子宮腺筋症

子宮腺筋症、強い月経痛を伴う

Mさん(43)は3年前ぐらいから月経痛がひどくなり、通常の鎮痛剤がまったく効かなくなった。
超音波検査で子宮の前壁が分厚いことがわかった。
子宮腺筋症の疑いがあるといわれた。

子宮腺筋症は子宮内膜症子宮筋腫とともに30代、40代によくみられる病気だ。
子宮の大きさから見ると子宮筋腫に似てるが、組織的には子宮内膜症と類似する。

子宮内膜症では子宮内膜が子宮以外の骨盤腔にあるのに対し、子宮腺筋症では子宮筋層に層状に存在する。
月経時に同時に局所で炎症を起こすため、強い月経痛を伴う。
また、炎症の繰り返しにより、子宮筋層は器質化し月経量が増える場合がある。

超音波検査では子宮筋腫とは異なり、境界不明瞭な筋層の肥厚像としてうつる。
磁気共鳴画像装置(MRI)検査では子宮のびまん性肥厚、点状出血、子宮内膜下の疎(まばら)な部分の消失が特徴的で、子宮筋腫とは明確に区別できる。

病変は閉経後に変性し、ほとんど無症状となる。

治療は出産・妊娠を希望するかどうかで異なる。
希望する場合は、不妊治療を優先し、希望しない場合は軽症だと鎮痛剤、中等、重症の場合はプロゲステロン製剤の漸増的、または周期的投与、低用量ピルの投与を考える。
症状がひどい場合、子宮摘出にふみきるケースも少なくない。

Mさんはプロゲステロン製剤の漸増的投与後に周期的に投与している。
症状によっては手術も致し方ないと考えているようだ。
(田坂クリニック婦人科・内科院長 田坂 慶一)
出典 日経新聞・Web刊 2010.11.9
版権 日経新聞


<子宮腺筋症 関連サイト>
子宮腺筋症
http://www.infoaomori.ne.jp/~hisya/naimaku_senkin.htm
■ 子宮腺筋症とは、本来は子宮の内側にしかないはずの子宮内膜組織が、なんらかの原因で子宮の筋層内にもぐりこみ、増殖する病気です。
年齢的に30歳代後半の女性に多くみられます。
どうしておこるのか原因は不明です。
分娩、流産などにより子宮が急激に収縮するとき、内膜組織が筋層内にもぐりこんでしまうといった説もありますが、分娩、流産を経験していない人にもみられることがあります。
■症状は、強い月経痛や月経過多です。痛みは子宮内膜症の場合よりも強く、しだいに増強するといわれています。
子宮のなかで病巣が増殖するため子宮肥大がよくみられ、ふつうは鶏卵ぐらいの大きさの子宮が、にぎりこぶし大やそれ以上に大きくなることもあります。
子宮が大きくなるとそれだけ子宮内膜の面積も広くなり、月経時の出血が多くなります。
また、月経後の子宮収縮もわるく出血がいつまでもみられ、そのため貧血症状が強くなります。
(月経痛と過多月経)







<番外編>

腰痛は体調を映す鏡 日常生活にも原因あり

腰の痛みを訴える日本人はとても多い。
一生に一度以上、腰痛を経験したという人は8割を超すとの報告もあるほどだ。
腰痛の原因は年齢によって違う。

20代、30代は椎間板ヘルニア、脊椎分離症、側弯症などによる痛みが多い。
高齢者になると、腰部脊椎管狭さく症、変形性脊椎症、骨粗しょう症、がんの骨転移による痛みに注意が必要だ。

結核性脊椎炎や強直性脊椎炎などの炎症によるものはいずれの年齢にもみられる。

姿勢の異常や腰部の筋緊張の亢進により引き起こされていると考えられる慢性の腰痛も多い。
このような人では画像診断や血液検査でも異常がなく、神経学的にも問題がない。
痛みの部位は一定でなく強くなったり、弱くなったりする。

腰痛の発症、悪化、慢性化には心理的、社会的要因が想像以上に大きく関係している。

内臓疾患から引き起こされる腰痛もある。
胃や十二指腸の潰瘍、胆石、遊走腎や腎盂腎炎、尿管結石などの腎臓の疾患、子宮筋腫卵巣嚢腫(のうしゅ)などの婦人科疾患、さらには腹部大動脈瘤など血管性疾患もある。

痛みは体が発するシグナルだ。
日常の生活習慣の中から腰痛を引き起こしている原因を自分なりに見直してみることが大切だ。
自らが病気を作らないために……。
三重大学学長 内田 淳正)
出典 日経新聞・Web刊 2010.10.26
版権 日経新聞



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