ビルカバンバの悲劇

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予防栄養学研究者 家森幸男先生の新聞へ掲載されたリレーエッセイからです。

多くの日本女性を家事労働から解放した電気炊飯器が発売されてから半世紀、
今では世界中で愛用されている。
先ごろもキューバでの販売が解禁となり、購入者の長い列ができたそうだ。
電気炊飯器によって「ごはん食」が身近となったことは喜ばしいが、重要なのは
その食べ方だ。

南米エクアドルの世界に名だたる長寿村ビルカバンバでは、村に電気が普及した約20年前、
日本の電気炊飯器が流行し生活様式が一変した。
芋(ユッカ)とトウモロコシの主食が、炊飯器のおかげで、インディカ米に塩とラードを
入れ20分で炊きあがる「ラード飯」にとってかわられ、塩分と脂分の摂取過剰になった。
結果、短期間で肥満や高血圧が増え、10歳は短命になったと、私どもの調査から推察
された。

日本人は、長い間ごはんを塩辛と味噌汁だけで食べるような食卓で、塩分過剰、蛋白質不足
から脳卒中も多く短命であった。
戦後豊かになり、動物性蛋白質の摂取が適当に増えたので、血管も丈夫になって脳卒中
減り、寿命も男女の平均で世界一にまでなった。
水だけで炊いた淡白な味のごはんを主食とし、肉食も多すぎず、蛋白質は魚、大豆から摂る
日本式ごはん食があるからこそ、コレステロールが中庸の値に収まってきた。

ところが、今や若い世代の食生活が危ない。
ごはんを食べてもコンビニで買ったおにぎりでは、保存料や食塩を多量摂取することに
なる。
その上、おにぎりの具は相変わらずツナマヨネーズが人気で、コレステロール、塩分も
増える。
これではビルカバンバの悲劇はよそ事ではない。

ごはんはその食べ方次第で健康長寿の主食になる。


出典 日経新聞・夕刊 2008.6.7
版権 日経新聞

<関連ブログ>
今110歳まで生きられる! 脳と心で楽しむ食生活 その18
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2007/11/29
今110歳まで生きられる! 脳と心で楽しむ食生活 その20
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2007/12/13
<参考サイト>
ラードごはん
http://www.ntv.co.jp/meringue/01/991127.html
“ごはん”こそダイエットに最適の一品!
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/423/423240.html
ごはんは唾液で大部分が糖に分解され、胃からすぐに血液中に吸収されて、エネルギー
として使われてしまう。
血糖値はごはんを食べてすぐに上がり、これが脳の満腹中枢を刺激して、「満腹だから
食べるのをやめるように」という信号を出す。
むしろ、ごはんには、食べすぎを予防する働きがあるのだ。
さらに、ごはんに含まれている炭水化物には、体内で消化されにくい性質の「アミロース
が多いため、太りにくい。
アミロースは、小腸で消化されないまま大腸に移動し、腸内環境を整える食物繊維のよう
に働く。
具体的には、腸を刺激し、便を軟らかくしたり、老廃物の排出を促す効果がある。

ごはん抜きの低炭水化物ダイエットに疑問
http://allabout.co.jp/health/healthfood/closeup/CU20040701A/

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