日光浴

暑い日でも1日30分 気分明るく、快適生活

キレにくく 睡眠ぐっすり 大腸がん予防も
日差しが強まるこの季節、シミやシワの原因になるとして日射は悪者にされがち。
しかし、日光には気分を明るくし集中力を高める効果もある。
紫外線が皮慮に当たることによってできるビタミンDは骨を強くするだけでなく、がん
などの予防につながることもわかってきた。
日光と上手に付き合い、快適に過ごす方法を探った。


セロトニン」分泌

太陽光が目に入ると網膜が刺激され、神経を介して脳内に神経伝達物質セロトニン」が
分泌される。
すると「気分が良い」状態がつくり出され、集中力も向上、ストレスが軽減される。
散歩やダンスのようにリズム感のある軽い運動でも分泌される。
 
セロトニンが不足すると、うつ病に陥りやすくなることが知られている。
日照時間が少ない地域では冬にうつ病の患者が増えるという。
現代人は一日中、オフィスで過ごすことが多く、昼夜が逆転した生活も増えて日光不足に
陥りがち。
その結果、「セロトニンが足りずにうつ病にかかりやすくなっているほか、キレやすい人
も増えている」と東邦大学の有田秀穂教授(生理学)は警鐘を鳴らす。
日に当たらない生活が、心の病が絡む様々な事件の遠因になっている可能性もある。

有田教授は「セロトニンの良い効果を出すには1日30分程度の日光浴を」と勧める。
特別なことは必要なく、朝の通勤時に1駅分歩いたり近所を散歩したりするだけで十分だ。
窓やカーテンを開けて室内に光を入れるだけでも効果がある。
ただし、セロトニンの量は際限なく増え続けるわけではない。
一定値を超えると分泌量は減少に転じ、効果は薄れる。
「疲れたと感じたら日光浴をやめるように」と有田教授。
日差しの強い外に長時間いる場合には、サングラスで目に入る光の量を調節した方がよい。
 
日光は睡眠とも深く関係している。
夜になるとセロトニンが睡眠物質「メラトニン」に変化するためだ。
メラトニンは脳内の温度を下げて眠れるようになる。
また、老化に関係しているとされる体内の活性酸素を取り除く抗酸化作用もあるという。

ビタミンDを生成

日光に含まれる紫外線は美容の大敵とされるが、「良い面」も見逃せない。
紫外線の一つ「UV-B」には、骨を強くするのに欠かせないビタミンDを作る役目がある。
最近、ビタミンDの新しい効果も明らかになってきた。
日本大学医学部の平柳要准教授(衛生学)らの調査では、日照時間が短い地域ほど大腸がん
の死亡率が高かった。
「紫外線によって作られるビタミンDが、がんの予防に寄与しているようだ」と同准教授
は分析する。
イメージ 1
 
国立がんセンターが昨年発表した、4万人近くを対象にした疫学調査からは、血中の
ビタミンDが少ない集団では多い集団に比べ、結腸がんのリスクが男性で4.6倍、
女性で2.7倍高いことがわかった。
ビタミンDががん細胞の内部に入って増殖を抑えたり、がん細胞が増えるのに必要な血管
の新生を抑えたりすると考えられている。
 
ビタミンD不足は骨の障害である「くる病」を引き起こす。
防止するには1日に4~5マイクロ(マイクロは100万分の1)グラムの摂取が必要
とされる。
魚やキノコなどの食べ物からも摂取できるが、「がんなどほかの病気の予防にも役立てるに
は、日光浴などで紫外線からも作らないと足りない」と平柳准教授は指摘する。
研究から、東京都内で夏の正午ごろ半袖長ズボンの男性が30分間日光に当たるだけで、
約20マイクログラムのビタミンDが作られることがわかった。
同じ量を食べ物から摂取するには、例えばサケの切り身を7枚ほど食べなければならない。

夏の強い曰差しの下では日陰にいてもビタミンDは作られるが、日焼け止めを塗ると
ほとんど生成されなくなってしまう。
紫外線は皮膚がんの引き金になると言われるが、日本人は皮膚を守る色素のメラニン
比較的多いため発がんリスクは比較的低いという。
日焼け対策に神経質になりすぎずに、日光の恩恵を積極的に享受してみてはどうだろうか。
イメージ 2
 
出典 日経新聞・夕刊 2008.6.29
版権 日経新聞


読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(2)
(内科専門医向けのブログです)
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(~H20.5.21)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)