高山病を防ぐ

夏は国内外で登山をする人が多くなるシーズンです。
意外な落とし穴に高山病があります。
命にかかわることもあるので、正確な知識が欠かせません。

私も以前、ヒマラヤトレッキングに参加する老夫婦から高山病対策の相談を受けたことがあります。
はっきり覚えていませんがヘリコプターか飛行機で急に高地に移動するというお話でした。
ご存知のように急に高度の高いところに移動すると体が順応できません。
ヨーロッパのアルプス観光(モンブランなど)で気分が悪くなったという経験をお持ちの方もおみえでしょう。

きょうは、「高山病」をとりあげてみました。



#高山病について
標高が高くなるにつれて気圧が下がり、酸欠の状態になり、血中酸素濃度が低下することで身体にいろいろな変調をきたします。
初期段階では、頭痛、吐き気、めまい、食欲不振、手足のむくみ、心悸亢進(脈拍が速くなる)など風邪のような症状が現れます。
あるいは二日酔いの症状にも似ているので専門家は「山酔い」と呼んでいたそうです。
確かに二日酔いの経験者ならその状態を想像しやすいでしょう。
症状が出た場合は無理をしないでしばらく休憩し、それでも状況が改善されない場合は下山してください。

オーバーペースで行動した結果、ただでさえ薄い血中の酸素をさらに消費してしまえば苦しくなるのは当然です。
高山病にならないようにするためには、酸素をできるだけ取り込み(呼吸法)、逆になるべく消費しないようにすること(ゆっくりしたペース)を意識するのが大切だということです。

高山病になりやすいかどうかは酸素摂取能力が影響しています。
酸素摂取能力が高ければ、薄い空気の中でも酸素を効率よく取り込めますから酸欠になりにくいわけです。
酸素摂取能力の個人差は心肺機能の他に、血中ヘモグロビン量が要因の一つとなっています。
ヘモグロビンが少ないと貧血気味になり、身体のすみずみに酸素を運びにくくなります。
普段から貧血気味の人は、平地でさえ十分に酸素を体内に取り込めていないのですから、富士山に登ればさらに苦しい状況になるのは必然です。
鉄分不足でヘモグロビンが少なくなっている人が多いそうです。
(もちろん貧血にはそれ以外の要因もいろいろあります。)

 
#高山病対策
#高所順応をする
車で五合目に到着したら、しばらくゆっくりして身体を高所に慣らしましょう。
到着してすぐに登り始めるのは禁物です。
また登り始めの時は意識的にゆっくり歩いてください。
「登山では最初の1時間を意識的にゆっくり登るのが登頂への秘訣」なのだそうです。

#酸素を十分に取り入れる
登山用呼吸法として別ページでも紹介していますが、普通に吐ききってから、さらに口をとがらせてフーフーと吹くと、その分、大量に空気を吸い込むことができます。
疲れて呼吸が浅くなると、なおさら酸素不足になりますから、意識して大量に空気を吸い込んでください。
腹式呼吸をこころがけてください。

#マイペースで登る
グループで登る場合は、ついつい同行者のペースに合わせてしまいますが、オーバーペースなのに無理してついていくと高山病になって、かえって迷惑をかけることになりますから「悠然と我が道を行く」という感じでゆっくり登りましょう。
自分のペースに合わせてくれないような人とは登らないことです。
ただ、バスツアーではそういうわけにいきません。
ついていけそうになかったら無理せずに早めにリタイアしましょう。特に高齢者の場合、心不全といった重大な事態につながりかねません。

#水分を多めにとる
山では水は貴重です。
また、トイレも少なく有料な山もあるので水を控え気味にする人がいます。
しかし、登山では喉の乾きを感じる前に十分に水を飲む必要があります。
体内の水分が不足すると血液がドロドロになって血管の中を流れにくくなります。
そのため人体にいろいろな悪影響が出てきます。
また暑い時は熱中症にもなりやすくなります。

#身体を締め付けない
ズボンのベルト、リュックの腹部のベルトなどは、あまりきつく締め付けない方が、腹式呼吸を妨げないので良いと思います。
これが原因で気分が悪くなっている人がけっこう多いような気がします。
スナックなどの袋を山頂に持っていくと気圧の関係で膨れていきます。
同じように、実は身体も膨張しています。
だから、高いところほどベルトは緩めないと徐々にきつくなっているのです。
その点で、ジーンズのようなぴったりした衣類は余裕がないので登山には不適です。

#鉄分を摂取しておく
鉄分が不足すると血中のヘモグロビンが減少し、吸った酸素をうまく体内に取り込めなくなってしまいます。
もともと貧血気味の人は、要するに平地でも酸欠状態になっているわけですから、高山に登ればそれが症状として現れやすくなります。
気になる方は普段から鉄分を食べ物や栄養剤で摂取するように心がけると良いと思います。
もともと(特に女性は)鉄分というのは不足しがちな栄養素なのだそうです。

#天気が悪い日は不利
天気が悪い日は気圧が低いので、さらに高山病になりやすいです。
雨に濡れ、景色も楽しめず、そして高山病になってしまったら、まさに踏んだりけったりです。

★他には、寝不足のまま登らない、お酒を飲まないなどの注意も必要です。

 
<参考および引用サイト>
高山病について
http://www001.upp.so-net.ne.jp/fujisan/fuji-kozan.html



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■高山病は標高の高い場所で、酸素不足と低い気圧が原因で起こります。
標高2千メートル以上でかかる危険があり、標高が高くなるほど危険は高まります。
自動車で行ける(移動時間の短い)富山の立山や富士山の登山口、スイスアルプスの観光地でも注意が必要です。
■最初の症状は「山酔い」といわれるものです。
高地到着後6~12時間で発症し、頭痛に加えて、
(1)食欲不振や吐き気
(2)全身の疲労感や脱力感
(3)めまいや立ちくらみ
(4)睡眠障害
のいずれかがおこります。
これらは高山病の中では軽い部類で、大半はこの症状で終わります。
■多くはないのですが、より深刻な事態になる場合もあります。
高所肺水腫がその一つで、肺に体液がにじみ出て呼吸機能が落ち、命の危険もあるのです。
肺の音のほか、呼吸回数や心拍数が増えることなどでわかります。
いわゆる心不全の症状です。
山酔いを経ずに起こることもあり、要注意です。
高所に来て2~4日で起こることが多いといわれています。
■高所脳浮腫も危険です。
山酔いが悪化した状態とされ、脳が腫れます。
山酔いの症状に加えて、思考の乱れや運動失調を起こします。
失神を経て、亡くなることさえあります。
■高山病を予防するには、まず数日かけて体を慣らしながら高い場所に至ることです。
しかし限られた旅程という現実があります。
前もって予防薬を、医師に処方してもらっておくという方法もあります。
高山病予防薬として有効なのは、睡眠時無呼吸症の治療にも使われるダイアモックスという薬です。
■アルコール類や睡眠薬は発症に気付くのを遅らせる可能性があり、やめた方が無難です。
■これらの注意を守っても発症したら、何よりの特効薬は低い場所に移動することです。
数百メートル下がるだけで劇的に回復することもあります。
応急処置的な薬や酸素吸入といった治療法もあるが、個人で準備するのは難しいと思われます。
パックツアーなら、旅行社の対策もチェックしておく必要があります。
■高山病のかかりやすさは年齢や体力とは関係なく、以前は問題がなかった人でも発症することがあります。

出典 朝日新聞・朝刊 2009.8.1(一部改変)
版権 朝日新聞社


<関連サイト>
急性高山病
http://www.forth.go.jp/tourist/useful/10_kousan.html
(簡潔に分かりやすく解説されています)


【はじめての富士山-高山病対策】
http://wakouji.at.infoseek.co.jp/sub6.htm

低酸素症(高所障害・高山病)
http://www.lirung.com/infofile2/file010hight/

高山病(スイス 南米 ネパール 中国奥地)
知らないと本当に怖い一般ツアーの高山病!
http://www.jata-net.or.jp/anshin/igaku5.htm

登山シーズン前に要チェック 「高山病」の傾向と対策
http://r25.jp/b/honshi/a/ranking_review_details/id/110000007415

登山シーズン前に要チェック「高山病」の傾向と対策
http://bizex.goo.ne.jp/column/ip_9/42/790/


【コラム】 登山シーズン前に要チェック「高山病」の傾向と対策
http://news.ameba.jp/r25/2009/07/41793.html


<富士山登山のブログ>
(富士山登山の体験談が、いずれも写真付きでリアルに紹介されています。これらのブログを見れば登ったような気になれます)


高山病には酸素ボンベ??
http://blogs.yahoo.co.jp/wakuwakuicf/48845694.html

ファミリー富士登山体験記の取材
http://freesale.jugem.jp/?cid=14

富士山へ登ろう!生まれて初めての富士山登山 ~富士宮口の写真ギャラリー&初心者富士山登山体験記~
http://fuji.frutadetiempo.com/fuji_gallery.html

高速バスで新宿から富士山五合目へ!
http://tozan.manono.net/






富士山ライブカメラ 撮影場所:三ツ峠(1785m)山頂付近
撮影時間:2009年8月8日 6時49分
イメージ 2

http://camera.mvkofu.com/cgi-bin/livecam.cgi






<きょうの一曲>
Last Tango In Paris - European Jazz Trio
http://www.youtube.com/watch?v=g6Qe7eMe9cE&feature=related



読んでいただいて有難うございます。
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