人生のエンディング  ③ 遺言

きょうはちょっと暗い内容です。
相続については親子で同居していても話し合うことはないものです。
遺言も、よほどきちんとした性格でないと・・・。

遺留分の計算 忘れずに

遺言に書けば、基本的には与えたい人に財産を残せます。
ただ、配偶者や子どもたちには最低限、保障される遺産があります。
遺族がもめないように遺言を残したのに、この遺留分のことで険悪に。
そうならないように注意する点は・・・。

  ■□■

A子さんが100歳で大往生。
夫と長男に先立たれ、長男の嫁のB美さんと
同居していた。
B美さんは献身的に介護してくれた。
一方、遠方に住む次男C夫さんには住宅や車の購入の時に援助してきた。
A子さんは「C夫には十分に生前贈与をした」と考え、遺言に「私の全財産をB美に
遺贈する」と書いていた。
しかし、これを読んだC夫さんは激怒。
「取り返してやる」と息巻く。
どうなる?
 
遺言がなければ、民法の規定に従って「一定の範囲の血族と配偶者」が相続権をもつ。
法定相続人でないB美さんのような人に財産を残すためには、遺言が不可欠だ。
法的な要件を満たした遺言を作れば、基本的には、自由に遺産を遺贈ないし相続させ
られる。

相続財産の洗い出しも大切

問題となるのが遺留分だ。
相続権をもつ人は遺産に期待を抱くもの。
このような相続人に、たとえ遺言がどのように定めようと、最低限の相続を保障しよう
というのが遺留分だ=
イメージ 1
 
配偶者と、第1順位とされる子(いない場合は孫)は優先順位が高い。
子や孫がいない場合、第2順位の父母(いない場合は祖父母)に権利が生じる。
兄弟姉妹には遺留分はない。
 
「せっかく遺言を残しても、遺留分を考慮していな
いために遺族がもめる事例は多い」と、「わが家の相続を円満にまとめる本」の著書がある
小堀球美子弁護士は指摘する。
 
先の例で考えてみると、C夫さんには遺留分の権利がある。夫と長男が亡くなり、子は1人
なので、C夫さんの遺留分はA子さんの相続財産の2分の1だ。

A子さんの財産は、住宅1千万円、預貯金500万円。
C夫さんへの生前贈与が、新居の頭金の一部450万円、車の費用の一部50万円だった。
遺留分算定の基礎額はこれらを足した2千万円で、C夫さんの遺留分は半分の1千万円。
実際には、生前贈与分の計500万円は差し引かれる。
 
残りの500万円分について、C夫さんはB美さんに対して、内容証明郵便などで遺留分
減殺請求をすることができる。
期間は相続の開始及び遺留分侵害の事実を知ってから1年、知らなくても相続開始から10年
以内だ。
それでも解決しない場合侭は、家庭裁判所に調停や裁判を申し立てる。

A子さんは遺留分を計算し、「B美に住宅を遺贈する。C夫に預貯金を相続する」などと
遺言しておけば、もめなかったというわけだ。
その際、生前贈与を考慮したことを付記し、証拠に振り込み記録も残しておくと納得を
得やすい。
 
このほか土地や家屋など財産の一部だけを遺言に記し、後で株式や貴金属などが判明した
場合も争いのもとになる。
小堀弁護士は「遺言を書く前に、相続財産のリストアップをすることも大切です」と助言
する。
  
出典 朝日新聞・朝刊 2008.9.18
版権 朝日新聞社

<関連サイト>
人生のエンディング ①
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/08/29
人生のエンディング ②
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/09/05




読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(2)
(内科専門医向けのブログです)
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(~H20.5.21)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)