メタボ健診の腹囲基準根拠ゆらぐ

私は以前から、腹囲の基準についての問題点を指摘してきました。
多くの医師や一般の方も疑問を持っていたはずです。
この腹囲の基準は、関西のある大学の研究グループが声高に唱え、それを厚労省が診断基準として採用したという経緯があります。
メダボリックシンドロームの概念そのものも同様です。

##<メタボ健診>腹囲基準根拠ゆらぐ 3万人データ解析で
メタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)対策として実施している特定健診・保健指導(メタボ健診)で使う腹囲の基準について、厚生労働省研究班は9日、国内3万人を超えるデータを解析した結果、「最適な値を決めることは困難」とする最終報告を発表した。
腹囲が大きいほど発症者は増えたため、研究班は引き続き基準に使うことを提言したが、「線引き」の根拠が大きく揺らいだことで、制度の見直しを求める声が高まりそうだ。

現在は腹囲が男性85センチ、女性90センチ以上で、血圧、血糖値、血中脂質の検査値のうち二つ以上基準を超えると、メタボと診断される。
メタボは腹部に内臓脂肪がたまると、心血管疾患を発症しやすいという考え方に基づき、08年度から全国の健診に取り入れられた。

研究班は、地域住民を対象に実施している全国の12の追跡調査を総合的に解析した。
心血管疾患を発症する危険性が高い人を見分けるため、40~74歳の男女約3万1000人の腹囲と心血管疾患の発症状況を分析したところ、
男性は
▽80センチ以上がそれ未満の1.48倍
▽85センチ以上1.56倍
▽90センチ以上1.70倍
女性は
▽80センチ以上1.75倍
▽85センチ以上1.79倍
▽90センチ以上1.62倍
と、いずれも腹囲が大きい方が発症割合も高かった。
しかし、どの数値で区切っても発症者の割合はほぼ変わらず、危険性の高い集団を選び出すのに最適な数値は算出できなかった。

門脇孝・東京大教授は「腹囲が増加するほど発症の危険性が高まっており、腹囲の重要性は示された。数値については、医療にかける予算や人材が豊富にあれば小さめに、限られていれば大きめに設定するなど、政策的に決める事項と考える」と話す。

◇解説 抜本的見直しが必要
メタボ対策を目的にした特定健診・保健指導(メタボ健診)が08年度に始まり、メタボ診断基準の腹囲の数値は、常に注目を集めてきた。
だが、腹囲を診断基準の必須項目としているのは、日本だけだ。
この分野で大きな影響力を持つ学術団体「米国コレステロール教育プログラム」と「国際糖尿病連合」は昨年10月、腹囲を必須項目とせず、他の血圧や血糖値などの検査項目と同列に扱う統一基準を発表した。

今回の研究班の報告は、「発症の危険性が高い集団を絞り込む腹囲の数値は出せないが、腹囲検査は有用」という玉虫色の結論になった。
腹囲にこだわる理由を研究班の門脇教授は「日本には、腹部の内臓脂肪がメタボの主因であるとする数多くの研究成果がある。診断基準を定めた内科8学会も、腹囲を必須とすることで合意している」と説明する。

一方、大櫛陽一・東海大教授(医療統計学)は「腹囲の最適値が示せないとの結果は、病気の危険性のある人を見つけ出す項目として意味がないということだ」と指摘。
「科学的に効果が判断できない施策を実施することは税金の無駄遣い、その健診結果に基づいて医療機関を利用することも無駄な医療といえる」と批判する。

今回の結果を受け、関係学会は腹囲の基準値の再検討を始めるとみられる。
腹囲を必須項目とする日本独自の基準の是非を含め、抜本的な見直し作業が求められる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100209-00000110-mai-soci
出典 毎日新聞・朝刊 2010.2.9 
版権 毎日新聞社


<関連サイト>
メタボ腹囲は科学的根拠なし…線引き困難
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100209-00000714-yom-sci
■国際的には、腹囲を必須とせず、総合的にメタボを診断するのが主流。
米国では、腹囲(男性102センチ以上、女性88センチ以上)は中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値を含めた五つの診断基準の一項目に過ぎない。
■ただ、今回の研究でも肥満の人ほど発症しやすい傾向は変わりない。
現行の基準でメタボと診断された人は、そうでない人に比べて発症の危険性は男性で1・44倍、女性で1・53倍高かった。

【スリム社会への挑戦】第2部(2)日本の腹囲基準
http://www.sankei.co.jp/metabolic/200802/080220m_iti_02_1.htm
■もともと、日本の診断基準の腹囲の基準値は、厚生科学研究として大阪大グループがCT(コンピューター断層撮影装置)を使い、男女1193人の内臓脂肪断面積を測定した。
メタボのリスクとの関連を統計学的に求めて、断面積100平方センチ以上をリスクとし、これに相当する男女の腹囲を計算した結果、出された数字である。CTの厳密な計測によるデータ収集は日本のほか、スウェーデン、カナダで行われているだけだ。
■米国心臓病協会の「サーキュレーション」紙には、腹囲と内臓肥満、病気の関係でこんなデータが発表されている。
欧米、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど63カ国の医師が、2006年に18歳から80歳までの計16万8000人を対象に腹囲とBMIの測定を行い、心血管病と糖尿病の発症との関連を調べた。
その結果、いずれの病気も腹囲の関連の方が強く、内臓肥満の影響を知る主要なものさしであることが示唆された。
心血管病の頻度が7%を超える腹囲は男性84センチ以上、女性92センチ以上で、女性の心血管病の頻度は腹囲88センチ以上で80センチ以下の約2倍に膨らんだ。
つまり、女性の該当者を効率よく見つけるには、必ずしも男性より低く見積もる必要はなかったことになる

イメージ 1



メタボ健診!腹囲計測なんて世界の笑われもの
http://rockyriverromance.com/foodsafety/magmag112.html
■もともと腹囲を必須とすることに異論がありました。個人差が大きく、スポーツで鍛えた腹囲が基準に引っかかるのはおかしい、世界で唯一、男性の基準が女性より小さいなどの異論が専門家からも提示されました。
でも、厚生労働省生活習慣病の発症には内臓脂肪の蓄積が関与しているとのスタンスを崩していません。しかし、腹囲と心筋梗塞などの心血管疾患の発症に相関があるのかは、現在も不明のままなのです。
■厚生省研究班の磯博康・大阪大教授が茨城県内で実施した疫学調査(約260人対象)では、メタボと判定されたグループが心血管疾患を発症する危険性は、メタボでないとされたグループと変わりなかったそうです。
一方、腹囲を必須としないNCEF基準でメタボとされたグループは、発症の危険性が高かったそうです。
■「細いウエストを探し求め、膨大な数の人を測る日本」。
6月中旬、米紙ニューヨーク・タイムズはこんな見出しで日本の取組みを揶揄しています。
「太りすぎがあまりいない日本で、一般市民をスリム化するために始まった野心的なキャンペーン」と紹介し、制度の目的が「医療費抑制という政治的問題にある」と解説しています。
■世界の笑いもの、それが日本のメタボ健診なのです。あんなものに一喜一憂することは馬鹿げています。
厚生官僚の馬鹿げた机上の空論から生まれた世界に誇るジョーク、それが日本のメタボ健診なのです。

イメージ 2



イメージ 3



読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)