酸化コレステロールに注意

今年から始まった特定健診(メタボ健診)から総コレステロールの項目がなくなり、
かわりにLDLコレステロールが検査項目として採用されました。
その主旨はLDLコレステロールが真の悪玉であり、HDLコレステロール(善玉)が高い
ために総コレステロールが高くなってしまっている人を除外するためです。
しかし、LDLコレステロールのすべてが悪いかというとそうでもないことが、最近に
なってわかってきました。

動脈硬化脂肪肝 悪化の原因?

加工食品 多く含有
長いレンジ加熱は×
スーパーやコンビニで買った空揚げやフライを電子レンジで温め直して食卓へ ・・・。
いまや若い世代だけでなく、中高年の家庭などでも珍しくない光景だ。
実はこんな食生活が、想像以上に動脈硬化脂肪肝などを悪化させる原因になっている
かもしれない。
食品中のコレステロールが酸化してできる「酸化コレステロール」が増え、様々な悪さ
をする可能性があるからだ。

摂取量は急増か

食品中のコレステロールの一部は調理、加工、保存の過程で化学的な働きが活発な活性
化酸素にさらされたり、紫外線を受けたりして酸化する。
コレステロールは細胞を作るのに不可欠な物質だが、血中の値が高くなりすぎると血管
壁に蓄積し、動脈硬化の原因にもなる。
それだけでなく、無意識のうちに酸化コレステロールも多くなり、体への負担を増す懸念
があることがわかってきた。
 
コレステロールは食品に含まれるもののほかに、体内でHDL(高比重リポたんぱく質
にくっついてできた「善玉」と、LDL(低比重リポたんぱく質)にくっついた「悪玉」
が知られている。
酸化コレステロールは、もとになるこうしたコレステロールとはまったく別の物質だ。
 
酸化コレステロールは食材を揚げたり焼いたり、干したりする際に生じる。
食材に含まれるコレステロールの1割程度が酸化コレステロールになる。
日本人のコレステロールの1日平均摂取量はファストフードの多用などを受けて急増して
いる。
 
年代別にみると10代後半の男性で500ミリグラム、女性では400ミリグラムと、
米国の平均の2倍近くにも達する。
20代でも米国を上回る勢いだ。
これに伴い、酸化コレステロールの摂取量も増えていることが予想される。
 
米国ではコレステロールそのものよりもむしろ酸化コレステロールの方が動脈硬化に大きく
関与しているのではないかとの報告もあり、注意を呼びかける動きが出てきた。
約100種類が知られ、このうち数種類は動脈硬化の血管でよく見られるという。

酸化コレステロールは「炎症反応を強めたり、動脈硬化やアレルギー反応を誘発したりして
いる可能性が高い」と明治大学の長田恭一准教授は指摘する。
ラットなど使った実験で、与えた酸化コレステロール自体が炎症を引き起こしたり体内の
コレステロールの酸化を促進したりすることがわかってきた。

脂肪肝との関連性を指摘するのは九州大学の今泉勝己教授らのグループ。
ラットに毎曰少しずつ酸化コレステロールと脂肪分の多いラードを含んだ食事を与えたところ、
酸化コレステロールが肝臓の中性脂肪合成を促し、脂肪肝が進んだ。
同じ食事でも、普通のコレステロールではこうした現象は起きなかった。

人間に関するデータは不足しているが、「酸化コレステロールの摂取が好ましくない影響を
及ぼす」(九州大学の佐藤匡央准教授)との認識は広まりつつある。
血中コレステロールを下げる一部の薬は酸化コレステロールを減らす効果も示すが、日本で
はそうした薬としては承認されていない。
それでは、どのような対策をしたらよいのか。
        
まず、酸化コレステロールを多く含む食品を避ける。
九州大学循環器内科の江頭健輔准教授は30~40代の動脈硬化の患者に、酸化コレステロ
ールが多くなりがちなファストフードなど出来合いの食品をどれぐらい利用しているかを聞
いて自覚を高める活動を始めた。

和食中心の食事1日平均2ミリグラム程度の酸化コレステロールの摂取につながるが、ファス
トフード中心よりも確実に減らせる。

緑黄色野菜で抑制

家庭での食品の扱いにも注意する。
明治大学の長田准教授は一度揚げやてんぷら油の長期保存、電子レンジによる繰り返し・
長時間加熱をやめるよう呼びかける。
電子レンジで2分、6分、10分と加熱した実験では、10分の場合に酸化コレステロール
複数種類発生した。
マヨネーズやバターは空気と触れないようにし、黄色や透明になったものは酸化が進んでいる
可能性があるので利用を避ける。
 
酸化コレステロールの生成は食べ合わせの工夫によっても抑制できるという。
食生活アドバイザーの宗像伸子氏は「コレステロールと同時に、ベータカロチンやビタミンC、
ポリフェノールカテキンといった抗酸化食品を積極的にとるようにしてほしい」と指摘する。
ニンジンなど緑黄色野菜や緑茶などを意識してとり、バランスを心掛けるのが効果的だ。

出典 日経新聞・朝刊 2008.8.24
版権 日経新聞
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<コメント>
日常臨床レベルで、酸化コレステロールの測定ができるといいのですが現時点ではできないのが
残念です。

<参考記事>
コレステロール:「悪玉」成分 東北大教授らが解明
「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールのうち、動脈硬化を促進するのは成分の一つの
「酸化LDL」であることを、東北大の片桐秀樹教授(代謝学)らがマウスの実験で確かめた。
1日付の米医学誌「サーキュレーション」に掲載された。酸化LDLはLDLコレステロール
酸化したもので、LDLコレステロール全体の中のごくわずかな成分。
片桐教授らは、高LDLコレステロール血症のマウスの肝臓に酸化LDLを蓄積させる遺伝子を
導入。
血液中のLDLコレステロール全体の量はほとんど減らさずに、酸化LDLだけを3分の1程度に
下げた状態を作り出した。
4週間後、普通の高LDLコレステロール血症マウスは全身の動脈硬化の病変部分が実験前
より約4割増加。
一方、酸化LDLだけを減らしたマウスは動脈硬化がまったく悪化しなかった。
また動脈硬化促進物質の過酸化脂質などの血中濃度も減少した。
LDLコレステロールは細胞膜の材料などになる物質もあり、薬でLDLコレステロール全体を
下げ過ぎることを懸念する専門家もいる。
片桐教授は「酸化LDLだけを減少させる治療法が開発できれば、安全に動脈硬化の進行を抑制し、
心筋梗塞(こうそく)の発症予防ができるようになる可能性がある」と話している。
<転載>毎日新聞2008.07.02


<自遊時間>
毎月1日は「値上げデー」?!?
収入が増えずに物価が上がる。
異常事態です。
「消費者マインドが・・・」なんて暢気なことを言っている場合ではありません。
世の中なんでも
蟹工船
http://www.aozora.gr.jp/cards/000156/files/1465_16805.html
ブームだそうです。

全国各地でトラック事業者2万人が参加の一斉行動
・・・目的は「燃料サーチャージ、緊急減税、高速道路料金引き下げ」
漁業団体がすでにに約20万隻の一斉休漁を行ったほかイカ、マグロ、サンマなどの漁船も
独自の休漁に踏み切るなどして大きな注目を集めました。
トラック事業者も一面広告で業界の危機を訴えています。
漁業団体は一斉休漁で一定の成果を政府から得ました。
しかし、賢い国民から「えこひいき」とのブーイング。
こんなことで改善するなら医療界もストといったところですが、ストすれば何がしかがバラ
撒かれる。
政府はまさに思考停止状態です。

各業界の苦しいことはわかります。
しかし言葉は悪いのですが、何だか「ごね得」といった状況を呈しています。


読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
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