糖尿病患者、遺伝子に特徴

糖尿病は高血圧とならんで生活習慣病の代表です。この糖尿病は、高年齢化とともに急増
しており、糖尿病だけでもそれにかかる医療費は1兆円を優に超えているといわれます。
この医療費の問題だけでなく、この克服により国民の平均寿命がさらに延びることになり
ます。
したがって、その対策が社会的な課題となっています。
発展途上国では、当然糖尿病は少ないわけですから、こんな話は贅沢なことなのかも知
れません。


糖尿病患者、遺伝子に特徴 国内2チーム、別々に発見

40歳以上の4人に1人がなるといわれる「国民病」の一つ、2型糖尿病にかかわる遺伝子
を、日本の二つの研究チームが別々に見つけた。
この遺伝子が糖尿病になりやすいタイプだと、発症のリスクが1・4倍になるという。
17日付の米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(電子版)に同時に発表する。

国立国際医療センターなどのチームと理化学研究所などのチームの論文が、それぞれ載る。
両チームは独立して、日本人の2型糖尿病患者とそうでない人の計1万人のゲノム
(全遺伝情報)を解析。患者には「KCNQ1」という遺伝子にわずかな違い(SNP)が
あることをみつけた。

今回の結果から、この遺伝子は高血糖をやわらげるインスリンの分泌にかかわっていると
考えられる。
東アジアや北欧の糖尿病患者でも同様のSNPがみつかった。

理研の前田士郎チームリーダーは「糖尿病のリスク診断が、間もなく可能になる」という。
国際医療センター代謝疾患研究部の安田和基部長は両チームの発表が重なったことに
「驚いているが、独立した研究で同じ結果が出たことは非常に心強い」と話した。

2型糖尿病は糖尿病のほとんどを占める。遺伝的要因と生活習慣が相まって発症するとされる。

出典 朝日新聞・朝刊 2008.8.18
版権 朝日新聞社

<参考サイト>
遺伝子は運命を決める? 決めない?
遺伝子(広くはゲノムと呼ばれますが)とは私たちの身体や身体を動かすのに必要な物質を
作る設計図です。
遺伝子と病気、または生活習慣、環境との相互関係について、世界中で熱心に研究が進め
られています。

10年ほど前は「遺伝子情報が分かると人間のすべてが分かる」ような雰囲気がありました。
今でも、病気のなりやすさに限らず、性格や人生、運命まで、遺伝子に決められているように
思っている方が時々います。
興味深いことに、いろいろな研究が進んだ結果、遺伝子の影響の大きさはそのようなイメージ
とは少し違うようだ、ということが分かってきたのです。

「ある薬の副作用と関連する遺伝子」が分かっても、その遺伝子を持っていたら100%
副作用を起こし、持っていなければ起こさない、というものではありません。
ある遺伝子を持つ場合は持たない場合に比べて、副作用が起こる可能性(確率)が違うという
ことで、決して白か黒は決まらないのです。

遺伝子の影響が非常に大きい病気(「単一遺伝子疾患」といいます)もありますが、高血圧や
糖尿病、心臓病、がんなど身近な病気の多くは「多因子疾患」と呼ばれ、遺伝子だけでなく、
環境や生活習慣など多くの因子が影響し合った結果です。

ある遺伝子を持つ人は持たない人に比べ、これらの病気に10倍もなりやすいことが分かった
とします。この遺伝子を持っていたら、病気になるのは運命なのでしょうか? 
その遺伝子を持っていなくても100人に4人くらいに見られる病気なら、確率が10倍に
なっても100人に40人です。
つまり、「病気になりやすい遺伝子」を持つ100人のうち60人は病気にならないのです。

「遺伝子はすべてを決める」という考えにとらわれては、できる努力をしなくなったり、
無意識の差別につながったりします。
遺伝子情報という先端科学の成果でも、人間のすべてを決めているのではないことを確認して
おきたいと思います。
(京都大大学院医学研究科教授 中山健夫)
http://sankei.jp.msn.com/life/body/080813/bdy0808130810000-n1.htm
産経ニュース 2008.8.13

2型糖尿病に関連する遺伝子「KCNQ1」を発見
- 日本人の2型糖尿病発症の2割に強く関与 -
厚生労働省平成14年度の糖尿病実態調査によると、わが国の糖尿病患者数は740万人、予備軍
を合わせると1,620万人に達し、 40歳以上では4人に1人が糖尿病あるいはその予備軍と
いわれています。糖尿病患者数の増加は世界規模でみられ、そのほとんどは2型糖尿病とされて
います。
2型糖尿病は多くは成人で発症し、その発症には血糖値を下げるホルモンのインスリンが効き
にくくなる「インスリン抵抗性」とインスリンの分泌が悪くなる「インスリン分泌低下」により
引き起こされますが、遺伝的要素(なりやすい体質)が深く関係していることが知られています。
しかしながら、今まで日本人をはじめとする東アジア人では、2型糖尿病発症に強く関わる
遺伝子は発見されていませんでした。
 
理研ゲノム医科学研究センターの内分泌代謝疾患研究チームは、文部科学省の『個人の遺伝情報
に応じた医療の実現プロジェクト(オーダーメイド医療実現化プロジェクト)』で実施した解析
から、遺伝子「KCNQ1」が、2型糖尿病の関連遺伝子であることをはじめて発見しました。
この遺伝子は、細胞のカリウムチャンネル遺伝子の1つで、心臓の筋肉で重要な働きをしている
ことは知られていましたが、糖尿病との関係はまったくわかっていませんでした。
「KCNQ1」の、ある1塩基の違いにより2型糖尿病発症リスクが1.3~1.4倍となり、試算により
日本人2型糖尿病発症の2割に「KCNQ1」の1塩基の違いが関っていると推察できました。
また、シンガポールデンマークの患者でも、「KCNQ1」の1塩基の違いが2型糖尿病と関連する
ことがわかり、日本人だけでなく民族を越えた糖尿病関連遺伝子の発見となりました。
今後、「KCNQ1」を標的とした新たな治療法や予防法の開発が期待されます。
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/080818/
理研プレスリリース 2008.8.18)


<新聞切り抜き帖>
■谷垣さん(国土交通省)、道路の無駄はなくせますか
「すべての道はローマに通じる」と言われるが、ローマは道を造る時に採算性だけで判断した
のではない。
国の安全・安心や発展も考えないといけない。

朝日新聞・朝刊 2008.8.8


■舛添厚労相 体制に注文
現状の厚労省組織の問題点に関して、
「あってはいけないが(省内に)聖域がある。なぜ健康局長と医政局長は医者でないといけない
のか、そういうことから疑問符をつけないといけない」と語った。
「『医者じゃないのに何でわかる』『薬学を何も知らないのに薬のことをいうな』となるから、
薬害みたいなことが起こる」と述べ、技官のあり方が問題だとの認識を示した。
また、「許認可権限が多すぎるのではないか」「国際性も最も欠けた省庁」とも指摘した。

朝日新聞・朝刊 2008.8.8


炭疽菌事件は米軍研究者の単独犯行と断定 米司法省
【ワシントン=勝田敏彦】米司法省は6日、01年の米同時多発テロ後に起きた炭疽(たんそ)
菌事件を、先月自殺した米陸軍感染症医学研究所(メリーランド州)のブルース・アイバンス
博士(62)の単独犯行だったと断定し、捜査終結の手続きに入ると発表した。

発表によると、同博士は有名な炭疽菌の専門家。ワシントンにある上院議員の事務所に送り
つけられた手紙から見つかった炭疽菌のDNA鑑定結果から、その菌が博士が1人で管理して
いたフラスコで保管されていたとわかった。

同博士は、炭疽菌を乾燥させる特殊な機械の操作経験があるほか、炭疽菌入りの手紙が送り
つけられた時期、夜間や週末に1人で研究所で仕事をしていたこともわかった。
同博士は取り調べに対し、その理由を十分に説明ができなかったという。

博士は7月29日、研究所近くの自宅で遺体で見つかった。
捜査当局は自殺と断定した。

炭疽菌事件では5人が死亡、10人以上に感染による症状が出た。
同時多発テロ直後で、バイオテロとして全米を恐怖に陥れた。

出典 朝日新聞・夕刊 2008.8.7
版権 朝日新聞社


<自遊時間>
ジャズファン特に「ブルーノート」や「マイルス・デイビス」のファンにとっては嬉しい
ニュースです。
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未発表「枯葉」ネットで公開 マイルス、幻の演奏
「サムシン・エルス」
トランペッターのマイルス・デイビスが演奏し、モダンジャズの代表的名演として知られる
「枯葉(かれは)」の未発表録音が、20日からインターネット上で初公開される。
EMIミュージック・ジャパンが企画した。

同曲を収録したアルバム「サムシン・エルス」は、58年に録音されたブルーノートレーベル
の作品。
サックス奏者のキャノンボール・アダレイのリーダー作で、「クール・ストラッティン」など
と並んで日本では特に人気が高い。
冒頭に収録された「枯葉」は印象的なイントロとマイルスの演奏で名高い。

「『枯葉』の名演はいくつもあるが、人の心をとらえたという点であのアルバムの右に出る
ものはない」(音楽評論家・悠雅彦さん)

今回公開されるのは、アルバム製作の際に、OKの出なかった幻のバージョンだ。

EMIジャパンの行方均さんによると、ブルーノート研究家のマイケル・カスクーナ氏が実は
30年ほど前にこの録音テープを見つけていた。
「プロデューサーも当時存命で、ボツにした判断を尊重すべきだと封印したようです」

今年はプロデューサー、アルフレッド・ライオンの生誕100年、来年がブルーノート設立
70周年にあたり、EMIジャパンが記念サイトを開設。
目玉として未発表音源の無料視聴を企画、ロサンゼルスの倉庫に保管されていた幻の録音が
カスクーナ氏の協力で公開されることになった。

「マイルスの演奏は完璧(かんぺき)以上だが、キャノンボールのソロやリズムセクション
が乱れる」とカスクーナ氏はコメント。マイルスやピアノのハンク・ジョーンズらの会話も含め約11分聞くことができる。

http://st-co.jp/bnjf/で公開する。
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY200808170051.html
朝日新聞 2008.8.17

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