コロナ薬、増えぬ選択肢

コロナ薬、増えぬ選択肢 承認ようやく3種類目、国産めど立たず

新型コロナウイルス治療の選択肢がなかなか増えない。

国内ではようやく3種類目の治療薬・治療法が使えるようになったばかりで、治療現場は別の病気のために承認済みの薬を医師の裁量で転用して急場をしのぐ。

国産治療薬が生まれるめどはない。

ワクチン同様に海外製頼みが続く。

 

厚生労働省は4月下旬、国内で関節リウマチ治療に使われている「バリシチニブ」の新型コロナ治療への適応拡大を承認した。

新型コロナ治療として、抗ウイルス薬「レムデシビル」、抗炎症剤「デキサメタゾン」に続く承認となった。

 

バリシチニブは米製薬会社イーライ・リリーが開発した薬で、日本では2017年11月に緊急使用を許可。

関節リウマチは自己免疫疾患の1つ。

免疫活動が過剰に働き、自身の細胞を攻撃してしまう。

バリシチニブはこの免疫の働きを抑制する。

 

新型コロナでも肺炎が悪化すると重症化して免疫が暴走することが判明。

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の主導で、20年5月から日本を含む8カ国でバリシチニブを用いた新型コロナ治療の臨床試験(治験)が実施された。

 

肺炎があり人工呼吸器を装着した患者にバリシチニブとレムデシビルを併用し、回復までの期間短縮効果が確認できた。

米食品医薬品局(FDA)は20年11月に緊急使用を許可。

日本でも5カ月遅れで承認された。

 

肺炎症状がある中等症の患者にはレムデシビル、肺炎でかつ人工呼吸器をつけるような重症患者にはレムデシビル、バリシチニブ、デキサメタゾンの3種類を使えるようになった。

国内には現時点で承認待ちの段階にある次の候補薬はない。

 

これまでに各国で承認された治療薬はどれも入院期間の短縮が主な効果で、特効薬はない。

軽症者向けの薬剤は現在も開発途上で、軽症から重症まで幅広い治療薬の開発が求められている。

 

米国がこれまでに承認した治療薬・治療法は5種類。

レムデシビル、バリシチニブに加え、抗体医薬品2種類と血漿療法も認められている。

英国が認めている3種類の治療薬には関節リウマチ薬「アクテムラ」が含まれる。

 

中国、ロシア、イタリアは富士フイルムホールディングスのグループ子会社が開発した抗ウイルス薬「アビガン」を認めている。

だがアクテムラやアビガンは日本では新型コロナ治療には承認されていない。

 

承認された薬剤が少ないなか国内の治療現場では薬の「適応外使用」が広がっている。

すでに国内で別の病気のために承認されている薬や未承認薬を、医師の裁量で承認の範囲外の病気の治療に使うことを指す。

ある国内臨床医は「(新型コロナ患者に対し)治療の可能性がある薬剤は何でも使っている」と話す。

コメント;

日本の厚労省が世界に誇れる省庁とはとても思えません。

スキャンダルを起こした厚生技官もそのまま居座っているようです。

その他続々と。

(任命権者にも当然責任が)

https://news.yahoo.co.jp/articles/3d9f087cc50678bb9a38a98c9fb236af7c0ef206

https://friday.kodansha.co.jp/article/87095

https://diamond.jp/articles/-/229736

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00124/

 

ただ、適応外使用はあくまでも苦肉の策だ。

対象は既存薬が主となるため限界がある。

医師からは「もっと効果の高い新薬開発を急いでほしい」(国内臨床医)という切実な声が上がる。

 

国内での新薬開発の動きは鈍い。

政府が支援している70件に及ぶ治療薬の研究主体の大半は大学など研究機関だ。

企業への橋渡しを含めると実用化には最短でも5年以上かかるのは確実だ。

 

アビガンに関しては富士フイルムが承認を申請したが、厚労省の専門部会は20年12月、「有効性を明確に判断することは困難」として承認を見送った。

同社は再度治験するが、実用化にはなお時間がかかる見通しだ。

 

武田薬品工業は4月、米CSLベーリングなどと進める新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を断念したと発表した。

国内メーカーが関わる有力な候補薬の1つとして期待されたが、有効性を確認できなかった。

 

一方、英グラクソ・スミスクラインなどは4月、治療薬候補の最終治験を終え、近く米国、欧州で使用申請すると表明した。

ファイザーも経口タイプの新薬候補で第2段階の治験を始めた。

欧米ではスタートアップによる開発も活発で、米データベースに登録された新薬候補の治験は世界で1600件を超える。

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.5.23

 

<関連サイト>

新型コロナ向けの主な治療薬とその候補

http://osler.jugem.jp/?eid=333