コロナ、変異繰り返し「盾」獲得か 感染力長く保つ恐れ
世界が新型コロナウイルスの変異との闘いに直面している。
新たな変異型「オミクロン型」が初めて報告された南アフリカでは3日、新型コロナの新規感染者が前日比4割近く増えた。
空気感染の疑いが出ているほか、コロナが変異を繰り返したことで空気や光から身を守る「盾」を手に入れ感染力のある状態が長く続くようになった可能性も指摘される。
南アフリカでは3日、前日比39%増の約1万6千人の新型コロナ感染者が判明し、多くがオミクロン型とみられる。
1週間前の新規感染者は2千人台で、感染「第4波」に入った。
新型コロナはどうやって感染力を維持しているのか。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、世界2位の米国のスーパーコンピューター「サミット」を使い、一つの手がかりを見つけた。
ウイルスを含んだ空気中を漂う微粒子の振る舞いを原子・分子レベルで模擬実験(シミュレーション)した成果を11月の国際学会で発表した。
微小な粒を「エアロゾル」や「飛沫核」といい、エアロゾルには水分が含まれ、飛沫核は乾燥している。
新型コロナは一般に飛沫感染すると考えられている。
飛沫感染は直径5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以上の飛沫を介して起こる。
一方、空気感染は飛沫核が空気中を長い間漂い、遠くまで届いて感染する。エアロゾルを介した感染も空気感染の一種とみなせる。
米研究チームはウイルス表面のたんぱく質「スパイク」が正の電荷を帯びることに注目した。
エアロゾルの中には肺などの粘膜の物質「ムチン」がある。
ムチンは負の電荷を帯びておりスパイクの正の電荷に引き寄せられる。
スパイクに取りついたムチンはウイルスを空気や光と触れにくくする「盾」として働き、感染力を長く保っている可能性があるという。
デルタ型は従来型よりもスパイクの正の電荷が強く、高い感染力の一因との見方がある。
オミクロン型を調べるとさらに電荷が強いという。
香港では空気感染が疑われる事例が起きた。
ホテルでの隔離中、廊下を挟んだ向かいの部屋の感染者からうつった。
新型コロナの空気感染のリスクについては、デルタ型の流行の際も盛んに議論された。
厚生労働省はエアロゾルを介して感染する場合があるとの見解を示している
空気感染する感染症の代表例は麻疹や水痘だ。
麻疹は極めて感染力が強く、免疫を持たない人が感染者と同じ電車の車両にいればほぼ全員感染するといわれる。
水痘は病院内の空調でつながった部屋の患者から別の部屋の患者へうつった例がある。
新型コロナの感染力の強さの原因となるのが、変異だ。
ウイルスが増殖しようと遺伝情報をコピーする際に時々ミスが起こり変異ができる。
オミクロン型は全体で約50カ所の変異があり、約30カ所のデルタ型などより際立って多い。
特にウイルス表面のたんぱく質「スパイク」に30カ所以上の変異が集中する。変異の繰り返しによるスパイクの変化が、ワクチンの免疫の効き目やウイルスの感染力に影響を及ぼしている恐れがある。
変異の起こりやすさはウイルスの種類によって違う。
新型コロナの変異スピードは約2週間に1カ所、1年で約23カ所と推定されている。
インフルエンザは1年で約8カ所という報告がある。
コロナは変異の頻度が高い可能性がある。
コロナが変異を繰り返すことでウイルスの病原性がどれだけ深刻化するかは不明だ。
1918~19年に大流行したインフルエンザ「スペイン風邪」では第2波の死亡率が第1波に比べて大幅に上昇した。
変異で病原性が強まったことが一因と考えられている。
コロナでもデルタ型やアルファ型は従来型よりも入院や重症化のリスクが上がったとの分析があり、
強毒化していた可能性がある。
一方で、オミクロン型は現時点では無症状か軽症が目立つ。
オミクロン型の感染性、病原性ともに詳細な分析はこれからで、明らかになっていない点が多い。
たしかに、感染性が高くなっていることはあり得る。
風邪の原因になるウイルスは新型コロナよりも感染性が高い。
新型コロナはそのような感染性になっていく過程にあるのではないだろうか
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2021.12.5