日本発、乳がん新薬に期待 ①

日本発、乳がん新薬に期待 ①

半数以上の患者に適用の可能性

乳がんの約2割を占める「HER2陽性」と呼ぶタイプの患者向けに優れた新薬が登場し、治療の状況を変えつつある。

第一三共が開発し、国内では2020年5月に発売した「エンハーツ」を使うと、標準的な治療などが難しくなり、これまで打つ手が乏しかった患者の予後が改善できているという。

「HER2陽性」患者以外や、治療の初期段階などで使うための臨床試験(治験)も進行中で、より多くの乳がん患者に使える可能性が出てきた。

 

50歳代の女性は肺に転移があるステージ4の進行した乳がんだと診断を受けた。

複数の抗がん剤を使ったが効かなくなり、コンピューター断層撮影装置(CT)の検査で乳がんが悪化したと分かった。

がん研究会有明病院(東京・江東)で21年春にエンハーツを使い始めるとよく効き、現在も3週間に1回、通院で投与を続けている。

 

乳がんは女性で最も多いがんだ。

国立がん研究センターによると、18年に乳がんを患った女性は約9万4千人で、19年に亡くなった人数も、女性のがんで5位だった。

 

エンハーツは約2割の患者の乳がん細胞に多く出る「HER2」というたんぱく質に付く抗体に、8個の薬物を付けた「抗体薬物複合体(ADC)」という化合物だ。

3週間に1回、静脈に点滴で投与する。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.12.21