疲労骨折

野球やサッカーなどでのスポーツで、ちょっとしたケガはつきものです。
しかし肘や膝、そして腰などの痛みが続く場合には疲労骨折の可能性があり
ます。
成長途中の小中学生は大人と違って、軽い痛みでもこのような重い障害の
場合もあるのです。

野球肘や野球肩は炎症と思われ勝ちですが、小中学生の多くは骨折や軟骨が
欠けたりしていると指摘する専門家もいます。

<どんな障害か >
疲労骨折は、スポーツ活動に多い、走る、跳ぶなどの動作を繰り返し行う
ことで骨に微細な骨折を生じ、その骨折が自然に修復する前に再び同じ動作
を行うと微細骨折が連続するため、X線写真で確認できるほどの大きさに
なったものです。
例えれば通常は全く問題のない力なのに、繰り返しで金属が折れてしまう
のに似ています。
骨が金属と違うのは、ある程度の損傷なら、自己修復が出来るところです。
原因となるスポーツで、際立って多いのはランニングです。


疲労骨折では、X線でもひびが見えないことがあります。


<症状の現れ方 >
運動部などで常にスポーツを行っている成長期の学童や学生が、外傷が
ないのに下腿の慢性的な痛みを訴えます。
疼痛は繰り返し行っている動作に関連して起こります。
運動によって悪化し、安静にすると改善しますが、徐々に軽快しなくなり
ます。
 
他覚的な所見として特徴的なものは、局所の圧痛です。
一般的に熱をもったり赤くなることはありませんが、小児や高齢者には
認められることがあります。
局所に腫脹(しゅちょう)(はれ)、硬結(こうけつ)(しこり)が認められ
ることがあり、とくに足に多く認められます。

<部位別発生頻度>
下肢の発生が圧倒的で、脛骨、中足骨、腓骨が中でも非常に多く、体幹
では肋骨、恥骨などに認めます。
最も多い脛骨での好発部位は、脛骨を3分割したときの上から順に、内側、
前方、内側の3つです。
疲労骨折の痛みは、一般的に運動時の痛みですが、安静時にも不快感を感
じることがあります。
外傷性骨折の様に、激痛で歩行困難になることがないので、運動を続けて
しまうことが多いのです。
3つの場所を指で押して痛い時は、疲労骨折を疑う必要があります。
脛骨の疲労骨折には大きく分けて跳躍型、疾走型と呼ばれる二つのタイプ
があります。
 
脛骨跳躍型疲労骨折は、脛骨前方に働く 張力が原因で脛骨の前中1/3に
発生します。
難治性で復帰まで4ヶ月以上、平均12ヶ月を必要とします。
 
脛骨疾走型疲労骨折は、脛骨の上1/3と下1/3の内、後方に発生し1:3の
割合で下1/3に発生する頻度が高いようです。
いずれもほぼ8週間の局所安静でスポーツ復帰できますが、レントゲン
検査で骨が 治っているにもかかわらず痛みが長期間続く場合もあります。



<検査と診断 >
運動時の痛みや、骨折部の狭い範囲の圧痛が特徴的です。
X線検査
X線所見の変化は、症状が発生してから2~6週の時期に認められます。
圧痛点をマークして、その部位を中心に2方向の撮影を行います。
しかし、X線でもひびが見えないことがあります。

疲労骨折の典型的な所見は、最初に骨膜(こつまく)反応がみられ、次に骨膜
仮骨(こつまくかこつ)となり、やがて紡錘状(ぼうすいじょう)に肥厚して
きます。

骨シンチグラフィ
X線検査で明らかになる前に、骨シンチグラフィで早期の診断が可能です。
テクネシウムという物質は骨新生中の骨芽(こつが)細胞に取り込まれるので、そ
の様子をみることで骨折部位を容易に確認できます。


<治療の方法 >
X線写真で骨折線がみられる時は、ギプスによる固定が必要です。
仮骨形成がみられる時は、1~2カ月間スポーツを禁止するだけでかまいません。
多くは運動の中止で十分で、通常は2~3ヶ月でスポーツに復帰できます。
<予防はどうするか >
単調な練習の繰り返しが最も危険です。毎日同じ練習をせず、下肢の筋力増加や
ストレッチを十分に行いましょう。


<参考および引用サイト>
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10961700.html



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出典 日経新聞・夕刊 2009.5.1
版権 日経新聞