子宮がん

きょうは4月9日。
子宮(しきゅう)の日です。
その中でも子宮がんは、がんの中でも胃がんと並んで治りやすいがんに入ります。
実際に、ここ20年ほどの間に、子宮がんによる死亡率は大きく減少しています。
きょうはこの子宮がんをとりあげてみました。

#子宮頸がんは低年齢化、子宮体がんは増加
一般にがんになりやすい年齢は40歳以降といわれますが、子宮がんはむしろ若い
世代に多いがんであるため、若い人も油断はできません。
子宮がんには、子宮の入り口(頸部)にできる「子宮頸(けい)がん」と、子宮
の奥(体部)にできる「子宮体がん」があります。
どちらも、最近は発症年齢の低年齢化が問題になっています。
このふたつは、同じ子宮がんでも、がんとしての性質や発生の引き金などが、
大きく違います。子宮頸がんの死亡率が減少する一方で、むしろ子宮体がんに
よる死亡率は上昇しています。

とくに子宮頸がんは20~30歳代に急増。
これから子どもを産もうという人の多い年代であり、命は助かっても子宮を失う
ことは深刻な問題です。
 
子宮頸がんは、性交で感染するヒトパピローマウイルスとの関係がかなり明確に
なっており、性交経験のあるすべての女性がこの病気のリスクをもちます。

とくに、若い頃から複数の人と性交渉を持つ人には、子宮頸がんが発生しやすい
と言われています。
これは、イボを作るウイルスの一種で性行為で感染することがわかっています。
また、性交を経験する年齢が低くなったことが、このがんの低年齢化に結びつい
ていると考えられています。
子宮頸がんになるリスクが高いのは、性交を経験した年齢が低い人や喫煙者、
妊娠・出産回数が多い人などです。
最近は20代で0期の頸がんが多く発見されるようになっています。
子宮頸がんにも子宮の出口付近にできる子宮膣部がんと頸部の内側にできる
頸管内膜がんがあり、実際には子宮腟部がんは頸管内膜がんの15倍以上も
多いといわれています。

一方、以前は子宮がんといえばほとんどが子宮頸がん
だったのが、この40年ほどで子宮体がんが約4倍にも急増、最近では子宮がん
全体の30%前後を占めるまでに増えています。
40代から60代に最も多くみられますが、30代で発症する人も増えています。
妊娠・出産経験のない人、若い人では月経不順やホルモンの乱れがある人に
多くみられます。
肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症の人は、さらにリスクが高くなります。

子宮
がんは早期に見つけて治療すればほぼ完全に治すことができます。それには
定期的に検査を受けることが大切です。 

子宮頸がんは自覚症状が現われてからでは遅いことも

子宮頸がんは早期にはほとんど自覚症状がなく、自覚症状が現われるのはがん
が進行してから。
月経以外の出血(不正出血)、性交時の出血、おりものの増加などが主な症状
ですが、がんが進行してからでは、子宮の温存が不可能になります。
早期なら子宮を残す治療法を選択することができるため、妊娠することが可能
です。
だから自覚症状がないうちに発見することが何よりも大切なのです。


子宮頸がんの検診は多くの自治体で実施しており、多くの場合20歳から、
無料または安価な料金で受けることができます。
2年に1回の検診としているところが多いようですが、できれば最低でも年に
1回、婦人科や検査機関で自主的に検診を受けることをおすすめします。
 
検診では子宮の出口を綿棒でこする検査(細胞診)を行います。
痛みもなく短時間ですみます。
はずかしい、忙しいといった理由で婦人科の検診を受けることをためらう人は
多いかもしれませんが、後悔しないためにも、年に1回のがん検診を受けま
しょう。 


#子宮体がんの自覚症状は月経不順と間違えやすい
子宮頸がんによる死亡率が減少する一方で、最近急激に増えているのが子宮体
がんです。
以前は、子宮がんの85%以上は子宮頸がんと言われていましたが、最近では
体がんの比率がじわじわと増加しています。これは、食生活の欧米化、とくに
脂肪の摂取量の増加が関係しているのではないかとされています。
これは、子宮の内側をおおう内膜に発生するがんです。

子宮体がんも初めは無症状ですが、比較的早期に不正出血や月経異常で自覚
されることも多いようです。
最初は月経量が増える、長引くといった月経の異常として現われるため、
もともと月経不順のある人や閉経前後の人では、いつもの月経異常として見逃
してしまうことも多いのです。

現代女性は、初経年齢が早まり閉経年齢は遅く
なっていることに加え、子どもを産む数が減っていることから、昔の人よりも
約10倍、生涯で経験する月経が多くなりました。
この月経回数の増加が、子宮体がん増加の原因になっていると考えられて
います。

子宮体がんは、性交渉とは関係がなく、女性ホルモン(エストロゲン)と関係
が深いがんです。
妊娠経験のない人や無排卵などの排卵障害のあった人、また肥満や糖尿病、
高血圧の人もホルモンバランスが崩れて子宮体がんになりやすい傾向がある
と指摘されています。
閉経後は、卵巣からのエストロゲンの分泌は停止しますが、卵巣や副腎から
分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)は、脂肪細胞でエストロゲン
変化します。
これも、閉経後の子宮体がんの発生に関係しているのかもしれません。

つまり、子どもを産む産まないにかかわらず、現代女性の誰もが子宮体がんの
リスクがあるということ。
40歳になったらすべての人が検診を受け、月経不順があるなどのリスクが高い
と思われる人はもっと早く、30代から検診を受けることが望まれます。

自治
の検診はおもに頸がんについて行う場合が多いので、子宮体がんは婦人科を
受診して調べてもらうことをおすすめします。
体がんの検診は子宮内膜の細胞を調べる細胞診で、子宮内に細い棒状の器具
を入れて細胞をこすりとるなどの方法で、少し痛みを感じることもあります。
子宮内膜の厚さを測定する経膣(けいちつ)超音波検査も有効で、こちらは
痛みもほとんどありません。
子宮頸がんとともに年に1回は検診を受け、月経とは違う出血や、いつもより
月経量が多い、長いなどの変化があったら、自己判断せず、婦人科を受診
しましょう。


不正出血やおりものの変化などは、がんではなくても子宮や卵巣など婦人科の
病気のサインである可能性もあります。
まだがんになる前の状態(子宮内膜増殖症)でも、不正出血が出ることが
あります。
症状が出てから検診しても、進行がんとは限らないわけです。
逆に進行がんの段階になっても、不正出血のない人もいます。
検診を受けている場合でも月経時以外の出血(不正出血)、あるいはピンクや
茶褐色のおりものがあれば、ただちに検査を受けましょう。
20歳をすぎたら年に一度の検診で子宮や卵巣の状態をチェックすることが、
女性のライフプランの実現に不可欠であるということを心にとめておいて
ください。 

<参考および引用サイト>
子宮がん、小さな変化を見過ごさないで
http://health.goo.ne.jp/column/woman/w001/0013.html

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出典 朝日新聞・朝刊 2009.4.8