野菜摂取をおいしく食べよう

伸び悩む日本人の野菜摂取 おいしく食べるには…

家庭菜園や有機野菜などのブームが続いているにもかかわらず、日本人の野菜の摂取量が伸び悩んでいる。原因の一つとして野菜をおいしく食べようという意識が足りないとの指摘もある。
野菜の特徴を知って調理を工夫してみるだけでも、食べる量の増加につながるかもしれない。

主婦のAさん(40)は、野菜料理が苦手だ。
先日も中学生の長女に「このホウレンソウのお浸し、おいしくない」と言われた。
冷蔵庫で長く保管しやや黄色味がかったものをあわてて調理、しかもゆで過ぎたため、くたくたになってしまっていた。

スーパーにいくと野菜を大量に買い込む福原さん。
保管しすぎてしなびるだけならまだましな方で、カビが生えて食べられなくなることもしばしばだ。



1日350グラム推奨
厚生労働省は健康維持のため成人は平均で1日約350グラム以上の野菜を食べるよう推奨している。
食物繊維やビタミン、葉酸、ミネラル類、ポリフェノールやカロテンなど、肉や魚、穀類などからは摂取しづらい栄養成分や機能性成分を摂取できるからだ。

だが、2008年の国民健康・栄養調査によると、1人当たりの1日の摂取量は平均約295グラム。
海外と比べ、中国や韓国の半分以下で、米国よりも少ない。

野菜をおいしく食べていないのが摂取量が増えない理由のひとつだろうと分析する研究者もいる。
鮮度のよい野菜を適切に調理しておいしく食べれば、栄養成分も取れる。

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野菜の鮮度とは何か。
しかし確定した指標や定義はない。
光合成の能力の高さや細胞膜の酸化具合を指標とするなど様々な試みはあるが、専門家の間で合意できていない。
一般的には収穫したときの鮮度が一番よいとされ、見た目の張りやつや感、硬さなどを重視した感覚的な尺度だという。

野菜は収穫してからの期間が長くなると、栄養成分や機能性成分の一部が変化する。
野菜の細胞が生きているからで、糖分は細胞が呼吸をするたびに分解され「野菜の甘味が失われていく」。

葉もの野菜で外側が黄色くなるのは、葉の中のたんぱく質クロロフィルなどの成分が分解・利用されて内側の若い芽に栄養分を供給しようとするからだ。

みずみずしさを左右する水分も重要。
多くの野菜は水分を90%前後含み、蒸発で失われると細胞の弾力がなくなりへたる。
見た目の悪化と、食感の悪化につながるため、貯蔵時の湿度や温度管理には気をつけたい。

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調理法も一工夫
調理法にも注意する。
ホウレンソウは約3分ゆでるとカロテンの10%、ビタミンCの52%が失われる、という実験もある。
一方、ジャガイモのビタミンCは比較的安定しており、40分間蒸しても70%以上残っていた。

栄養成分が流出すると、野菜の中にわずかに含まれている水に溶けやすいうま味成分も出てしまい、味も落ちる。

店頭の野菜の鮮度を見分けるのは難しい。
その点、スーパーなどでよく見かける「カット野菜」は管理が行き届いている。

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ある業者の話では、カット野菜は、使用する約40種類の野菜の多くが収穫後、2~3日以内に店頭に並ぶ。
輸送や加工時の温度や湿度管理なども徹底している、という。

気になるのは加工したあとの栄養成分。
キユーピーの研究所の実験結果では、工場で洗浄殺菌したカットレタスに含まれるビタミンCやカリウムは、カットしていない場合より約10%下がったが、家庭でカットして水洗いした場合とほとんど差はなかったという。

カットすると細胞を壊すので栄養成分によってはある程度減るが、全く食べないよりも少量ずつでも手軽に食べられる利点は大きい。

出典 日経新聞・朝刊 2010.11.7
版権 日経新聞



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