3種類のワクチンの違いは? モデルナなど承認判断へ
厚生労働省は20日、米モデルナ製と英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンについて製造販売の特例承認を薬事・食品衛生審議会の専門部会で審議する。
両社のワクチンは国内で最初に承認された米ファイザー製と同じく、2回の接種が必要だ。
ワクチンの効果が十分に表れるまでは2回目の接種から約2週間かかり、マスクの着用など基本的な感染対策が欠かせない。
3社のワクチンは海外で既に広く使われている。
カナダのマギル大学のまとめによると、承認している国・地域はファイザー製で約80、モデルナ製が約40、アストラゼネカ製は約100に上る。
国内ではモデルナ製について承認を前提に、24日から東京都と大阪府で始まる大規模接種で使われる方向だ。
承認数が最も多いアストラゼネカ製は、米国での臨床試験(治験)で発症を予防する効果が76%、65歳以上の高齢者に限れば85%という結果が出ている。
6割程度とされるインフルエンザワクチンと比べても十分に高い効果がある。ファイザー製の発症予防効果は95%、モデルナ製は94%とさらに高い。
アストラゼネカのワクチンは英オックスフォード大学と共同開発し、「ウイルスベクター」という技術を使っている。
人体に無害なウイルスをベクター(運び屋)として利用し、新型コロナウイルスのたんぱく質を作るための遺伝情報を体内に運ぶ。
遺伝情報をもとにウイルスのたんぱく質が作られ、新型コロナに対する免疫がつく。
アストラゼネカは少なくとも9000万回分のワクチン原液を日本国内で製造する予定だ。
中堅製薬企業のJCRファーマがアストラゼネカから技術移管を受けて神戸市でワクチン原液を生産し、第一三共と明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクス(熊本市)が容器への充填を担う。3月から原液の出荷などが始まった。
一方、モデルナ製とファイザー製はともにメッセンジャーRNA(mRNA)という遺伝情報物質をワクチンとして投与する仕組みだ。mRNAをもとに体内でウイルスのたんぱく質が作られ、新型コロナに対する免疫がつく。
既にコロナに感染した人もワクチンの接種は必要だ。
感染した人の免疫も完全ではなく、再感染することもある。
ワクチン接種によって血中の抗体が増え、免疫反応が強くなることが確認されている。
3社のワクチンは変異ウイルスにも一定の効果がある。
国立感染症研究所によると、英国型の変異ウイルスに対し、ファイザー製とアストラゼネカ製の効果は「低下なし~微減」と従来型とほぼ同等だ。
モデルナ製についてはデータが少ないが、同程度の効果と推定される。
免疫を回避しやすいと懸念される南アフリカ型に対する効果は少し下がるが、重症化などを防ぐ効果は十分にあるようだ。
副作用についても、ファイザー製とモデルナ製はほぼ同じだ。
最も多いのは注射した部位の痛みや腫れで、全身の症状として倦怠感や頭痛、発熱などがある。
ほとんどの副作用は接種から1~2日後までに症状が出るが、数日のうちに回復する。
接種直後のまれな副作用としては、急激なアレルギー症状である「アナフィラキシー」が起きる場合がある。
アストラゼネカ製も2社と似ており、注射した部位の痛み、全身の倦怠感や頭痛、発熱などが起こる。
そしてごくまれに血栓の発症が報告されている。
欧州医薬品庁(EMA)は接種の利益がリスクを大きく上回ると判断した。ドイツは一時、接種対象を60歳以上の高齢層に限定していたが解除した。
一方、英政府の諮問委員会は7日、予防的措置として40歳未満の若年層にはアストラゼネカ製以外のワクチンを勧めると発表した。
これまで30歳未満としていた対象を拡大したが、大多数の人にとっては接種の利益がリスクを上回ると強調する。
どのワクチンも筋肉注射で2回の接種が必要な点は同じだ。
1回目の後、ファイザー製は通常3週間、モデルナ製とアストラゼネカ製は4週間あけて2回目の接種を受ける。
2回接種するのは免疫をしっかり働かせ、発症や重症化を防ぐ効果を高めるためだ。
十分な効果が得られるまでは2回目の接種から2週間程度かかるとされる。
マスクの着用や手指消毒、「3密」回避などの感染対策を怠らないことが大切だ。
ワクチンの効果は100%ではないため、感染や発症を完全に防ぐことはできない。
接種を受けた人がまだ少ない国内の現状では、2回目の接種から2週間以上たっても感染対策をしっかり続けたほうがよい。
参考・引用一部改変
日経新聞 2021.5.20