腰椎(ようつい)すべり症

腰痛でお悩みの方は多いことと思います。
進化の歴史の中で、4つ足から二本足歩行になって以来の、人間に課せられた宿命とも
いえます。
この腰痛も原因はさまざまです。
診断を適格につけないと、その後の治療も変わってしまいます。
専門医に相談されることが何より大切なことです。
しかし、私自身がしばしば経験することですが、専門医に紹介しても診断や治療方針が
異なることがあります。
特に複合的な要因の場合には診断そのものも難しくなります。
親身に相談に乗っていただける主治医に巡り会うこと。
それが実は一番難しいことかも知れません。


腰の病気「腰椎(ようつい)すべり症」に悩む中高年が増えている。
特にに女性に多く、腰椎がずれて腰痛に見舞われるほか、ひどくなると歩行障害や尿漏れを
招くこともある。
単なる腰痛と片づけず、専門医による早めの診断と治療が欠かせない。

投薬と理学療法

主婦のHさん(49)は、ある朝、目覚めると腰に重たい違和感を覚えた。
整形外科でレントゲン検査を受け、腰椎すべり症と診断された。
薬を飲み、コルセットをつけ始めると「かなり楽になった」。
今はマッサージなどの理学療法と、自宅でストレッチを続けている。
 
国際医療福祉大学三田病院の福井康之・整形外科部長によると「高齢化社会が進むにつれ、
患者は増えてきた」。
都内の医療機関を対象にした調査では、患者の平均年齢は約63歳。
「患者の7割が女性で、女性ホルモンとの関係が影響しているのではないか」(福井部長)
という。
 
腰椎すべり症は、腰椎をつなぐクッションとなる椎間板(ついかんばん)の働きが加齢ととも
に低下して、上下に並ぶ骨(椎体)がずれて発症する。


腰椎は5つの椎体からなり、Hさんは上から4番目の目の第4腰椎が、一番下の第五腰椎に対し、
前に8mmずれていた。
  
主な症状は腰痛。
腰痛には神経の通り道となる脊柱(せきちゅう)管がある。
腰椎がずれると狭まり、神経が圧迫され痛みが生じる。
前かがみになると脊柱管が広がり痛みが和らぐ。
逆に背筋を張ると症状が出やすい。
 
軽症のうちは、症状の緩和を目指す保存療法が基本。
血行を改善したり痛みを抑えたりする薬を飲み、コルセットで腰回りを固定する。
腹筋や背筋を鍛える体操をするなど、理学療法も効果的とされる。
 
根治は難しいが保存療法で改善することも多い。
初めぐらついていた腰椎がしばらくして安定するからだ。
 
間欠跛行(はこう)と呼ぶ、歩いているとしびれや痛みで足が前へ出なくなり、しばらく
休むと楽になって再び歩けるような症状が出てきたら気をつけたい。
 
腰椎の神経は左右のつま先までつながっており、間欠破行は片足だけなる場合が比較的
多い。
  
「痛みがひどい」 歩きづらい」など日常生活に支障をきたすようになれば、手術という
選択肢もある。脊椎の一部を削り脊柱管を広げたり、金属で固定したりして、神経の圧迫
を解消する。

台所に踏み台

手術する患者の割合は2~3割。
症状がひどいが手術を避けたいのであれば「つえや手押し車を使ったり、自転車で移動
したり、前かがみの姿勢をつくるのも一つの手だ」と慶応大学整形外科の戸山芳昭教授は
話す。
台所に立つときは踏み台に片足を置くなどエ天すると痛みは減る。
 
ただ「足の症状がひどい人は注意してほしい」(戸山教授)。
足に触れても感触がない知覚障害や、足が上がらないなどの運動障害、間欠跛行がひどくて
100mも歩けないといった場合、神経がかなり傷んでいる恐れがある。

尿漏れや頻尿など排せつ関連の症状にも要注意。
傷ついた神経を治すのは難しく、治療が遅れると後遺症となる。
 
心の持ちようも大切。
福井部長は「骨がずれていると不安がる人は多いが、きちんと説明し安心させてあげると
痛みが消えることもある」と話す。
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出典 日経新聞・夕刊 2008.1.29
版権 日経新聞