耳鳴りが治らない

外来の患者さんの中には耳鳴りで悩まれる方が結構多くみえます。
病院に受診して「耳鳴りは治らないよ」と初対面でいきなりいわれてしまう方もいます。
ほとんどは「自覚的耳鳴」といって本人にしかわかりません。
要するに悩みが医師に伝わりにくく、診断もそれだけ難しいことになります。
病院を訪れた耳鳴患者は80-90%程度の割合で何らかの難聴を伴うという報告もあります。
したがって、耳鳴がある場合には、一度は、耳鼻科を受診して、少なくとも鼓膜の診察と聴力検査を受ける必要があります。



以下は新聞記事の紹介です。

Q 耳鳴りで薬飲んでも眠れない
3カ月前に突然頭と耳が重くなり、耳鳴りがするように。鼓膜も脳も異常なしでした。
薬も飲んでいますが、昼も夜も気になり眠れません。(81歳・男性)

A 別の音で紛らわす療法を
耳鳴りが数カ月以上続いていると、完全に消し去ることはできませんが、苦痛は軽くできます。

耳鳴りで苦しんでいる方は少なくありません。
なぜ大きな苦痛となるのでしょう。
お孫さんの弾くピアノの音が大きくても気にならない一方で、嫌いな音楽や隣家から聞こえるピアノは、小さな音でもイライラすることがあります。

つまり耳鳴りが不快だと認識すると、頭の中で際立って意識してしまうのです。
これが続くとストレスになり、苦痛に加え不眠に陥ります。
不眠は精神的なゆとりを奪い、さらに耳鳴りに気が向いてしまう。
ところが耳鳴りの音を調べると、決して大きな音ではなく、エアコンの音のように、日常の雑音や音楽、テレビで紛らわすことができる程度なのです。

この悪循環に対して、TRTという治療法があります。
ノイズ音や川のせせらぎ音など別の音で耳鳴りを半分程度紛らわす「音響療法」と、耳鳴りの理解と順応を目的に「指向性カウンセリング」を行います。
7割の患者さんに効果があります。
他のストレスが耳鳴りの苦痛を大きくすることもわかっており、臨床心理士とチームで診療したり、薬物治療を併用します。

ご相談者の場合、夜の静寂をつくらない工夫と不眠の改善より始めて、耳鳴りから気をそらす治療が必要と思われます。
(名古屋第一赤十字病院耳鼻咽喉科部長・柘植勇人氏)
出典 中日新聞・朝刊 2010.1.8
版権 中日新聞社





<番外編>
今週は久しぶりに臓器移植のニュースが流れました。
臓器移植自体は珍しくはなくなっていますが、ドナーとしての要件が規制緩和されたのです。

#家族承諾の臓器提供、意思「テレビ見ていた際、口頭で」
http://www.asahi.com/health/news/TKY201008100165.html
日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)は10日、改正臓器移植法に基づいて初めて脳死と判定された20歳代の男性が、家族で臓器移植関連のテレビ番組を見ていた際に口頭で臓器提供の意思を伝えていたことを明らかにした。
男性は提供の意思を書面で残しておらず、家族の承諾で臓器提供された。
■今年7月の改正法施行で、本人の提供意思が書面で残されていない場合、提供を口頭でも拒んでいたことがなければ、家族の承諾で臓器を提供できるようになった。
今回の男性も提供の意思が書面で残されておらず、拒否したことはなかったと家族が説明したことから、提供するかどうか家族が決めることになった。
■家族は8月5日に移植ネットのコーディネーターの説明を聞き、3日後の8日夜に承諾書を出した。
テレビ番組を見ながらの発言が決定的な根拠になったとみられる。
移植ネットは発言の時期を明らかにしていない。
出典 asahi.com 2010.8.10
版権 朝日新聞社
<私的コメント>
この内容はかなりショッキングでした。
実は、この臓器提供のニュースをテレビで観ながら「死んだら臓器提供してもいい」といったからです。
本人はもちろん私も、これが「意思表示」になることは知りませんでした。
7月の改正法施行を知らなかったのです。
皆さんはいかがですか。


ちなみに以下の手術が行われました。
①国立循環器病研究センター  心臓移植(重症肥大型心筋症 20代男性)
②東大病院          肝臓移植(C型ウイルス性肝硬変 60代女性)
③藤田保健衛生大病院     膵臓、腎臓(1型糖尿病 50歳代女性)
④群大病院          腎臓  (低形成腎 10代男性)
⑤岡大病院          肺   (びまん性汎細気管支炎 20代男性)   




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