新型コロナワクチン接種後に抗体が減っても免疫系に「バックアッププラン」があった─重症化を防ぐ理由か
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新型コロナワクチン接種によって体内にできた抗体は時間と共に減少するが、免疫系にはブースター(追加接種)に頼らないバックアッププランがあることが、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン技術が開発されたペンシルベニア大学の科学者たちによる研究でわかった。
同大医学大学院の研究者たちは、mRNAワクチンを接種した61人を6ヵ月にわたって経過観察した。
そこで研究班が気づいたのは、抗体は徐々に衰退していくものの、ワクチン接種によって新型コロナウイルスへの持続的な免疫記憶がB細胞とT細胞として作られ、それらの細胞が徐々に増えて、重症化を防ぐ役目を担っているということだった。
驚くべき免疫系のサポート機能
新型コロナワクチンの接種を早くから始めていた国々では、感染力の強いデルタ株に対するワクチンの防御力が弱くなっていることが懸念されている。
そこで各国の保健機関は、抗体価を上げるために3回目の接種を検討している。
バイデン米大統領は8月27日、2回目の接種から5ヵ月経過した人に追加接種を提供しはじめるかどうかを政府として検討していると述べた。
3回目の接種によって抗体が強化され、新型コロナウイルスをより長く阻止できるようにはなるはずだが、たとえ循環抗体の価が下がったとしても、人体には独自のサポート機能が自然にあり、それが新型コロナ感染症を防いでくれる。
抗体が減少し、局部的に少し感染するとしても、メモリーB細胞がそこにやってきてすぐさま更新(反応)し、新しく中和抗体を作ってくれるのだ。
鼻や喉を覆う粘膜の表面上にある抗体は、コロナウイルスを進入路で阻止し、感染を防ぐ。だが、そこで守ってくれる抗体が弱まるにつれ、少なくとも新しい抗体が対応に駆けつけてくれるまでは感染する可能性は高まる。
ワクチンが重症化を防ぐことの説明がつく
モデルナ製およびファイザー/ビオンテック製のmRNAワクチンによって体内に作られたメモリーB細胞が、コロナに感染して軽症で終わったあとに作られたB細胞よりも、アルファ、ベータ、デルタ含む変異株の阻止に優れていることも同研究グループは発見した。
さらに、ワクチン誘導のT細胞(白血球の一種で、ウイルスに感染した細胞を見つけ殺す能力がある)が接種から6ヵ月後でも高レベルで検知され、それが(さらなる鎧として)私たちを守り続けてくれているのだ。
今回の発見は、ワクチン接種後のブレークスルー感染が増えているものの、ワクチンが重症化や入院、死亡を防ぐ点で効果的であり続ける理由を説明してくれるものだ。
効力の低下が見られるのは、感染者が出ているかどうかだけで評価した場合だ。
しかし、重症化するかどうかで評価すれば、かなり安定した免疫があることになる。
これは、循環抗体があなたを感染から守るものだとすれば、メモリーB細胞とメモリーT細胞は、あなたの鼻のなかにウイルスが多少留まることを防いでくれないとしても、実際に重症化を防ぐものという考えと合致するものでもある。
こうした免疫によるバックアップは、新型コロナ感染症の発症期間を短くし、悪化を防ぎ、ほかの人にウイルスを感染させる可能性を減らしてもくれる。
ワクチン接種済みの人たちが状況を悪化させているわけではない。
悪化させているのは、明らかに未接種の人たちだ。
だからこそ、ワクチンを受ける理由がなおさらあるのだ。