新型コロナウイルスの変異

ウイルス、10ヵ所以上変異

感染力変化の可能性

ウイルスの変異は自然界で頻繁に起きる。

ウイルスは一般に人の体内で自分のコピーを作る際、一定の頻度で間違いを起こす。

新型コロナでは3万文字ある遺伝情報のうち2週間に1カ所の頻度で変異が生じる。

 

変異種は英国の研究者らによる新型コロナウイルスゲノム解析プロジェクト「GOG-UK」などの調査で明らかになった。

14万人分ものゲノムを解析しており、英国は感染者も多いことから、見つかりやすい条件がそろっていた。

 

既知のウイルスに比べ10カ所以上の変異があった。

英政府の専門家チームは、感染者に占める変異種の割合から感染力が7割高まった可能性があるとした。

 

変異の多くは、ウイルスが人の細胞に感染する時に使う「スパイク」と呼ぶウイルス表面の突起で起きていた。

特に専門家が注目するのは、ウイルスと人の細胞の結合部位に関する「N501Y」と呼ぶ変異だ。

 

ウイルスは人の細胞表面にあるたんぱく質にスパイクを結合して細胞内に侵入する。

5ヵ所あるスパイクの重要部の1つに変異が起きていた。

それにより、感染力が変わった可能性があるとみられている。

東海大学の中川草講師は「専門家が危険性を予想していた変異体が出現した」と言う。

 

現状ではウイルス自体を詳しく調べたわけではなく、正確な感染力や病原注

は不明だ。

実験などで検証が必要で、少なくとも2~3ヵ月かかるとみられる。

 

ワクチンの効果との関係も分かっていない。

ただ、接種すると体内にはウイルスの様々な部位に対する免疫ができるため、変異によって効果が大きく損なわれる可能性は低い見込みだ。

治療への影響も不明だが、患者から採取した抗体を投与する血漿療法などが効かなくなる可能性は低いとみられる。

 

国立感染症研究所の松山州徳室長は「いずれ国内に入る可能性が高い。監視して待ち構える必要がある。

重症化しやすい高齢者に感染しないように注意がいる」と話す。

飛沫感染接触感染といった感染経路は基本的に変わらない。

マスクの装着や手洗い、人の集りを避けるといった従来どおりの感染対策が重要だ。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2020.12.22