急性低音障害型感音難聴

中年になると、さまざまな難聴の原因をかかえるようになります。
聞こえにくくなるのを年のせいだと思っていると、思わぬ耳の病気が潜んでいる
場合もあります。
30~60代に目立つ急性の難聴の原因には、突発性難聴や急性低音障害型感音
難聴、それにメニエール病や外リンパ瘻(ろう)などがあります。
精神的なストレスや寝不足が下地になると見られています。
それらの難聴は「感音難聴」と呼ばれます。
耳で集められた音は、鼓膜に伝わり、その奥で音の高低や大きさを認識する
センサーである蝸牛(かぎゅう、カタツムリのような形をしていることから
そう呼ばれる)に伝えられます。
この蝸牛周辺に何らかの問題があって聞こえにくくなるのがこの感音難聴」
なのです。

【症状と診断】
急性低音障害型感音難聴の患者が訴える症状は、耳が詰まった感じ(耳の閉塞感)
が一番多く、続いてゴーやザーという低い音の耳鳴りです。
高い音は普通に聞こえるので、難聴としてではなく、耳が詰まったような感じが
するとか、耳の中に水が入ったように感じると訴えるケースも多いものです。
診断には聴力検査を行います。
急性低音障害型感音難聴では、老人性難聴とは反対に低い周波数が聞こえにくい
のが特徴です。
同じような症状では聴神経の腫瘍も考えられますが、急性低音障害型感音難聴
では、CTやMRIに異常はみられません。
 
【特徴】
急性低音障害型感音難聴は20代~40代の、とくに女性に多く、女性対男性の
比率は2対1くらいです。
発症はストレスが引き金といわれ、医師や看護師にも多く見られます、またこの
10年位は不景気のせいか、証券マンや銀行マンの患者も少なくありません。
発症のきっかけは職場での人間関係や心配ごとなどの精神的なストレスばかり
でなく、風邪による体調不良や、睡眠不足・慢性疲労など肉体的なストレスも
含まれます。
こうした心身の疲れがあると、血液の流れを調節する自律神経の緊張状態を作り、
血の巡りが悪くなります。とくに内耳の血管は非常に細いため、ストレスの影響
が出やすいのです。

【治療と予防】
治療にはまず薬物療法が行われます。
最もよく使われるのが利尿剤と副腎皮質ホルモンです。
利尿剤は、内耳がリンパ液でむくんだ状態になっているのを緩和する目的で使用
します。
副腎皮質ホルモンは非常によく効く薬です。投与期間は通常1~2週間ですから、
副作用の心配はあまりありません。
またストレスで非常に疲れていたり、睡眠不足の方には精神安定剤や入眠剤
併用する場合もあります。
薬物療法によって6~7割の人は症状が改善しますが、3~4割の人は同じ
ような症状を繰り返すようになります。
その場合には、心理療法を行います。
自分では感じていないストレスを、はっきりさせるためにカウンセリングを
受けてもらいます。
あるいは自律神経を介して症状が出るため、自律訓練法を行うことがあります。
具体的には、乾布摩擦や軽い運動、水泳などで自律神経の働きをよくしようと
いうものです。
それでもうまく治らないときには、病院で自律神経を訓練することがあります。
例えば手足が暖かいなどのことをイメージして、実際に手足の温度を変えると
いうトレーニングをします。
バイオフィードバックという機械を使って、例えば、手が暖かいというイメージ
を作っていると、皮膚の温度が変わってきます。
それを見ながら自律神経の働きを調整してトレーニングをしていくわけです。
治療によって、早い人では2~3日、たいていは1週間くらいで症状が軽快して
きますが、3~4割の方は症状が繰り返し、1割くらいの方は、繰り返すうちに
めまいが起こり、メニエール病に移行するといわれています。
こうしたことが起きないためにもなるべく発作を予防することが重要になります。

【予防法】
ストレスや疲れが発症の引き金ですから、ストレスをためないことが大切です。
しかし、現在の社会でストレスがまったくない環境は難しいでしょう。
やはり睡眠をよくとるとか、ストレスを発散できる方法を見つけるとよいで
しょう。
あるいは軽い運動を続けることも有効です。体を動かすことで自律神経は確実に
鍛えられます。
「たまに」運動するのではなく、少しずつ長い間続ける必要があります。

<参考および引用サイト>
① http://www.meiji.co.jp/etc/ishoku/200301/oa2.html
(わかりやすい奇麗な図が見れ、理解を深めることができます)
朝日新聞・夕刊 2009.3.16
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<関連サイト>
『ストレス性難聴について』
http://www.3443.or.jp/tsushin/t0403/t0403_1.htm


急性低音障害型感音難聴
http://www.kashiwamura-clinic.com/d-lowsnhl.html

急性低音障害型感音難聴
http://www.jibika.info/ill/illdoc08.html

低音障害型難聴と診断され薬を減らすと再発します
http://health.nifty.com/cs/catalog/idai_qa/catalog_4613_1.htm




<2010.12.10 記事を追加しました>
突発性難聴再生医療、半数が症状改善 京大
京都大の伊藤寿一教授と中川隆之講師らは、原因不明の「突発性難聴」の症状を再生医療で改善することに成功した。
細胞の成長を促す薬剤を染み込ませたゼラチンを耳の中に入れ、弱った細胞の機能を回復させた。
25人を対象にした臨床試験で効果を確認した。
今後、一般的な治療法として実現を目指す。

臨床試験は発症後1カ月未満で、現在の治療法であるステロイド剤の全身投与が効かなかった人を対象に実施した。
細胞の成長を促す「IGF-1」という薬剤を染み込ませたゼラチンを、音を電気信号に変える細胞が集まる蝸牛の膜に置いた。

3カ月後に調べると48%で聴力が改善し、半年後では56%がよくなった。
まったく聞こえない人が音を感じる程度まで回復したり、軽度の人は正常に近い状態まで改善したりした。
副作用は特になかった。

今年度内にも、患者を120人まで増やし、有効性などを詳しく調べる試験を始める。
突発性難聴の国内患者は約3万5000人。
ステロイド投与で治療するが20%は効果がなく、新たな治療法が求められていた。





<番外編>
NHK:「ためしてガッテン」60代エキストラ骨折
NHKの健康情報番組「ためしてガッテン」の撮影にエキストラとして参加した60歳代の女性が、左手首を骨折し、全治6週間のけがをしていたことが6日わかった。

NHKによると、事故があったのは3月中旬。
骨折予防法を紹介するコーナーで、若者と高齢者では転び方が違うことを映像化するリハーサルの際、女性がディレクターの指示通り、転んでみたところ骨折したという。

現場には安全管理のため整形外科医も立ち会っていた。
番組は当初の予定通り、29日に放送する。

NHK広報局は「女性からの要望で公表を控えていた。事故はNHKの責任であり、二度とこうしたことを起こさないようよく検証したい」と話している。
http://mainichi.jp/select/today/news/20090407k0000m040124000c.html
出典 毎日jp
版権 毎日新聞社
<コメント>
「60代女性」なら、「あると思います」。