歩き方変わった? 変形性股関節症の疑い、手術で改善
体の中心部にある股関節は上半身を支え、全身のバランスを保つのに重要な役割を果たす。この関節の軟骨がすり減って痛みが生じる病気が「変形性股関節症」だ。
高齢女性などに多く、進行すると立つ、座る、歩くといった日常の動作にも支障が出る。
立ち上がる際や歩き始めなどに痛みがある場合は、この病気の可能性があるので注意したい。
股関節は骨盤の左右にあり、骨盤と大腿骨をつないでいる。
重い体を支え、歩く際の起点にもなっている。
骨盤側におわん状のくぼみの「臼蓋」があり、そこに大腿骨の先端部である球状の「骨頭」がはまっている。
それぞれの表面を覆う軟骨がクッションの役割をしており、関節液と呼ぶ潤滑液によって滑
りをよくしている。
■ 軟骨すり減り炎症
変形性股関節症はこの軟骨がすり減り、関節に炎症が起きる。
足腰の痛みとなって出てくる例も多い。
40~50代以降、年を重ねるとともに症状が出てくる例が多いという。
国内患者は女性を中心に推計で数百万人に上る。
この病気は軟骨がすり減る原因によって一次性と二次性に分かれる。
一次性は股関節の形などに異常はないが、加齢や肥満などですり減りが起こる。
一方、生まれつき股関節の形が悪かったり、骨折や感染症などが関係していたりする場合は二次性だ。
日本では全体の約8割が二次性だ。
コメント;
高血圧の場合、原因不明(ただし、多くは遺伝性)の場合は本態性(一次性)高血圧、原因がはっきりしており場合によっては手術で治る場合を二次性高血圧と分類します。
股関節の場合は、その概念とは少し違っているようなので少し戸惑います。
その1つの「臼蓋形成不全」は臼蓋の発達が不十分で、大腿骨頭がきちんと覆われていない
状態だ。
股関節の一部に負担が集中し、その部分の関節軟骨がすり減る。
年を重ねるとともに変形性股関節症を発症しやすくなる。
変形性股関節症は進行具合でいくつかに分かれる。
初期は軟骨の一部がすり減り臼蓋と大腿骨頭の間の隙間がわずかに狭くなる。
立ち上がる際や歩き始めなどに痛みを感じることもあるが、比較的軽い。
進行期はすり減りが進んで、痛みも強くなる。歩行時に常に痛みを感じる状態だ。
骨頭や臼蓋の周辺部にトゲ状の骨ができることもある。
末期は関節軟骨がほとんどなくなり、骨と骨が直接触れ合う状態だ。
就寝時や安静にしているときでも強い痛みを感じる。
この病気になると歩き方などにも変化が現れる。
姿勢が悪くなったり、小股になったりする。
また、あぐらをかく、椅子に座って足を組むといった動作が難しくなる。股関節の動きが悪いためだ。
医師の問診や触診、画像診断などで変形性股関節症が判明したら、生活改善と運動が中心の保存療法、薬物療法、手術のいずれかで治療する。
保存療法は症状が軽い人向けだ。太り気味の人は体重を落とす。
洋式トイレやベッドなどの生活で立ったり座ったりする際の負担をなるべく減らすことも有効だ。
医師などの指導の下で適度に体を動かすとともに、ストレッチで股関節の動きをよくしたり腰回りの筋力を強化したりする。
痛みがある場合は消炎鎮痛剤を使う。飲み薬や貼り薬などがある。
ただ痛みは和らいでも原因まで取り去ることはできない。
こうした治療で症状が改善しない場合は手術を考える。
一般に、大腿骨や骨盤を切って股関節の形を整える骨切り術と、傷んだ股関節を人工器具に置き換える人工股関節手術が実施されている。
東京都内に住む50代のA子さんは長年、変形性股関節症に悩まされてきた。
初めて診断されたのは10代で、運動をしていたら股関節に痛みが走った。
病院で調べると臼蓋形成不全とわかり、体を動かすのを控えた。
20代で骨盤を再建する手術をしてしばらくは症状がなく、出産も経験した。
年齢とともにまた痛みが出てきた。
歩く際の見栄えも悪くなっていたため、専門の医師を受診すると、右の股関節に変形が見られ「足の長さが左右で4センチメートルも違う」と指摘された。
そこで人工股関節手術を受けた。足の長さはそろい、痛みもなくなった。今
は主につえをついているが、子供から「きれいな歩き方になっている」と言われ、治療効果
を実感している。
人工股関節はポリエチレン樹脂とチタン合金やコバルトクロム合金などでできている。
手術は1時間程度で傷口も6~8センチメートル程度で済む。
個人差もあるが、入院期間は約1週間から1カ月程度という。
■ 20年で再手術必要
人工股関節手術は国内で年間4万件以上実施されている。
人工股関節の耐用年数は20年程度といわれており、若いうちに人工股関節を入れると、後で再び手術が必要になる例もある。
このほか、関節に内視鏡を入れて炎症のもとになっている軟骨のかけらを取り出したり、トゲ状の骨を切ったりして症状を和らげる手術をする例もある。
体に異変を感じたら早めに受診し、医師とよく相談しながら治療法を選ぶことが重要だ。
参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2015.5.1