新型インフルエンザと抗ウイルス剤

最近の一連の新型インフルエンザに関する報道で驚いたことがあります。
ご存知の方も多いと思いますが、、インフルエンザの治療においてタミフル
異常行動との関連が問題とされ10代への処方は原則禁忌とされています。
しかし、神戸での開業医での高校生や成田赤十字病院へ入院した高校生の例
では堂々とタミフルが処方されています。
新聞記事で見る限り、タミフルを使用した理由についての説明が医療機関から
はされていません。
いわゆるコンプライアンスが守られていないということです。
厚労省も全くその点についての見解は出していません。
不思議な国です。

話は飛びますが、国民の信任を得ていない現内閣。
さんざんっぱらバラマキ政策(私には自暴自棄に映りますが)をやったすえに
今朝の朝日新聞朝刊には「10年以内の財政再建内閣府が試算 消費税
12%必要」という見出しがトップ記事で出ています。
歳出削減の話を棚上げにした浪費癖を誰も止めれない。
「冷静に対応をお願いします」という総理の選挙対策の広告(!)代が5億円。
新型インフルエンザには冷静になれても広告代には冷静になれません。
不思議な国です。

さて、話を戻します。
当院では、インフルエンザに対しては10代にはリレンザを処方します。
そして5歳以下の小児を除くほとんどの方にもリレンザです。
いわゆるコンプライアンス遵守です。

その理由はそれだけではありません。
リレンザには多くの利点があるからです。
以下のサイトを見ていただくと両者の相違点を理解していただけると思います。


タミフルリレンザ
http://www.miyazaki-med.ac.jp/yakuzai/topics/Tamiflu%20and%20Relenza.pdf
■インフルエンザ治療薬であるリレンザ(ザナミビル)は、これまで、同じノイ
ラミニダーゼ阻害剤であるタミフル(オセルタミビル)の陰に隠れ、その使用量
において圧倒的な差をつけられてきた。
2004-05シーズンの国内の処方量は、タミフルが約1000万人分であるのに対し、
リレンザが約12万人分と約80倍の開きがあり、この偏りは世界的にみても同様
である。
これほどまでに使用量に差がみられる原因は、吸入と経口という剤形の違いに
あると考えられる。
タミフルの副作用の問題、耐性ウイルス、新型インフルエンザウイルスの発生
の危険性を考慮すると、これを期に、リレンザの治療薬としての正しい位置づけ
を行い、小児のみならず、成人においても、インフルエンザ治療薬の選択肢の
一つとしての認識を高めるべきである。
■単純に用法のみに注目するのではなく、吸入剤であるが故に有するリレンザ
多くの利点を理解しておかなくてはならない。
リレンザは即効性があり、吸入直後十数秒で効果を示すと言われる。
■全身臓器への影響は少なく、副作用の頻度は低い。しかし、粉末吸入である
ため、気管支攣縮等の副作用に注意しなければならない。気管支喘息や慢性
閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患のある患者への投与は慎重に行う必要がある。
タミフルはプロドラッグであり、内服後肝エステラーゼによって速やかに活性
物質に変換され、投与後3~4時間で血中濃度が最高に達する。吸収率は高く、
bioavailabilityは80%であるが、気道表面に達する薬剤濃度は、直接作用する
リレンザと比べ、低い点は否めない。
■排泄は腎であり、高度腎機能障害患者では、投与量の調節が必要である。
副作用の中で最も頻度の高いものが悪心、嘔吐、下痢等の消化器症状であり、
特にドライシロップ剤に関しては、嘔吐、下痢共に発現頻度が20%以上となって
いる。
リレンザの耐性ウイルスに関する報告は1例のみである。
しかも、患者は免疫不全という特殊な症例であり、さらにその耐性ウイルスの
病原性は極めて低かったと報告されている。
タミフルと比較し、リレンザの耐性ウイルスが臨床的に皆無に近い最も大きな
理由は、感染部位における薬剤の濃度の違いにあると言われている。
リレンザは吸入により、MICをはるかに超えた濃度で、感染部位に到達する。
ウイルスが低濃度の薬剤にさらされることがないため、耐性化しにくいと考え
られる。
また、作用機序の違いも関係しているという報告もある。
両剤はノイラミニダーゼの活性部位に結合し活性を阻害する。
その際、リレンザ酵素の構造に変化を起こさないのに対し、タミフルの場合、
その結合により活性部位の構造を変化させ、新たな疎水ポケットを形成する。
この機序に関わるアミノ酸残基の変異が耐性獲得につながることがわかっており、
単純にはまりこむだけの機序であるリレンザと比べ、耐性化を起こしやすい原因
の一つであろうと考えられる。
タミフルでは、嘔吐の副作用が高発現率で起こるため、特に小児の場合、服用
後に薬剤を吐き出してしまう可能性が考えられる。
その点、リレンザは吸入薬であるため、今回5歳以上に適応が拡大されたことは
意義深い。
自力で吸入できない幼児であっても、リレンザを溶解しネブライザーを用いて
吸入することもできる。


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出典 朝日新聞・朝刊 2009.5.22
版権 朝日新聞社


<番外編>
「世界的大流行に極めて近い」=新型インフルで-WHO
世界保健機関(WHO)のフクダ事務局長補代理は9日の電話会見で、新型イン
フルエンザの感染状況に関して、「世界的な大流行(パンデミック)に極めて
近づいている」との認識を表明した。
これまでの感染の中心だった北半球に加え、オーストラリアなど南半球でも
感染が拡大していることに強い警戒感を示した。 
時事通信  2009.6.10 1時28分配信


<自遊時間>
昨夜、NHKのTV番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で乳腺外科医をとり
あげていました。
見られた方も多かったのではないでしょうか。


女性の20人に1人がかかるという乳がん
その番組の中で、「乳がん自己検診法」がとりあげられていました。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/090609/kenshin.html