(新型コロナ)3回目のワクチン接種の効果は?

(新型コロナ)3回目のワクチン接種、効果は 海外では「感染リスク減」の報告も

新型コロナウイルスワクチンの3回目接種に注目が集まっている。

「ブースター接種」と呼ばれ、日本ではまだ必要性が議論されている段階だが、イスラエルなどすでに始まっている国もある。

なぜ、ブースター接種は必要なのか。

今後のワクチン戦略にどんな影響があるのか。

 

世界で最も早くワクチン接種が進んだイスラエル 

8月1日、2回目の接種から5カ月がたった60歳以上の高齢者を対象に、3回目の接種が始まった。

対象年齢はすでに12歳以上にまで引き下げられている。

米国などでも計画されている。

 

ワクチンの予防効果は完璧ではない。

接種済みの人が感染したり発症したりする例はあり、免疫による守りを「突破する」という意味で、「ブレークスルー」感染と呼ばれる。

 

接種から時間がたつことで、感染や発症を防ぐ効果が弱まることも分かってきた。

拍車をかけたとされるのが、感染力の強いデルタ株だ。

 

疾病対策センター(CDC)の報告では、7月に米マサチューセッツ州であった大規模イベントに関連し、400人以上の感染が確認された。

4分の3ほどがワクチン接種を完了した人だった。

調べられた検体(133人分)のうち9割はデルタ株だったという。

 

このような状況で検討が本格化したのが、「ブースター接種」だ。

 

ワクチン接種による免疫の獲得は、「一夜漬け」の勉強みたいなもの、と考えると理解しやすい。

記憶がつくられても、直後のテストでしかよい結果がでないように、ワクチンの効果が薄れるのも早いことがある。

ブースター接種は「復習」のようなもの。

記憶を刺激し、もう一度テストに備え直すイメージに近い。

 

デルタ株が流行するイスラエルからの暫定的な報告によると、2回接種だけの人に比べ、3回接種から1~2週間の人の感染リスクは48~68%減り、2週間以降ではさらに効果が高まったという。

 

■ 供給の偏り、WHO懸念

ただ、現時点でのブースター接種の開始には慎重な意見もある。

 

その理由の一つは、2回目の接種から時間がたっても、重症化や死亡を予防する効果は、大きく損なわれていないとされることだ。

CDCはワクチンの効果について、「デルタ株に対しても、重症化、入院、死亡を防ぐために非常によく効いている」としている。

 

世界的にワクチン供給が、豊かな国に偏っていることも要因だ。

世界保健機関(WHO)によると、これまで世界で55億回のワクチンが接種されたが、その80%は高・中所得国だった。

高所得国はほかの国への支援として、10億回以上にあたるワクチンを寄付すると約束しているが、実現したのはそのうちの15%以下だという。

 

新型コロナウイルスは感染して増殖するときに変異する。

一部の国で接種率を上げても、ワクチンが届かない国があるかぎり、ワクチンが効きにくい新たな変異株が生まれる可能性は高いままで、それは世界全体の脅威となりうる。

 

WHOはブースター接種はワクチンの需要を高めて、不公平感を悪化させると懸念。

テドロス事務局長は8日の記者会見で、3回目の接種を少なくとも年末まで控えるように各国に呼びかけた。

 

日本でも3回目接種の必要性を指摘する声が増え、政府が検討を始めている。

 

「3回目の接種も、総合的なリスクとベネフィット(利益)のバランスで考える必要がある」と、ある専門家指摘する。

日本でも、2回接種した人が5割ほどと接種率は上がってきたが、まだ接種を希望するすべての人に行き届いていない。

ブースター接種を急ぐよりも、希望する人への接種率を高めることの方が先決だ.

 

ただ、ワクチン接種で得られる免疫の働きがいずれ弱まることは確かで、中長期的には追加のワクチン接種が必要になると考えられている。

 新型コロナの感染者が完全にゼロになるのは難しい。

インフルエンザのように季節性のものになるのかもわからない。

ワクチン接種の戦略をどうしていくべきかは、引き続き根拠にもとづいて議論していかないといけない。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞 2021.9.12

 

<コメント>

現行のワクチンは重症化を防ぐ効果は高いが、感染を完全に防ぐわけではない。

ワクチンを筋肉注射すると通常、血液中に「IgG」というタイプの抗体が増える。

ただウイルスがまず付着する鼻やのどの粘膜にはIgGの量が少なく、感染予防効果は限定的だ。

粘膜に分泌されるタイプの「IgA」という抗体が鼻やのどにできれば感染自体を防ぐ効果が高まる可能性がある。

つまり、鼻やのどに感染予防効果が期待できる噴霧型ワクチンと重症化を防ぐ筋肉注射の二つのワクチンで「ダブルブロック」することが有効と考えられる。

逆に、どちらか一つだけでは不完全ともいえる。

感染が減れば変異株の出現も少なくなり、当然のことながら死者も減り経済もより早く回復するようになるのではないだろうか。

 

参考

鼻から感染防ぐ噴霧型ワクチン

https://osler.hatenadiary.org/entry/2021/09/10/060000