見直されるPET

昨日の新聞にPETの特集がありました。
PETとは日本語に訳すと「陽電子放射断層撮影」で数年前に「夢の検診法」として関心を集めたものです。
新登場した時には、健康な人のがんを見つける検診目的としてその後は急激な増加を見せました。
最近では、治療方針の検討や化学療法の効果を確かめる手段として、重要性が高まっています。
普及してきたとはいえ、いまだに設置されていない病院も多く設置されていない病院の方が多いというのが現状です。
患者や家族という立場の方も正しい知識を持ち、医師にPET検査の受診を相談することも大切です。

以下は新聞記事からの抜粋です。


#治療方針を大きく左右
■今年1月、○○医大病院でPET検査をうけた○○市の主婦、○○○○さん(女性、57歳)は唖然とした。
医師に示された画像の所々に、がんを示すオレンジ色の部分が見えた。
乳がん再発に加え、全身の骨や肺、リンパ節に転移していた。通っていた県内のほかの病院では、がんは「ない」とされていた。
05年、乳がんで左乳房を切除。
その後も定期的に検査を受け続けていたが、当時の病院ではPET検査はなく、再発や転移は見つかっていなかった。

■再発が分かってからは薬剤治療が効いて、今夏には、がんが骨の一部に残るだけまでに縮小。
「前の病院はPETを勧めてくれなかったが、思い切って○○医大を訪ねて良かった」と話す。

■エックス線など、他の画像検査で分からないがんがPETで見つかるのは、体内の組織の形を見るのではなく、細胞の糖分消費の活発さを調べるためだ。
がん細胞は盛んに成長するため、通常の細胞よりもエネルギー源になる糖分の消費が多い。
検査では、放射線を出すブドウ糖の試薬を受診者に注射し、PET機器で放射線を測定して、その多さによって体内のどこでブドウ糖が多く消費されているかをみる。

■PETは治療方針を決めるのに大きな役割を果たしてきた。米国のグループの昨年の報告では、同国の高齢者医療保険制度のもとでPET検査を受けた約3万5千人のがん患者のうち、38%で検査後の治療方針が変わっていた。
このうち、30%の患者は検査前に「治療不可能または不要」と判断されていたのが、PET検査後は治療する方針に。逆に8%は検査後、治療不可能または不要と判断された。

■PET検査で治療が改善し、寿命が延びたという統計データはない。
しかし、助かる可能性のある人が新たに見つかるのは確かという考え方がある。
逆に「助からない」と分かることもある。
可能性のない治療で苦しむより、人生を最期まで充実させる選択肢が生まれる。

■最近は抗がん剤の効果確認にも、PETは注目されるようになってきた。
特に期待されるのが、分子標的薬という新しいタイプの薬だ。

■分子標的薬は正常細胞に影響がないよう、がん細胞の増殖だけを阻害し、副作用を抑えることを狙った薬である。
ただし、がん細胞そのものを殺す効果は少ないため、従来のタイプよりがんが縮小しにくい。
このため、形状を見るだけの画像検査では効果が分かりにくいが、がん細胞の活発さを見るPETなら評価しやすい。
より早い効果の確認で患者に適した治療に早く移ることができるともいえる。

#勧めない医師も 患者は勉強を
■ 日本アイソトープ協会が03年から毎年、全国の施設に行っているアンケートでは、PETのがん検診(保険適用外)は03~05年に3倍に急増し月間6千件を数えた。
しかし、その後は5千件前後で推移し、そう増えてはいない。

■06年にはPETはがんの大半を見落とす、との報道もあった。
焦点となったのは、国立がんセンターの検診データ。
他の画像診断や内視鏡など、各手法を駆使した手厚い検診で約3千人から見つかった129個のがんのうち、PETが検知したのは28個だけだった。
担当者は「ほかの検査では通常は余り見つからない緊急性の低いがんも多かった。それで相対的にPETの成績が落ちた」と分析する。

■ある大学が、国内のPETを併用した検診結果を検証したところ、大腸、甲状腺、肺、乳がんで、PETが検知しなかったがんは2割以下にとどまる。
前立腺と胃は6割以上だが、大腸などは個別に臓器を調べるほかの検診方法より成績はそんなには劣らない結果であった。
さらにPETには全身を一度に見られる利点もある。
万能な検診手法は無く、PETとその弱点を補う別の手法を合わせるのが大事であるという結論であった。

■そもそもPET施設は経費が年数億円と高い。
他の検査で確認できないがんの検査に保険が認められているが、保険によって病院に支払われる7万5千円(患者負担2万2500円)の収入だけでは黒字が出づらいとされる。

■日本核医学会の推定では2009年7月現在、国内のPET施設は259ある。

■00年代前半のPET検診ブーム時、保険適用外で価格を自由設定できる検診の経営的な魅力から、PETを導入する病院が急増した。
その後、ブームは伸び悩み価格競争も激しくなり、現在では赤字施設もあり、全国の施設数はむしろ過剰な観もある。

■ある大学医師は「PETのない病院では、知識が乏しい医師や、PET施設に患者を奪われることを恐れる医師が、患者に検査を勧めない場合がある」と指摘する。

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出典 朝日新聞・朝刊 2009.11.7
版権 朝日新聞社
(一部改変)



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