(新型コロナ)後遺症、見えてきた実態 肺機能低下、重症者の半数
新型コロナウイルスに感染して治った後も、息苦しさや倦怠感、筋力の低下が続くことがある。
こうした症状はどのくらいの頻度で、いつまで続くのか。
厚生労働省の研究班が実態を調べている。
重症者の半数は、退院から3カ月後も肺の機能が低下したままだという結果も出てきた。
新型コロナウイルスの研究班が、血液中の酸素濃度が下がった中等症以上の患者の肺に残る影響を調べた研究の中間報告が発表された。
昨年9月以降に各地の病院で入院した患者計512人(平均62歳)に、退院から3カ月後、肺機能の検査を受けてもらった。
症状が重くなるほど肺の機能が回復していない傾向がみられた。
肺から血中に酸素を取り込む「肺拡散能」でみると、健康な人の検査値の80%に届かない人が、人工呼吸器を使うような「重症」だった人では52%に上った。
自覚症状を調べると、重症だった人では77%が筋力低下を感じ、50%が息苦しさ、34%がせきが続いていると感じていた。
重症、中等症だった人の2~3割に倦怠感がみられたが、入院中には5~7割だったことに比べれば、改善の兆しがあるという。
CTの肺画像が入院時のものと比べられる353人を調べると、3カ月後も54%で、すりガラス状の影などの変化があった。
肺炎の痕跡とみられ、通常の細菌性肺炎なら、こうした影は3カ月後にはほとんど見えなくなる。
肺炎の影響が長引く新型コロナの特徴だ。
海外の先行研究では、こうした影響も長期的には改善する傾向を示しているといい、研究班は今後も検査を継続する。
■ 症状長引く人、不安やうつ傾向
別の研究班は、全国の27施設で2月までに入院した患者に、定期的に後遺症の有無を尋ねた。
診断から6カ月後の調査には246人が回答。
21%で疲労感・倦怠感、13%で息苦しさ、11%で睡眠障害、10%で脱毛、9%で筋力低下が認められた。
退院前と比べれば、こうした症状のある人の割合は減っていたが、診断から3カ月後と比べるとほとんど変化はなかった。
長引く症状が一つでもあると、健康に関連した生活の質(QOL)が下がり、不安や抑うつ、コロナへの恐怖の傾向が強まっていた。
ただ、診断から6カ月後の調査では、約8割の人は、長引く症状の有無に関わらず、発症前の健康状態に戻ったと自覚していた。
この研究班では今後、長期化しやすい症状と属性、QOLの関連性などを調べる予定になっている。
さらに別の耳鼻科の研究班では、2~5月、入院中やホテル療養中の患者251人に、味覚・嗅覚の自覚症状を尋ねた。
37%が味覚と嗅覚に障害があると答え、20%は嗅覚のみ、4%は味覚のみに障害があると回答した。
嗅覚、味覚障害ともに女性の方が頻度が高かった。
119人は、実際に味覚・嗅覚がどれだけ低下しているか、検査キットで調べた。
嗅覚障害を自覚している人の多くは、嗅覚検査が正常値以下だったが、味覚障害を自覚している人の多くは、味覚検査の結果が正常だった。
多くの味覚障害は、嗅覚障害によって、食べ物の香りがわからず、味の感度が落ちる風味障害の可能性が高いという。
さらに退院から1カ月後の状況も調べると、嗅覚障害の改善率は60%、味覚障害では84%だった。
研究班は「症状は感染症の治癒に伴っておおよその人で早急に消失する」としている。
ある専門家は「嗅覚、味覚障害は、基本的にはあまり心配しなくていい。1カ月以上長引くような場合は耳鼻咽喉科などの受診を」と話す。
ワクチンの接種が進み、重症化する人が減っているが、軽症であっても後遺症が残る場合がある。
治療は対症療法が中心で、専門外来を備える医療機関は少ない。
感染対策が引き続き重要だ。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2021.7.18
<関連サイト>
新型コロナウイルス 症状と後遺症
https://aobazuku.wordpress.com/2021/07/19/新型コロナウイルス%E3%80%80症状と後遺症/
<コメント>
「新型コロナウイルスの『後遺症外来』」と称する専門外来が少しずつですが全国に広がって来ています。
後遺症自体が多岐に渡るため、多くの科がワンチームとなって診療に当たるのが理想です。
しかし、現実はそうでもないようです。
そもそも、後遺症の治療がどこまで奏功するのかも少し疑問です。
参考
https://www.kitano-hp.or.jp/section/kansen/corona_sequelae
https://www.ctv.co.jp/news/articles/g4532x79nkawkerb.html
https://www.nagoyatv.com/news/?id=007720
http://www.houtokukai.or.jp/news/kouishou.html