ワクチン3回目、製薬会社は「必要」 接種格差が課題
米製薬大手ファイザーに続き米バイオ企業のモデルナが5日、新型コロナウイルスワクチンについて3回目の追加接種(ブースター接種)が必要となるとの見方を示した。
イスラエルや欧州が3回目接種へ動き出す一方、世界保健機関(WHO)はまず途上国へワクチンを行き渡らせる必要性を主張。
ワクチンの確保を巡り、世界で格差が課題となる。
モデルナは5日、6カ月後からは「インド型(デルタ型)」などの変異ウイルスに対する予防効果が低下し始めるとのデータを明らかにした。
2回目接種後に93%の有効性が確認され、6カ月間は効果が持続する。
しかし強い感染力を持つデルタ型などに対して、体内でウイルスの働きを抑える「中和抗体」の量が徐々に減り、ワクチンの効果に影響を与えるとして3回目の追加接種が必要になるとの見解を示した。
<コメント>
「『中和抗体』の量が減る=ワクチンが効かなくなる」というわけではありません。
ワクチンは「中和抗体」以外にも効くメカニズムがあるため、疫学的に、ワクチン接種後の感染率、重症化や死亡率を見ることが重要となります。
なによりも、第三者ではなく当事者のワクチンメーカーの発表ですから慎重に受け止める必要があります。
投与量や効果を見極めるため、現行のワクチンやデルタ型に対応したワクチンなどを使って複数の臨床試験(治験)を進めている。
変異ウイルスも含め予防効果を高めることを確認したという。
米ファイザーも7月、3回目の接種が必要になる可能性が高いとの見解を明らかにした。
2回目の接種から6~12カ月以内に3回目の追加接種が必要になるとみる。
<コメント>
日本政府も、3回目の接種を計画中のようです。
課題のひとつとして強まるのが、ワクチン確保を巡る格差だ。
ワクチンの供給は先進国に偏っており、新興国や発展途上国ではワクチンが十分に行き渡っていない。
国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」などを通じた配布も進むが、まだ1、2回目の接種率が低い国も多い。
WHOは少なくとも9月末まで各国による3回目接種を控えるように求めている。
国家間の格差が広がっているのを念頭に、公平な供給の観点から各国に協力を呼びかけている。
感染が世界で広がっており、対策が遅れる国がある限り新たな変異ウイルス発生のリスクがあるなどコロナ禍の収束は遠ざかる。
他方、ワクチンの接種が進む国では3回目が広がり始めている。
イスラエルでは変異ウイルスへの対応として60歳以上の市民に接種を開始。欧州ではドイツも9月から高齢者やリスクのある市民への接種を始める方針で、イギリスなどでも実施に向けた検討が進む。
ロイター通信などによると、米国でも、バイデン政権のファウチ首席医療顧問は5日、持病で免疫が低下している人などに対する追加接種の実現に向けて取り組んでいると明らかにした。
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2021.8.7