歯磨きと心血管疾患の関係

歯磨きは虫歯や歯周病の予防のために行われるのが普通だ。
ところが、歯磨きの回数と、心筋梗塞脳卒中といった心臓や血管にかかわる病気(心血管疾患)という、一見縁遠く思える両者の関係を調べた論文が、英国医学雑誌に6月掲載された。

英国スコットランドの35歳以上の男女1万1869人(平均50歳)に、1日何回歯磨きをするか尋ねた。
対象者の71%が2回、24%が1回、5%が1回未満だった。
その後平均88.1年の追跡調査で心血管疾患の発症を555例確認した。
このうち411例は急性心筋梗塞などの心臓病だった。

その結果、心血管疾患のリスクは、1日に2回歯を磨くグループと比べ、1回のグループで1.3倍、1回未満のグループで1.7倍と高かった。
対象者の半数弱(4830人)で測定した、全身の炎症を反映する物質(C反応性たんぱくとフィブリノーゲン)の血中濃度も、歯磨きの回数が少ないほど高くなる傾向があった。

著者らは、歯磨きの回数が少ない→歯周病のリスクが上昇→細菌感染の持続→低レベルの全身炎症の持続→動脈硬化の進展→心血管疾患リスクの上昇、というメカニズムを念頭に置いている。
そして、歯周病や炎症指標と心血管疾患の関係はこれまでも報告されているが、歯磨きの回数と心血管疾患リスクとの関係を大規模な集団で示したのは、今回が初めてと述べている。

ところで今回の分析では、心血管疾患のリスクの上昇は、喫煙が2.4倍、高血圧が1.7倍、糖尿病が1.9倍だった。
したがって、1日1回未満の歯磨きによる1.7倍というリスク上昇は、危険な要因としての意義が確立したこれらの生活習慣や病気と同程度だった。

そのため、今回の結果が今後確認されれば、1日2回の歯磨きは、禁煙や、高血圧と糖尿病の予防に匹敵する心血管疾患の予防法となるかも知れない。そうした可能性をうかがわせる興味深いデータだ。
(東北大大学院 坪野吉孝教授)
https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/F5wZ96atnJ
(動画でみることも出来ます)
出典 朝日新聞・夕刊 2010.8.9
版権 朝日新聞社




<私的コメント>
歯磨きをしないことと高血圧のリスクが同じとは驚きです。
喫煙や糖尿病などび歯磨きをしないことが加わると、もっと高いリスクになる、ということも意味しています。
歯周病には歯、歯茎の隙間、舌面の凹凸に残った食物の残滓が問題といわれています。
要するに口の中の衛生状態に大いに関連しているというわけです。
歯周病で最悪な原因は喫煙ということもいわれており、喫煙が心血管疾患によくないのは、歯周病を介している部分もあるのかも知れません。

口内の食物残滓は食後、直ぐ歯磨きをすれば簡単に除去できます。
毎食後簡単に歯磨きする習慣が大切ですが、実際どれだけの人が行っているのでしょうか。

私も心を入れ替えて、食後すぐの歯磨きを心がけたいと思います。




読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/