排便の異常

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健康の指標。年に一度は検便を

便は、自分の健康状態を知るバロメーターの一つだ。
見た目に異常がある時はもちろん、急に便秘がちになったり、いきんでも出にくい
状態が続いたりした時は注意しよう。
 
排便回数は、3日に1回から、1日3回までが正常の範囲内とされる。
ただ、個人差があるので、体調が安定していれば、それ以上、間隔が空いても、
さほど心配ないという。

問題は、排便の際に、違和感、不快感がある場合だ。
社会保険中央総合病院(東京都新宿センターの山名哲郎医長は「便は毎日出るけれど、
少量で、いきんでもなかなか出ないという人は直腸瘤かもしれません」と話す。
 
直腸瘤は、排便時のいきみによって、直腸の壁が膣(ちつ)側の壁を押し、中で広がる
ように変形して一部が外に出てしまう症状。
出産や加齢で、直腸と膣の間の壁が弱くなった中高年の女性に多い。
肛門に向かうはずの便が膣の方にたまるため、いきんでも出にくく、残便感がある。
センターが排便困難で訪れる人を検査したところ、3割弱が直腸瘤だった。
 
山名さんは「あまり知られていない病気ですが、人知れず悩んでいる人は多いはず」。
治療には膣の壁を補強する手術があるほか、繊維の多い食事を取るなど食生活改善や
緩下剤を使う方法もある。
    
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無意識のうちに便が漏れる便失禁も、女性に多い排便障害の一つだ。
日常生活に大きな支障が出る。
出産などによる肛門周囲の筋肉や神経の損傷が主な要因とされ、40~50代になって
症状が現れるケースが多い。
 
治療は、便を固める薬を服用して、日常的に便秘気味にコントロールする対症療法が
一般的だ。
治療した7割近い人が「気軽に外出したり旅行したりできるようになった」と満足しており、
山名さんは「一人で悩まず、症状を減らす方法はあることを知ってほしい」と言う。
    
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また、増加傾向にある大腸がんも、便と密接な関係がある。
横畠外科胃腸科病院(中野区)の横畠徳行院長は「快便だった人が急に便秘がちになったり、
便が細くなったりしたら大腸がんの心配があります」。
 
がんができると腸が狭くなるため便が滞り、便秘になりやすい。
血便が一つの判断材料となるが、早期だと症状が分かりにくいこともある。
手軽な検便を定期的に受け、陽性だったら、病院で内視鏡などで詳しく調べてもらおう。
 
厚生労働省の研究班が行った疫学調査では、検便を受けた人は受けない人より大腸がんで
死亡する割合が7割も低いという結果が出ている。
横畠さんによると、中野区が検診で行っている検便でも、2006年は精密検査をした
1281人の約6%に大腸がんが見つかっている。

横畠さんは「便をよく見なければ血便であっても見落とすことは多い。年に一度は検便
を受けましょう」と話した。

出典 朝日新聞・夕刊 2008.6.2
版権 朝日新聞社

<参考サイト>
直腸瘤
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10H10600.html
膀胱瘤・直腸瘤
http://japan-womenshealth.com/rec_001/index.htm
直腸性便秘 苦しい残便感、薬のんだら下痢


<コメント>
文中に便潜血検査の話が出てきました。
実はこの検査は主に大腸の出血をみるためと胃の出血をみるためと2種類の検査法
があるのです。
健診では前者をみるための検査だけを行うことが多く、両方を同時に行うことは殆ど
ありません。
また、この便潜血検査を大腸がん検診と呼ぶことがあります。
しかし、これで異常がなかったからといって安心というわけにはいきません。
これは、子宮頸がんのチェック法を子宮がん検診と呼称するのと同じです。
行政も是非を子宮がん検診という呼び方を、子宮頚がん検診に改めていただきたい
と以前から考えています。


<番外編>
不規則な食事で「肝臓時計」異常=コレステロール上昇-ラットで確認・名古屋大
脂っこい食事を不規則に取る生活を続けると、コレステロール代謝を担う肝臓の「体内
時計」が異常となり、同じ食事内容でも規則正しく取った場合に比べ、血中コレステロール
濃度が大幅に上がる可能性が高いことが分かった。
名古屋大大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らがラットの実験で確認し、5日までに
日本農芸化学会で発表した。

この研究は、「規則正しい食生活をしないと不健康になる」メカニズムの解明が目的。
小田准教授は「頭の睡眠リズムは日光の影響が大きいが、身体は食事に合わせようとする。
交代制勤務などの場合でも、1日3、4回、できるだけ普段と同じ時間に食事した方がいい
のでは」と話している。

研究チームは、コレステロールが高くなるよう配合した餌を、6匹ずつ2グループのラット
(夜行性)に与えた。
いつでも食べられる状態にしたグループは、主に夜になって起きたときと、明るくなって
寝る前の2回、餌を食べた。
別のグループには、同じ内容と量の餌を4分の1ずつに分け、昼夜を通して6時間ごとに与えた。

その結果、昼夜構わず餌を食べることになったラットは、肝臓からのコレステロール放出量
が増え、血中濃度が100ミリリットル当たり約200ミリグラムから約270ミリグラムと、1.3倍
上昇。肝臓でコレステロール代謝されると胆汁酸として排出されるが、ふんに含まれる量
も減っていた。 

出典 日経新聞・朝刊 2008.4.6
版権 日経新聞


<自遊時間>
昨日の新聞に出ていた、ある週刊誌の広告の見出し。
「国滅びて霞ヶ関あり!」
これが厄人天国「血税浪費85兆円」の全貌だ
「道路」「年金」「天下り法人」「農政」「大型公共事業」・・・
”総理より偉い”役人たちの”やりたい放題”を告発

ついこの週刊誌を買って読みたい衝動もあります。
しかし、読んで腹を立てるのも健康に悪いので想像だけにしておきます。
それにしても、どうして日本の官僚はこんなに腐敗している(しまったの)
でしょうか。
諸外国にも官僚制度というのはあるのでしょうか。
そのへんがよくわからないのです。
どの国もそうかも知れませんが、日本も「文高理低」の社会です。
4年制の大学を卒業して大学院を卒業した理系の優秀な人達が、1年か2年の
専門課程(4年間の半分は教養課程と就活)をやって大学院も出ていない文系
の人間に操られるのです。
(ご存知のごとく、医学部は最低6年間、死に物狂い?で勉強します。かえって
世間がみえなくなってしまうのかも知れませんが。)

医療の世界も同様です。
最近でこそ医師のレベルには差が見られるようですが、それでも多くの医師は
そこらあたりの官僚に負けない能力を持っている筈です。
医療の現場はどうかも知らない、そして医師の資格もない厚生官僚に赤子の手を
捻(ひね)るごとくに操られているわれわれ医師達。
くやしくてたまりません。
もちろんその能力は異なるのでしょうが、そういった官僚の横暴が許せないのです。
これで医療がよい方向に向かっているのなら話は別ですが。


読んでいただいて有難うございます。
コメントお待ちしています。

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(内科専門医向けのブログです。)
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