膵臓がん・胆道がんのことを知ろう

全国のがん専門医療機関32施設が加盟する「全国がんセンター協議会」によると、2013年にがんと診断された人全体の「5年相対生存率」は69.2%だった。

 

相対生存率は、あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかを示す。

がん以外の死亡の影響を除外できる。

臓器別では、前立腺がんでは100%。甲状腺がんは95.4%、乳がんでも93.5%と、9割を超えた。

 

一方、膵臓がんの5年生存率は12.2%と最も難治性だった。

胆道がん(肝臓から十二指腸までの胆汁の通り道の胆道にできるがんの総称)も28.3%と主要ながんのなかでは、膵臓がんに次いで低くなっている。

 

さらに、2つのがんの10年相対生存率はそれぞれ、6.8%、19.1%と、5年生存率からさらに低くなる。

 

とくに、膵臓がんは近年増加傾向にあり、毎年3万人以上の方が亡くなっている。

死亡数はこの50年で約9倍に増加している。

 

膵臓がん急増の背景には、高齢化の他、糖尿病の増加も関係していると思われる。

糖尿病になるとがん全体のリスクは2割も高まる。

とくに、膵臓がんの場合は、影響が大きく、発症リスクは約2倍に跳ね上がる。

 

国内の糖尿病の有病者と予備軍は、いずれも約1000万人と膨大だ。

95%以上が、遺伝的な要因を持つ人に、肥満や運動不足、ストレスなどが加わることで発症する「2型糖尿病」だ。

このタイプは血糖値を下げるインスリンの分泌不良、あるいは、その効果が出にくくなる「インスリン抵抗性」が原因だ。

 

インスリンには、がん細胞の増殖を促す作用があるため、インスリン抵抗性によって「高インスリン血症」が進むとがんのリスクが高くなると考えられる。

糖尿病の他、喫煙、大量飲酒、家族歴、慢性膵炎、膵のう胞なども膵臓がんのリスクを高める。

 

膵臓がんの5年生存率が1割程度なのは、早期発見が難しく、進行が早いという特徴による。

年1回の検診では間に合わないこともある。

 

執筆 東京大学・中川恵一特任教授 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2021.10.22