワクチンと同様に量が非常に足りないため。

そのために、効くとわかっても、現状では、だれもが受けられるわけではない。

 

解説

奥田研爾・横浜市立大学名誉教授