デルタ型に変異 国内で確認、ブレークスルー感染も発生
世界で猛威を振るう新型コロナウイルスのデルタ型に、国内で新たな変異が見つかった。
世界的な流行が収まらないなか、ウイルスの遺伝的な変異は続いている。
世界保健機関(WHO)が警戒するデルタ型以外の変異型も国内で確認されている。
今後も感染力や病原性の変化に注意が必要だ。
東京医科歯科大学は8月中旬、新型コロナに感染していた患者から、新たな変異が加わったデルタ型を検出した。
ウイルスの表面にある突起状のスパイクたんぱく質に「N501S」という変異があった。
かつて感染の主流だった英国由来のアルファ型などにあり、感染力を強めるとされる「N501Y」に近い変異だ。
デルタ型は「L452R」などの変異を持つことが感染力の強さに影響しているとされてきたが、これまで「N501Y」や「N501S」の変異はなかった。
海外でも8例確認
東京医科歯科大の報告と同様の変異を持つデルタ型は、海外ではそれまでに8例確認されていたが、今回の事例は「国内で新たに変異を獲得した可能性が極めて高い」という。
感染力や病原性への影響は現時点で不明だ。
ただ、東京医科歯科人は9月7日、この新たな変異を持つデルタ型を検出した患者が接触した人が、同じ変異を持つデルタ型に感染していたことを明らかにした。
ワクチンを2回接種してから2週間が経過していた人への「ブレークスルー感染」も確認した。
従来のデルタ型と同等の感染力があるという。
今後も疫学調査を続けて、影響を見極めていくという。
WHOは世界的に警戒すべき変異型を2つに分けて指定している。
最も警戒レベルが高い「懸念される変異型(VOC)」と2番目の「注目すべき変異型(VOI)」で、変異型ごとの感染状況を見極めながら指定したり、指定を外したりしている。
8月30日に新たにVOIに加えたのがミュー型だ。
ミュー型は1月にコロンビアで見つかった変異型で、南米のほか、欧州でも大規模な集団感染を起こした事例があるという。
8月29日時点で、新型コロナウイルスのデータベースには39力国から4500件以上のゲノム解析の結果が報告されているという。
VOIに指定したのは「免疫逃避の性質をもつ可能性がある」(WHO)ためだ。
感染力に関わる「N501Y」と免疫逃避に関わる「E484K」の変異を持つ。
この変異は、VOCに指定されている南アフリカで見つかったベータ型や、ブラジルで見つかったガンマ型にもある。
ミュー型は国内でも空港検疫で6月と7月に、海外からの渡航者で2例確認されている。
ほかにもVOIに指定されているラムダ型も国内で検出されている。
厚生労働省が20年12月以降に日本に入国・帰国した陽往者のゲノム解析結果を集計したところ、ラムダ型は3件確認された。
WHOは世界的に報告が減り、流行が落ち善いているVOIについては指定を解いている。
9月20日には「イータ型」「イオタ型」「カッパ型」をVOIの下の分類の「監視中の変異型」にした。
*新たな警戒対象
WHOが命名していないものの、国レベルで警戒している変異型も出てきている。
南アフリカの国立感染症研究所などが8月中旬に公表した査読前の論文によると、学術的
に「C.1.2」系統と呼ばれる変異型は、VOCと共通する変異を多く持っており警戒が必要だとしている。
5月に同国で最初に確認され、その後、英国や中国など少なくとも10カ国で見つかった。ただ最近は報告が大きく減っている。
ウイルスは一般的には人の体内で増える過程で、一定の頻度で変異を繰り返す。
感染力や病原性を強める場合もあれば、逆の変異も起きる場合がある。
ウイルスは増殖する機会があればあるほど、変異を獲得する機会が増える。
ワクチン接種の推進や基本的な対策を徹底して感染を抑え込むことが、より脅威となる変異型を生み出さないために重要だ。
ウイルスの変異
ウイルスが増殖する際、遺伝情報のコピーミスが起きて変異が生じる。
遺伝情報が書き換わると、ウイルスを形作るたんぱく質が変わる。
新型コロナウイルスの場合、表面にある突起状のたんぱく質の変化に注目する。
このたんぱく質はウイルスが人の細胞に入り込む際に重要な役割を果たすほか、ワクチン接種などでできた抗体が攻撃する対象となるためだ。
このたんぱく質を構成する約1300個のアミノ酸のうち、例えば501番目がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わった場合の変異を「N501Y」と表現する。
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 202.9.27