がん5年生存率、拠点病院で差

がん5年生存率、拠点病院で2倍の差 新薬が左右も

がん医療の中核として厚生労働省が指定する全国約400の拠点病院などの間で、診断から5年後の生存率に最大2倍の格差があることが日経新聞の調査で分かった。

新薬を早期に投与できる体制などの違いが影響した可能性がある。

病院ごとの成績比較を通じて、医療の質を底上げする取り組みが必要だ。

 

生存率の基礎データは2013年に成立したがん登録法に基づいて国立がん研究センターが集計している。

 

日経新聞は7月中旬に公表された「院内がん登録生存率集計報告書」をもとに、12~13年に診断された患者の施設別の生存率を分析した。

対象は「がん診療連携拠点病院」中心に年平均100例以上治療している病院とした。

 

がんが進行した患者が多いと全体の治療成績が下がる。

今回は進行度(1~4期)の違いを調整し、全国平均が100となる指標「生存率係数」で比べた。

 

病院間で最も格差が大きかったのは肺がん。

転移しやすく、早期に発見しないと5年生存率が低くなる。

トップの愛知県がんセンター(名古屋市)は係数が130で、全国平均より3割高かった。

最も低かったのは同じ中部地方の病院の61で、2.1倍の開きがあった。

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各病院の症例を、がんの「進行度」別に検討しない限りは公表結果の解釈を誤る可能性があります。

手術の正しい適応も各病院の実力のうちでしょうが、こういったデータから読み取ることは出来ません。

 

肺がんは近年、進行がんに有効な薬物療法が相次いで開発されている。

12~13年からの5年間にも新薬が登場した。

同センター呼吸器内科では「承認に向けた臨床試験(治験)段階で投与できた患者の生存率が高まるなどした影響があるかもしれない」とみる。

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最先端の「がん拠点病院」ほど数多くの「治験」をかかえています。

抗がん剤の副作用のために治験をやむなく中断する症例は「脱落例(ドロップアウト)」となります。

こういったことを避けるため、主治医が副作用に寛容になり(言葉は悪いのですが)ある程度「ゴリ押し」する症例もあるかも知れません。

効果が高く副作用の少ない抗がん剤の治験の場合には、当然生存率が高まりますが、逆の場合にはミゼラブルです。

今回の集計は「がん治療」ということですから、手術だけでなく、手術前後の内科的治療(抗がん剤投与)も加味された総合的なものとなります。

 

他の部位別の格差は大腸が1.6倍、大腸が1.5倍、肝臓が1.4倍、乳房が1.1倍だった。

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施設間格差をみると、臓器別では「乳がん」は小さいことがわかります。

もっとも、「乳がん」に関しては、10年生存率で比較する必要があるかも知れません。

また、「肝臓がん」が「大腸がん」や「大腸がん」より小さいことも意外でした。

 

地域のがん医療の中心となる拠点病院でも治療成績にばらつきがある実態が浮き彫りになった。

全体として、平均を下回った病院の治療成績が平均水準であれば、2年間で約7000人が5年を超えて生存できた可能性がある。

 

国立生存率は治療技術だけでなく、がんの進行度以外の患者の状態や年齢にも影響を受ける。

そのうえで各病院は、生存率を優劣でなく、検討材料として比較することで、がん医療の質向上のために活用したい。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.9.4