新型インフルエンザで注目のPCR法とは

最近テレビのドラマなどで、たった数本の髪の毛やほんの少しの肉片から
遺伝子検査を行い犯人などを特定しています。

これは、PCR(polymerase chain reaction)法といって僅かなDNAを
とてつもない数にまで増やす方法なのです。

こういった犯罪だけでなく、医学的には遺伝子疾患の診断、今回の新型
インフルエンザなどのおうに病原体の検出や同定、親子鑑定等に応用
されています。
そして遺伝子組み換え原料を使用した食品かどうかの判別試験や、作物
品種の鑑定などの食品検査にも使われているのです。

1985年に Kary B. Mullis が、高温でも耐えられる耐熱性ポリメラ
ーゼという酵素を発見し、この酵素を用いてDNAを増幅するPCR法を
発明しました。

このPCR法は遺伝子検査にとって欠かすことのできない非常に重要な
分子生物学的技術手法です。

今や、このPCR法か無かったならば遺伝子検査はここまでは発展しな
かったといって過言ではありません。

1985年に Kary B. Mullis が、高温でも耐えられる耐熱性ポリメラ
ーという酵素を発見し、この酵素を用いてDNAを増幅するPCR法を
発明しました。

これはDNAの構造を解明したクリック&ワトソン以来の一大革命
ともいわれています。

彼はこの功績で1993年にノーベル賞を受賞しています。


そして、このPCR法を行う機械がサーマルサイクラー(DNA
増幅装置)で、この普及によってPCR法は全世界に爆発的に広まり
ました。

このサーマルサイクラーにより、試料中にDNA断片が1分子あれば、原理
的には20回の反応の繰り返しで100万個以上(2の20乗)のコピーが得られ
ます。

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出典 朝日新聞・朝刊 2009.5.8
版権 朝日新聞社


<番外編>
お酒弱いのに飲酒・喫煙、食道がんのリスクは190倍
顔がすぐに赤くなるお酒に弱い体質の人が飲酒と喫煙をすると、食道がん
になるリスクが、飲酒も喫煙もしない人に比べ、最大190倍も高くなる
ことが、東京大学の中村祐輔教授と松田浩助教の研究でわかった。

同じ体質の人でも、飲酒・喫煙をしないと、リスクは7倍程度に下がった。
体質を理解して生活習慣に気を配ることで、予防したり、早期発見したり
できると期待される。

研究チームは、食道がんの患者1070人と健常者2832人で、約55
万か所の遺伝情報の違いを比較。
発がん性が指摘されているアセトアルデヒドをアルコールから作る酵素と、
アセトアルデヒドを分解する酵素の二つが、食道がんのリスクに関連して
いることを突き止めた。

アセトアルデヒドはお酒で気分が悪くなる原因物質で、たばこの煙にも含
まれる。
顔が赤くなるのは、アセトアルデヒドの分解能力が弱いためで、日本人の
4割がこのタイプ。
アセトアルデヒドを作る働きが弱いと、気分が悪くなる前に、ついつい
余分に飲んでアセトアルデヒドが増える。

飲酒・喫煙の影響についても調べたところ、お酒に弱く二つの酵素の働き
が弱い人が、1日缶ビール1本以上の飲酒と喫煙をすると、相乗効果が働
き、お酒に強く飲酒・喫煙をしない人に比べ、食道がんのリスクが190
倍も高くなっていた。
出典 読売新聞  2009.5.14
版権 読売新聞社



<関連サイト>
ポリメラーゼ連鎖反応
http://ja.wikipedia.org/wiki/ポリメラーゼ連鎖反応
■シータス社のキャリー・マリスが車でガールフレンドと夜道をドライブ
中に、当時すでに知られていたオリゴヌクレオチドとDNAポリメラーゼを
用いたDNA合成反応を繰り返すことにより核酸の一定領域を増幅すること
を思いつく。
■マリスはこの方法を "polymerase-catalyzed chain reaction" (ポリメ
ラーゼ触媒連鎖反応)と名付け、ネイチャー、サイエンスなどの著名な
科学雑誌に論文として投稿したが、掲載されなかった。1987年にようやく、
その論文は Methods in Enzymology 誌に掲載された。
PCR法自体はシータス社の同僚の手により鎌状赤血球症という遺伝性疾患
の迅速な診断手段に応用された。
サイエンス誌に "Enzymatic amplification of beta-globin genomic
sequences and restriction site analysis for diagnosis of sickle cell
anemia" として報告され、オリジナル論文より前に世界の科学者の注目を
集めることとなった。
PCR法の応用、発展にはシータス社グループ(当初はマリスも含む)の
はたした役割が大きいのであるが、最初にこの方法を着想し、方向性を示
したという業績により、1993年にキャリー・マリスがノーベル化学賞を受賞
している。


PCR法の原理と生物学的検査への応用例
http://www.aichi-inst.jp/html/news/news05/news036p2.pdf

特定の遺伝子を増やすPCR法(1)
http://dna.kokoronogohan.com/050qgiaqiau/pcr.html

<自遊時間>
5月10日は「母の日」でした。
4月から社会人となり別居を始めた娘が、初給料で花屋さんに頼んでプレゼント
してくれたのがこの写真の花です。
思わず「仏花みたいだね」と女房に言ってしまいました。
女房は早速写メで送っていました。
返って来たメールは「想像通りの花でよかった」。

最近の若者のセンスってこうなんでしょうか?


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