コロナ、残る再感染リスク 

コロナ、残る再感染リスク 一度かかっても変異型には免疫弱く

新型コロナウイルスに一度感染した人が再感染するリスクが明らかになってきた。

変異ウイルスの種類によっては免疫の効き目が下がり、再感染する可能性が上がる。

ワクチンを接種した人でも感染リスクはゼロにはならないが、重症化を抑える効果は高い。

感染経験があっても接種が欠かせず、接種してもマスク着用などの対策は重要だ。

 

人は感染症に一度かかると免疫がつき、同じ感染症にかかりにくくなったり、症状が軽くなったりする。

病原体が体内に再び侵入してきたときの免疫反応が強く迅速になる「免疫記憶」が働くからだ。

 

ただ、免疫が持続する期間などは感染症によって異なる。

麻疹や水ぼうそうなどのように一度かかるとめったに再びかからないものもあるが、いずれ再感染が起こる場合も少なくない。

 

イングランド公衆衛生庁のグループは病院に勤務する医療従事者ら2万5千人以上を追跡した大規模な調査研究の結果を英医学誌ランセットに発表した。過去に新型コロナに感染していた約8千人、未感染の約1万7千人に定期的に検査を実施し、2020年6月~21年1月のデータを分析した。

 

過去に感染していたグループが再感染する確率は、未感染のグループが初めて感染する確率の約0.2倍にとどまった。コロナの症状が出た感染者だけに限ると、再感染の確率は約0.1倍とさらに低かった。

 

新型コロナに一度感染すると免疫によって再感染はある程度防げるが、再びかかるリスクは残るようだ。

国内では再感染についてまとまった調査やデータはないが、保健所によると再感染とみられる人は一定数いるという。

 

ブラジルで再流行

変異ウイルスでは免疫の効果が弱まり、従来型よりも再感染しやすい可能性が懸念されている。

ブラジル北部の都市マナウスでは、20年夏にかけての大規模な流行で住民の7割が抗体を持ったといわれ、20年秋にかけて流行はいったん収まった。

だが20年末からの流行は第1波を上回り、感染者や死亡者が著しく増えた。

 

英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどのグループはマナウスで採取したウイルスなどを詳しく調べ、20年11月ごろに変異ウイルス「ブラジル型」が出現した影響が大きいと結論づけた。

感染力が従来型の推定1.7~2.4倍と強いだけでなく、免疫が効きにくいため再感染もしやすくなっていると分析した。

 

ただ、一度感染した人もワクチンを接種すれば免疫が強化され、再感染のリスクが格段に下がる。

ワクチンは免疫記憶を人為的につくるものだ。

病原体の一部や、病原性をなくしたり弱くしたりした病原体を接種して免疫反応を働かせる。

 

ファイザーと独ビオンテックや米モデルナのワクチンは新型コロナウイルスの一部を体内で作らせる仕組みだ。

発症を防ぐ効果が約95%、感染を防ぐ効果も約90%と非常に高い。

 

接種後も低頻度で

十分な効果が出るのは2回目の接種から2週間以上たってからとされるが、それでも効果は100%ではない。

発生頻度は非常に少ないが、2回の接種を終えた人でも感染や発症は起こる。「突破」を意味する「ブレークスルー感染」と呼ばれる。

 

疾病対策センター(CDC)によると、米国では6月7日時点で1億3900万人以上が規定回数の接種を終えた。

ブレークスルー感染に当たる入院や死亡の報告は3459件で、65歳以上が4分の3を占めた。

3275件の入院のうち802件、603件の死亡のうち100件はコロナの症状がないか、直接の関連がないものだったという。

 

ワクチンは感染や発症を全て防ぐことはできないが、たとえ感染した場合でも重症化しにくくなる。

ブラジル型や南アフリカ型、インド型といった免疫を回避する性質を持つ変異ウイルスに対しては感染や発症を防ぐ効果が下がるが、それでも入院や死亡を減らす効果は期待できる。

 

流行が収まるまではワクチンを接種していても感染のリスクがあると考え、マスク着用などの感染対策を続けることが重要だ。

 

<免疫記憶>

体内に侵入した病原体を免疫細胞が記憶し、再び侵入したときに排除する反

応が強く迅速に起こる仕組み。

例えば、抗体を作る細胞「B細胞」の一部は、初回の侵入時の記憶を持って残り、2回目の侵入時に素早く反応する。

一度かかった病気に二度かかることは少ないという「二度なし」の現象は古くから知られ、疫病を免れるという「免疫」の言葉の由来にもなる。

 

ワクチンは免疫記憶を人為的につくる。

英国のジェンナーが見つけた天然痘の予防法をフランスのパスツールがワクチンと名付け、予防接種の概念をつくった。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.6.21