掌蹠膿疱症

きょうは掌蹠膿疱症 (しょうせきのうほうしょう) のお話です。

4年前にこんなニュースがありました。
奈美悦子、激痛入院へ…「掌蹠膿疱症性骨関節炎」と闘病 (サンケイスポーツ) -
goo ニュースより
女優、奈美悦子(54)が、手のひらや足の裏にうみのようものが出る皮膚病
掌蹠膿疱症」が原因で、骨が変形したり、激痛に悩まされる「掌蹠膿疱症
骨関節炎(しょうせきのうほうしょうせいこつかんせつえん)」という病気と
闘っていることが分かった。
関係者によると、近々入院して治療に専念するという。

<参考サイト>
死んでたまるか!
掌蹠膿疱症性骨関節炎との戦い~
http://www.sbrain.co.jp/theme/T-21407.htm

このように、場合によっては入院も必要になる皮膚科の病気です。


扁桃(へんとう炎)や虫歯が原因のことも

どんな病気か
手のひらや足の裏に赤いカサカサした発疹ができ、膿疱(のうほう)が生じて
慢性の経過をたどる病気です。
おできやニキビと違って、この膿疱内の膿(うみ)からは細菌は検出されません
(無菌性)。
完成像は、境界がはっきりした紅斑落屑(らくせつ)局面に多数の膿疱をもちます。


原因は何か
現在のところは、はっきりわかっていません。
欧米では、乾癬の一亜型とする考え方が有力です。
日本では乾癬とは無関係で、病巣感染や金属アレルギー(歯科金属のパラジウム
など)を原因として重視する考え方が有力です。
約半数の患者さんで慢性へんとう炎の治療(へんとう摘出)や虫歯治療を行うと症状
が良くなるため、へんとう腺や虫歯の原因菌(主に溶連菌)による生体反応という
考え方です。
また喫煙者に多い病気です(80%の人が喫煙者)。
7~8割は検査をおこなっても原因を突き止めることができません。
一生治らない病気ではなく、患者さんの経過を長期間みた研究では、ほとんどの
症例が自然に治ってしまうことがわかっています(平均で3年から7年)。


症状の現れ方
手のひらや足の裏(とくに土踏まずの部分)に膿疱ができ、周囲に赤みをもつよう
になります。
赤みはお互いにくっつき合って、手のひらや足の裏全体の皮がむけて赤くなる状態
になり、そのなかに膿疱やかさぶたが見えるようになります。
多くは左右対称的に起こって、手足のつめが点状にへこむこともあります。
出始めに、よくかゆくなります。
また周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返します。

1割ほどの患者さんに、皮膚以外の症状が出ます。
なかでも特徴的なのは、関胸肋鎖関節炎(きょうろくさかんせつえん)という胸骨と
肋骨、鎖骨の関節炎による痛みや腫(は)れです。

検査と診断
専門医が見れば特徴的な臨床像から確定診断ができますが、真菌検査(水虫の検査)
や、わかりにくい時は皮膚をとって顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)を行うことも
あります。
金属アレルギーが疑われる場合には金属パッチテスト(一週間に通院三回で検査可能)
を行います。

治療の方法
主に副腎皮質(ステロイドホルモン剤含有軟膏や、カサカサをとるための尿素軟膏
が使われます。
ある程度症状が落ち着いた人にはビタミンD3軟膏も効果的です。
関節炎を合併した場合は内服治療でレチノイド(ビタミンA類似物質)を使います。
ただ、レチノイドは妊婦や妊娠の可能性がある方には使えません。
エトレチナート(チガソン)の内服、免疫抑制薬(ネオーラル)の内服、紫外線療法
などもありますが、根治は難しい病気です。

病気に気づいたらどうする
禁煙を心がけます。
感染病巣の摘出という手段もあります。
耳鼻科で扁桃(へんとう)誘発という試験をして、陽性ならば扁桃腺を摘出します。
また、金属アレルギーの検査を行って、陽性であれば歯科金属の除去を考えることも
あります。

掌蹠膿疱症は難治性で皮膚科特定疾患の一つです。
軽快と悪化を繰り返し、症状が落ち着くまで数年かかる例も少なくありません。


「掌蹠膿庖症で、ビオチン治療だけが万能ではない」
http://www3.ocn.ne.jp/~hpps/10th/banno/banno.html
掌蹠膿庖症
http://www.dermatol.or.jp/QandA/pustulosis/contents.html

読んでいただいて有難うございます。
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