新型インフルエンザワクチンは安全か? その2

##新型インフルエンザ:ワクチン副作用は季節性並み 「重大懸念なし」--厚労省検討会
新型インフルエンザのワクチン接種による副作用について、厚生労働省の専門家検討会が21日開かれ、季節性ワクチンと安全性に大差はなく、現時点で重大な懸念はないとの結論をまとめた。
ただし、死亡例が21件に上り、心臓、腎臓、呼吸器などに障害のある人への接種は慎重な判断が必要だと指摘した。

厚労省によると、16日までに寄せられた副作用報告は約450万件の接種に対し877件、このうち入院相当の重い副作用は0.002%(10万件に2件)の68件。
20日までに報告された死亡21件のうち調査中の2件を除く19件は、基礎疾患のある50~90代。

季節性ワクチンの場合、07年度の入院相当の副作用報告は0.0003%(100万件に3件)の122件、死亡は4件。
今回はそれより報告頻度が高いが、「因果関係がないと考えられる場合も報告しており、単純比較はできない」との意見が相次ぎ、安全性は大差ないと判断した。
死亡例21件中4件は、接種との関連が否定できないとの指摘があった。
http://mainichi.jp/select/science/news/20091121dde001040027000c.html
出典 毎日新聞・東京夕刊 2009.11.21
版権 毎日新聞社
<コメント>
この報道を「見出し」だけ読んで、「そうか安全なんだ」と即断してはいけません。
「専門家検討会」の構成員はどういった人達か、彼らはこの結果に責任を持つ立場の人達か。
もちろん責任は誰もとりません。
今回の「専門家検討会」のメンバーを是非知りたいのですが厚労省のHPからは知ることが出来ませんでした。
議事録も故意なのかも知れませんが新しいのはアップされていません。
責任の所在をはっきりするためにも堂々と公表すべきです。

「季節性ワクチンと安全性に大差はなく、現時点で重大な懸念はないとの結論」がこの報道をみる限りどうして導かれるのでしょうか。
昨年の季節性ワクチンによる死亡例は2例といわれています。
今年は接種が始まったばかりなのにすでに10例の死亡例が報告されています。
(「20日までに報告された死亡21件」。いつの間にこんなに増えたのでしょうか。)
その因果関係を証明することは困難です。
逆に否定するのも困難なはずです。

そして何より「心臓、腎臓、呼吸器などに障害のある人への接種は慎重な判断が必要だと指摘」ということはハイリスク患者を最優先にするという決定と矛盾しています。

「『因果関係がないと考えられる場合も報告しており、単純比較はできない』との意見が相次ぎ、安全性は大差ないと判断した。」 これはまったく科学的な結論ではありません。
初めに結論ありきで御用学者の謗りを免れません。

<関連サイト>
死亡者の年齢別内訳 (11月4日時点)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu091109-02.pdf



<番外編 その1>
#社説2 ワクチン不足が根本の問題だ(11/19)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20091118AS1K1800418112009.html
これまでの感染者数は約600万人で、約60人が亡くなった。
致死率は10万分の1で、単純な比較はできないものの、季節性インフルエンザ(2千分の1程度)より低い。
侮るのもいけないが、いたずらにあわてないようにしたい。
<コメント>
新型インフルエンザの致死率が低く同ワクチンの死亡率が高いとすれば「過ちを改めるに憚ることなかれ」「過ちを改めざる これを過ちという」ではありませんか。
こういったことはわれわれ医療関係者から発信されないのが不思議でなりません。
当地域の医師会のメールも、ワクチンが「いつ入る」「どれだけ入る」「いつから始める」といった話題ばかりでうんざりです。
すでに約450万件に接種されたということですが、その数字にも驚きます。
当院ではまだ私や職員も含めて1例も接種していません。
高齢者のハイリスク患者への接種は本人に説明して中止するようにお薦めするつもりです。

<番外編 その2>
#半数近く、子供に接種させぬ=3割がワクチン安全性不安-米新型インフル
米国で新型インフルエンザのワクチンを子供に接種させるつもりはないと考える保護者が半数近くに上り、約3割がワクチンの安全性に不安を抱いていることが19日、ワシントン・ポスト紙とABCテレビの世論調査で分かった。
 
疾病対策センターCDC)は生後6カ月から24歳までを優先接種の対象とし、食品医薬品局(FDA)はワクチンの安全性を医師に通知しているが、接種への抵抗感が根強いことがうかがえる。
 
調査は今月12~15日に約1000人の成人を対象に実施。「接種させるつもりはない」と答えた人は45%で、前回(10月)の調査より6ポイント上昇した。
また、「ワクチンの安全性を信用できない」と回答した人は33%で、前回より3ポイント増えた。
 
一方、子供に既にワクチンを接種させたと回答した人は14%で、「これから接種させる」としたのは39%だった。(2009/11/20-14:37)
時事ドットコム 2009.11.20
<コメント>
親として賢明な判断かも知れません。
しかし日本では、死亡例などの重大な副作用はハイリスクの高齢者に集中しています。
小児に関しては今のところ過剰な不安は必要ないと思います。