変異ウイルス8種にWHO警戒

デルタ型が国内席巻の恐れ 変異ウイルス8種にWHO警戒

インドで初めて確認されたインド型(デルタ型)は国内で大勢を占めると予想されるなど感染が拡大している。

世界保健機関(WHO)は「懸念される変異(VOC)」にデルタ型を含む4種類、「注意すべき変異(VOI)」に4種類の変異ウイルスを分類した。

今後も新たなタイプの登場が危惧されている。

 

VOCとは感染力や重症度が増し、ワクチンの効果を下げるといった性質の変化がみられた変異ウイルスのことだ。

VOCに続き、感染力やワクチンの効果などに影響を与える可能性のある種類をVOIと指定している。

特定の国への差別的な扱いを避けるため、WHOは5月末からVOCやVOIをギリシャ文字で呼ぶようにした。

 

デルタ型は2020年10月にインドで初めて確認された。

WHOは5月、デルタ型をVOCに指定した。

国際的に割合が増しており、WHOによると13日時点で111の国や地域で報告された。

 

ウイルスが細胞に感染する際に足がかりにするウイルス表面のたんぱく質「スパイク」に「L452R」という変異がある。

WHOのグループの分析では感染力が英国型(アルファ型)よりも55%強い

 

シンガポールの報告では、従来よりも酸素利用、ICU入室または死亡のリスクが4.9倍になり、肺炎のリスクが約1.9倍になる。

スコットランドの報告では、米ファイザー製ワクチンの感染予防効果は79%としている。

イングランド公衆衛生庁などによると、2回接種すると発症予防効果は88%、入院予防効果は96%ある。

 

デルタ型から派生し、「K417N」という変異を持つタイプも日本をふくめ世界で報告されている。

この変異は抗体が認識する部位にあり、抗体の効果が弱まると考えられている。

 

VOCにはデルタ型のほかにアルファ型、南アフリカ型(ベータ型)、ブラジル型(ガンマ型)がある。

 

アルファ型は20年9月に感染例がみつかっている。

スパイクに「N501Y」という変異がある。

国立感染症研究所は、感染力を従来の約1.3倍としている。

海外の報告では、従来と比べて死亡率は61%増え、入院リスクは約1.5倍とした。

 

ファイザー製ワクチンを2回接種すると、感染で約95%、発症で97%の予防効果があるとイスラエルの研究者らが報告している。

WHOによると178の国や地域で報告があった。

 

ベータ型の発生は20年5月といわれている。

N501Yに加え、免疫から逃れる「E484K」という変異を持つ。

感染力が約5割高く、入院時の死亡リスクが増えた可能性が指摘されている。

 

ベータ型が流行した際の中東のカタールの報告では、ファイザー製ワクチンを2回接種後の感染予防効果は75%としている。

重症化予防の効果などの報告はあまりないが、日本感染症学会は「一定の効果はあると考えられる」との見解を示す。

 

20年11月にブラジルで見つかったガンマ型は、ベータ型と同様にN501YとE484Kの変異を持つ。

感染力は従来の1.7~2.4倍との報告があり、入院リスクが増した可能性がある。

ワクチン接種後の血液の分析から、ワクチンの効果を弱める可能性も指摘されている。

 

VOIは現在4種類ある。

6月14日に新たに分類されたのは「ラムダ型」だ。

ペルーで20年8月に最初の報告がされた。

チリ、ペルー、エクアドルなど特に南米で広まっている。

「L452Q」の変異をもち、感染性の増加と抗体の効果が弱まる可能性があるが、データが限られておりよく分かっていない。

 

ほかにも英国で見つかった「イータ型」、米ニューヨークで見つかった「イオタ型」、インドで見つかりデルタ型と同じくL452Rの変異をもつ「カッパ型」がある。

 

ウイルスにも栄枯盛衰がある。

米国で見つかった「イプシロン型」、ブラジルで見つかった「ゼータ型」、フィリピンで見つかった「シータ型」は発生率が下がったため、WHOはVOIから監視が必要などとする扱いに引き下げた。

 

国内の分類

国内では国立感染症研究所が国内の感染状況をもとに、独自に変異ウイルスをVOCとVOIに分類している。

VOCについてはWHOと同じだが、VOIにはイプシロン型、シータ型、カッパ型、およびE484K変異がある「R1系統」の4種を指定している。

感染研の報告によると、国内の新型コロナウイルスはアルファ型にほぼ置き換わり、さらにデルタ型が増加しつつある。

デルタ型の占める比率は関東地方などで増えており、8月中には、ほとんどが置き換わるという推定もあり、監視体制を強化している。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.7.19