心臓突然死

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以下は
不整脈源性右室異形成
http://blog.m3.com/reed/20070905/1
というタイトルで書いた私のブログからの紹介です。

欧州のサッカー選手が心臓発作を起こし亡くなったというニュースが入りました。

22歳のスペイン代表DFプエルタが死去。サッカー界に繰り返される悲劇

セビージャFCのスペイン代表左サイドバック、アントニオ・プエルタが28日午後、
セビージャ市内のビルヘン・デル・ロシオ病院で死去した。22歳だった。

プエルタは25日に行われたヘタフェCFとのリーグ戦の試合中に心臓発作を起こし、
危篤状態が3日間続いていた。プエルタは試合の35分に倒れたが、その後は意識は
回復し、自力でピッチの外に出た。しかし医師によると、控え室で再び意識を失い、
心臓マッサージを受けた後、病院へ搬送された。

セビーリャのホセ・マリア・デルニド会長は、26日にプエルタを見舞ったあと
「数回心拍停止があったものの、プエルタの命はクラブドクターたちの迅速な処置と
赤十字によって救われた」と、クラブの公式HP上でコメント。しかしながら、その後も
深刻な心室不整脈が続いた影響で二度にわたって意識を失い、人工呼吸器と心拍を
コントロールするための鎮静剤を使い続けなければならないほどの危険な容態に
陥っていた。日曜日には脳への影響も判明していた。そして、そのまま彼の意識が戻る
ことはなかった。入院していた病院の医師たちが記者会見を行い、医師はプエルタが
不整脈源性右室異形成」を患っていたことを明らかにしている。

心臓の疾患により、まだ22歳の若き才能が最悪の形で命を絶たれた。そしてこのことを
受け、UEFAは28日に予定されていたUEFAチャンピオンズリーグ予選3回戦第2戦のAE
KアテネセビージャFCを延期すると発表した

今回のプエルタの死のような悲劇は、実はたびたび起こっている。

ブラジルでは2004年の10月27日、ブラジル選手権のサンパウロvsサンカエターノ戦で
サンカエターノセンターバックセルジーニョがやはり心臓発作で命を落としている。
同様の悲劇はポルトガル、ペルーでも起こったことがある。

もっとも人々の印象に残っているのは2003年6月26日、コンフェデレーションズ・カップ
準決勝でのカメルーンのマーク・ヴィヴィアン・フォエの突然死だろう。ピッチに倒れ込む
フォエの姿は全世界に伝えられた。

さて、ここからが本題です。

年間3万~5万人が死亡 救命医療の進歩で心肺停止から蘇生

日常生活が送れる人が増えている
名医のセカンド・オピニオン 新潟大学 相澤義房教授
突然死につながる不整脈に要注意
日本では、年間約3万~5万人が心臓の異常で、発症から1時間以内に亡くなると
推定されている。
原因は急性心筋梗塞心不全が多いが、ほとんどは不整脈の症状から起きる。
なかには、初めての不整脈の発作で亡くなるケースもある。

「心臓突然死の予知と予防法のガイドライン」研究の班長で、新潟大学大学院医歯学
総合研究科循環器学の相澤義房教授は、こう話す。

「ある日、突然、亡くなる「ポックリ病」はブルガダ症候群という不整脈の病気と
わかってきました。
また、QT延長症候群も不整脈によって突然死が起きます。
これらは、診察や検査で心臓の病気が見当たらない、健康な人に起きます」
 
ブルガダ症候群は、突然、心臓が震えた状態になる、心室細動という不整脈を起こす。
発症する人の7割以上が男性で20~30代に多く、夜間・睡眠中に起きやすい.

QT延長症候群は、突然、脈が乱れて立ちくらみや意識を失う。
運動中に発症することが多く、夜間に起きる例もある。
 
命にかかわる不整脈は、予兆がなく、気をつけようがないが、突然死は予防できると
相澤教授は言う。

不整脈を起こしやすい人は、心電図の波形からわかるものがあります。心電図を
とってブルガダ症候群やQT延長症候群と診断された場合は、突然死の予防のために
ICD(植え込み型除細動器)の治療をすすめることがあります」

ICDは、心室細動心室頻拍(心臓の収縮が速い状態)など突然死につながる不整脈
が出たとき、電気ショックを発生させて心臓の発作を防ぐ装置。
手術で胸部の皮下に埋め込む。
 
相澤教授によると、突然死寸前で助かった人は1年以内に30%の人が心筋梗塞不整脈
の発作を再発する。
ICDは倒れたことのある人の再発防止にも有効という。
さらに、心臓病がある人、健診で不整脈といわれ人、胸がドキドキする、胸が痛い、
または圧迫感がある、失神した経験のある人は、不整脈に詳しい医師に診てもらうことが
大事とアドバイスする。

不整脈のなかには治療の必要のない人も多いため、これを見極められる医療機関で受診
するのがいいでしょう。不整脈の治療を専門とする医師は限られますが、『ICD治療の
施設認定を受けている病院か』などをよく聞いて選ぶことが大切です」

出典 週刊朝日 2008.6.13 「新・名医の最新治療」より
版権 朝日新聞社


■救急の専門チームが懸命に治療をしても、社会復帰できる人は0.4%。
■「人工心肺」「低体温療法」「再灌流法」の3つを同時に行うと、救命率を15%まで
向上させることができる。
●「人工心肺」
心臓手術の際に、心臓と肺の代わりをしてくれる装置。
心肺停止患者に、病院到着後約30分後に作動させ、脳を含む全身に血液と酸素を送り
出す。
●「低体温療法」
体と脳を冷やす治療で、4度の生理食塩水を投与しながら血液を冷やし、人工心肺を用いて
すみやかに体温を下げる。
●「再灌流法」
急性心筋梗塞とわかった場合、病院到着後、1時間以内に血栓(血の塊)を溶かしたり、下
肢の付け根からカテーテルを挿入し、バルーン(風船)やステント(網状の金属の筒)など
で途絶した冠動脈の血流を再開させる治療。

出典 週刊朝日 2008.5.13
版権 朝日新聞社


<参考ブログ>
ちょっと専門的になりますが、私の循環器専門のブログで紹介した今回の内容に関連したもの
です。

救急蘇生2題
http://blog.m3.com/reed/20080125/1
着る除細動器
http://blog.m3.com/reed/20070918/1
Brugada症候群の治療
http://blog.m3.com/reed/20071102/Brugada_


読んでいただいて有難うございます。
コメントお待ちしています。

医療専門のブログは別にあります。
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http://wellfrog2.exblog.jp/
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