ワクチンの種類による抗体産生量の違い

ワクチンの種類による抗体産生量の違い、どれほどの意味があるのか

https://news.yahoo.co.jp/articles/82f55d3b2cb8e7ea8997c6460b080d530d28ca70

ブルームバーグ) 2021.9.6

今から10カ月前の時点では、新型コロナウイルスワクチンの大規模治験結果は本当とは思えないほど良好のように思えた。

2種のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの発症予防効果は感染者のほとんど全てのグループで90%を上回っていた。

 

しかし現在、全ての感染者群で米ファイザー・独ビオンテック製と米モデルナ製の効果にわずかながらも違いがあることが分かってきた。

米国の小規模な調査は、特に比較的高年齢の層で、ファイザー製ワクチン接種を受けた人の抗体レベルが時とともに漸減することを示した。

ベルギーで行われたより大規模な調査では、モデルナ製の方がファイザー製よりも多くの抗体を産生する可能性が示された。

 

しかし、実際にこの違いがどれほど意味を持つかは依然不透明だ。

これまでに世界で数十億回分のワクチンが接種されてきたが、研究者らはなお、2種のワクチンで防御効果の持続期間が微妙に違う理由や、それが人によってどのように異なっているかについて理解しようと努めている。

 

こうした問題の答えを見いだせれば、特に高齢者や免疫力が低い人などブースター(追加免疫)接種が必要な人の特定に極めて重要な一歩となる。

ワクチン接種の効果が若干下がったタイミングでのデルタ株の感染拡大に対応するため米政府はブースター接種の開始を目指しており、こうした問題を解明する重要性は高まっている。

 

米食品医薬品局(FDA)は今月17日にファイザー製ワクチンのブースター接種の是非を巡り、ワクチンおよび関連生物製剤に関する諮問委員会(VRBPAC)を開く予定。

 

これまで研究者の間で最も注目されてきたのが免疫システムの最前線の防御の一つである抗体のレベルだ。

モデルナ製ワクチンの抗体産生量が多い理由を説明する説の1つは、1回の容量がファイザー製よりも多く、また2回の接種の間隔が1週間長いためというものだ。

しかし抗体は免疫の1つの要素にすぎず、特に長期的にみて最も重要な要素かどうかは明らかでない。

 

コロナワクチンは持続時間が比較的短い抗体のほか、免疫システム内に長期にわたって維持される免疫記憶の形成を促す。

この記憶は時とともに増え、変異株と闘う抗体をうまく産生できるようになるとみられている。

実験室では抗体と比べて、T細胞や記憶B細胞を含むこうした長期防御を計測するのは難しいが、これらは重症化や入院の予防に重要な役割を果たしていると考えられる。

 

しかし米国でワクチン接種が始まって9カ月弱が経過しても、研究の大半はなお、ワクチンが産生する抗体に集中しているのが現状だ。

 

<番外編>

・抗体産生量の違いには、大きな意味はないという考え方がある。

それよりも、それを免疫が記憶し、以後同様のウイルスが体内に侵入した場合に、すぐに抗体を作り出して排除できるかどうか(記憶免疫)が重要でこちらはワクチンの効果が数年続く可能性がある。

 

第一三共が開発中のワクチンは、ウイルスと感染者の細胞が結合するスパイクタンパク質の先端にあたる受容体結合部位(RBD)に的を絞ることで、余計な抗体の生成を抑え、米2社のワクチンに比べてより効率的に中和抗体を作れる効果が期待されている。

 

・国立感染研究所より抜粋
<抗体検査の解釈の注意点>
• 抗体陽性は、「過去に感染した可能性が⾼い」ということを意味するのみ
• 抗体アリ ≠ 感染防御免疫アリ
• 抗体検査は、ウイルスに対する免疫反応を検出することから、必ず⾮特異反応
がある
• ヒトの免疫反応は個⼈差が⼤きく、年齢、性別、⼈種、居住地域の新型コロナ
以外の感染症の流⾏状況、ほかの感染症のワクチン接種歴などに影響される可
能性がある。
• 患者個⼈の診断に⽤いる場合は、抗体検査の臨床的意義を熟慮する